イケダ ハヤトソーシャルウェブが未来を創る!

2012年03月06日(火) イケダ ハヤト

テクノロジーとコミュニティの力で、教育は低コスト化する

 「教育に掛かるコスト」は、日本国民のほとんどが関心があるテーマと言っても良いでしょう。特に子育て中の方にとっては、大変重要なテーマなはずです。

 私は、ソーシャルメディアをはじめとする「テクノロジー」、地域や興味関心のつながりよって発生する「コミュニティ」によって、教育に掛かるコストは低下していくと考えています。

 願いに近いものはありますが、15~30年といったスパンで考えれば、ほとんど無視できるほどに、教育費は低コストになっていくとすら考えています。今回の記事では事例を挙げながら、教育コストの低下について考えていきたいと思います。

Skype英会話:外国語会話の学習は既に低コスト化

 教育の低コスト化の象徴的な例は「Skype英会話」でしょう。物価の安いフィリピン在住の英語講師に、無料のビデオ通話システム「Skype」経由で英会話を学ぶことができるサービスです。事業者も数多く乱立しており、Skype英会話自体の低コスト化も著しく進んでいます(中には10分60円、というサービスも存在しています)。

 Skype英会話を一般的な英会話教室と比べると、その単価は1/20にもなります(事業者、プランによっては、さらに差は広がります)。多額の貯金をして英会話教室に通った人は少なくないと思いますが、既に英会話は信じられないくらい低コスト化で学ぶことができるようになっているのです。

 Skype英会話は基本的に同時性が求められる学習方法ですが、非同期で英会話を学ぶことができる「Best Teacher」のようなサービスもリリースを控えています。非同期型の場合、「日本の学習者」と「外国在住の講師」の時差の問題をクリアできるため、より低コスト化が進むことが予想されます。

 なお、英会話以外にも、中国語、スペイン語などで同様のサービスが展開されています。少なくとも外国語会話に関しては、数年前では想像もできないほどに、低コスト化が進んでいます。

TED:デジタル教育コンテンツは無償化していく

 学習の低コスト化、というテーマは「TED」を抜きに語れません。TEDは世界的に行われている、世界中の有識者が知見を共有するプレゼンテーションの祭典で、その動画は全て無料で公開されています。人気の動画は全て日本語字幕が付いています。

・非常にシンプルな考え方でリーダーシップの秘密を解き明かした「優れたリーダーはどうやって行動を促すか(サイモン・シネック)
・学校教育の問題について端的に述べた「学校教育が創造性を殺してしまっている(ケン・ロビンソン)
・世界的指揮者がユーモラスに音楽について語った「音楽と情熱(ベンジャミン・ザンダー)

 など、最高のスピーカーのプレゼンを通して、刺激的な学びを得ることができます。

 スピーカーの中には自著の内容を凝縮してプレゼンをしている方(セス・ゴーディン「我々がリードする部族」:対応書籍「Tribes」、ダニエル・ピンク「やる気に関する驚きの科学」:対応書籍「Drive!」)も多く、洋書一冊読むのに匹敵する学びを、わずか15分ほどで得ることができてしまいます。

 教育コンテンツの無償化は進む一方で、国内では予備校の授業を無料公開している「ソーシャル予備校」や、一万人以上が登録する無料の動画コンテンツ配信サイト「schoo」、無料でプログラミングが学べる「ドットインストール」などが筆頭と言えるでしょう。

 教育コンテンツのほとんどは、デジタルの世界で無償化・低コスト化していくはずです。教科書や参考書も、その例外ではありません。「ソーシャル予備校」に象徴されるように、大学・高校受験のように多くの人に求められる教育コンテンツは、早晩無料になっていくでしょう。これは素晴らしいことだと思います。

様々な「私塾」:コミュニティによる学びの提供

 テクノロジーそれ自体による変化に加えて、オンライン/オフラインの「コミュニティ」によっても教育は低コスト化されていくでしょう。

 近年、オンライン/オフライン問わず、「私塾」と呼べるほど小さな学びのコミュニティが、ゲリラ的に発生していると私は感じています。

・読書朝食会コミュニティの「リーディングラボ(本とカフェ代だけで参加可能)」
・第一線の起業家から格安でアプリ制作を学べる「Club 86 Start-up School
・子ども向けにプログラミングスクールを行う「TENTO
・豊島区のNPOが中心に「おとな」にフォーカスした学習を提供する「おとな大学
・放課後の学校を使って市民が先生となり教育を行う「放課後NPOアフタースクール

・「共生時代」のビジネスを学ぶ「アースカラービジネススクール
・高知県の土佐山に泊まり込みで地域社会について学ぶ「土佐山アカデミー
・オンラインメディアgreenzが提供するコミュニティスクール「green school Tokyo
・対話を通してこれからの社会について考える「Social design cafe

 などなど、私の周囲だけでも枚挙に暇がないほどに、「私塾型学習コミュニティ」が広がっています。 皆さんの周囲にも、ゲリラ的に発生した学びのコミュニティがきっとあるはずです。

 こうした「私塾」は、金銭的利益は重視せずに実施されているものが多く、得られる学びに対して参加費は非常に安価です。地域、興味関心から生まれるコミュニティによって、学びは低コスト化してくでしょう。

多額な教育費はもう過去のもの?

 文部科学省の平成22年の調査によれば、幼稚園から高校まで全て公立で教育を受けると約500万円、全て私立で受けると約1,700万円に上るそうです。大学を加えると、全て公立でも700~1,000万円程度、幼稚園~大学を全て私立で受けると、優に2,000万円を掛かる教育費が負担としてのしかかるわけです。

 現実はどうなるか分かりませんが、高度経済成長期ならいざ知らず、これから子どもを育てる全ての世帯が、こうした多額の教育費を払えるとは到底思えません。かくいうフリーライターの私自身も、流石に子ども一人につき2,000万円は払える気がしません。

 現実的な問題として、テクノロジーやコミュニティといった要因に加えて、子育て世代の家計が厳しいことも、教育の低コスト化を押し進める力になっていくと私は予感しています。その意味では、教育の低コスト化は、加速すべき社会変革とも言えるでしょう。

 私は今25歳です。既婚者であり、子どもも欲しいと思っています。自分ごととして、多額な教育費が過去のものになるよう願っています。さらには、ライターとして、教育の低コスト化を加速させるプレーヤーであり続けるつもりです。

 皆さんは「教育の低コスト化」についてどのように考えますか? ご意見やご感想を、ぜひご自身のフェイスブックやツイッターでシェアしてみてください。