週刊現代経済の死角

2011年05月08日(日) 週刊現代

大調査ひと目で分かる「消費電力」
完全保存版 この夏、あの電気を止めるのはあなた

家電の電力消費における25%がエアコンである。〔PHOTO〕gettyimages

 東京電力管内の企業や家庭は夏季には、前年比15%以上の消費電力の削減が求められる。猛暑が予想される今年、これは容易ではない。実現するためには、節電。そのためにまず消費電力を知ることだ。

自販機よりATMの方が

 節電が叫ばれるなか、石原慎太郎東京都知事から目の敵にされているのが、自動販売機とパチンコ。それらの消費電力は、1台あたり次のとおりである。

自動販売機 約300W
パチンコ台 約200W

 液晶テレビ(37型)が150Wなので、それよりは高いが、とりたてて過剰というほどでもない。

 本誌はあらゆる電気器具、施設の消費電力、または1日あたりの消費電力量を調べた。その結果を述べる前に、まず、2つの違いについて簡単に説明しておこう。

「消費電力」は電気器具を作動させるときに使う電力で、単位はW(ワット)。また「消費電力量」というのは、消費電力×時間のことで、単位はWh(ワット時)。例えば100Wの電球を12時間つけた場合、100W×12時間=1200Wh=1・2kWhとなる。

 さて、街中で自動販売機よりも目立つ存在なのが、コンビニエンスストアだろう。最大手のセブン-イレブン・ジャパンに聞くと、広報担当者はこう答える。

「昨年7月~9月の平均で、1日あたりの1店舗の消費電力量は480kWhになります」

 つまり24時間営業のコンビニの消費電力は20。1軒が自動販売機の約67台分にあたる。ちなみにコンビニは都内だけでも約6200軒ある。それだけ人々の日常生活に欠かせないものになっているのだ。

「消費電力の割合は、冷凍庫が20%弱、照明が15%、空調が15%です。現在、照明設備のLED化や店頭看板の消灯などで、昨年夏季比で約25%削減することを目標にしています。店内の空調も1~2度設定温度を上げることになろうかと思いますので、冷えた印象がややゆるやかになるかもしれません」(セブン-イレブン広報担当者)

 店内の温度にとても文句は言えない。同様にスーパーマーケットはどうか。首都圏で約100店舗を展開するスーパーマーケットチェーンの担当者はこう話す。

「一昨年8月の1日あたりの消費電力量は、1店舗(年中無休で12時間営業、店舗面積は約2000㎡を想定)で約550kWh。これは、同年3月と比較すると約1・5倍になります。スーパーは冷蔵庫関連が40%、空調関連が20%ですから、夏はどうしてもそれくらいの数字になります。試算すると夏季の1店の消費電力は約46ですね」

 銀行のATMも駅周辺には何台も見かける。日本全国にATMは、有人店舗、無人店舗含めて約19万台が設置されている。その1台あたりの消費電力は、ATMを製造するメーカーの担当者によると、「動作時で最大約1kW、通常時で500W、利用者が来るまで必要外の電源を落としている省エネ時で250Wぐらいでしょうか」というから、通常時では自動販売機よりもやや多い。

 また最近、駅などのエスカレーターが使えなくて足腰が辛いという方も多いだろう。1階分を昇る一般的なエスカレーターの消費電力は、約5~7kW。1日12時間稼動した場合は、60~84。ちなみに1世帯の1日あたりの電力使用量が約10である。同じくマンションなどで使用されている住居用の9人乗りエレベーターは、消費電力は3~6kW、また作動していない場合でも待機電力がおよそ200Wほどかかる。日本全国にエスカレーターは約6万3000台(動く歩道も含む)、エレベーターは約66万台ある。このうちの数分の一でも稼動を停止させれば、節電効果は絶大だろう。

 最近、夜、街を歩くと、暗いと感じることはないだろうか。それは街灯の点灯が自粛されているからだ。

「ごく一般的な街灯の消費電力は190Wです。本来ならば防犯上、街灯は消すべきものではありませんが、現在はそれを超えた事態であると考えています。場所ごとに街灯の設置状況をみながら、防犯上の影響が少ないものに関して順次、バッテリーを落としている状況です」(東京都建設局道路管理部)

 数は少ないが、いかにも消費電力が多そうなのが、オーロラビジョン。例えば、JR新宿駅東口前のスタジオアルタのオーロラビジョンは、約600インチ(約60畳)の巨大スクリーンだ。平均消費電力は44とコンビニ2軒分強。またJR渋谷駅ハチ公口のスクランブル交差点にある大型ビジョンは、245インチのスクリーンで平均消費電力は14だという。このビジョンを管理する関係者はこう悩みを明かす。

「LEDを使用しているため、見た目ほど電力は消費していませんが、どうしても世間からは大量の電気を浪費していると思われてしまう。現在は放映時間を減らして対応しています」

都庁内の自販機はすでに停止

 街の明かりの象徴と言えば、東京タワーのライトアップ。日本電波塔株式会社の担当者はこう回答する。

「鉄塔にライトをつけて灯らせているわけではなく、下から投光器で照らしており、消費電力は200kWになります。ライトアップは通常ならば日没から深夜0時まで行いますが(1日あたり6時間とすると消費電力量は1200kWh)、現在は自粛しております。ですが、東京タワーの夜景が見えるレストランや結婚式場などから、再開して欲しいというご要望をたくさん頂いています。結婚式を挙げる方から、『東京タワーの夜景を目当てに1年前から結婚式場を予約しています』というお手紙も頂いていますね。

 ただ東京タワーには電波塔の役割があり、こちらの消費電力が大量にあります(数字は非公開)。これは節電することが不可能なので、どうしてもそれ以外のところで節電しなくてはいけない。ライトアップの再開は、現在のところ、できる状況ではありません」

 大型スクリーンも東京タワーも目立ちすぎるため、その悩みは深いようだ。

 新宿の高層ビル群の中心、東京都庁はどうだろか。

「昨年10月頃までの1日あたりの消費電力量はおよそ1万kWhありましたが、震災後は節電を行い、1日あたり7400kWhになっています。また各フロアにあった自販機は電源ごと抜いて、必要があれば売店で購入するようにしています」(東京都財務局担当者)

 気になるところでは、皇居はどうなのだろうか。皇居の電力は毎年、予定数量を出し、各業者が入札で落札する仕組み。'11年2月1日~'12年1月31日における予定使用電力量は562万5612kWhとなっている(1日あたり約1万5400kWh)。これはコンビニ32軒分に当てはまる。

 これに対して国会議事堂は、例えば衆議院の場合、国会が開かれた4月19日の消費電力量は3万7000kWh。また衆議院会館は1万8000kWhだった。

「震災後は節電を徹底しており、40%近く節電している」(衆議院電気施設課)

 2つ合わせて一般世帯の5500軒分の電力を使うだけの仕事をしてほしい。

カラオケも自販機以上 

 パチンコ店は、現在、世間から節電が求められているが、他の娯楽施設はどうだろうか。取り沙汰された東京ドームでのナイターの場合は、「練習時間からお客さんが帰るまで9~10時間で、4万~4万5000kWhかかります」(担当者)という。神宮球場は「ナイター1試合は約6時間で8000~9000kWhです」(担当者)というから、ドームでのナイターがいかに電力を消費するかがよく分かるだろう。

 続いてカラオケはどうか。通信カラオケ機器の消費電力は、メーカーの担当者によると「カラオケ機器が60W、アンプが200W、これにテレビモニターや照明、空調が別にかかります」という。少なくともカラオケ機器、アンプ、モニターを合わせると約360W。これだけですでに自動販売機より多い。

 ボウリングも電力が不可欠な娯楽である。

「1レーンあたりの消費電力はおよそ1・35kW。30レーンあるボウリング場だと1日、20ゲーム行われたとして、800kWhになります。これに空調と照明の電力が加わります」(ボウリング機器メーカー担当者)

 映画館についても調べてみた。ワーナー・マイカルシネマズの担当者が答える。

「全国の平均値で言えば1日あたり1館で3000kWh程度。スクリーン数は平均で10~12です」

 単純計算すると1スクリーンあたり1日の消費量は300kWh。コンビニよりも少ない。大勢が集まれば、むしろ省エネかもしれない。

 博物館の場合、東京国立博物館の担当者はこう回答する。

「昨年3月の統計では、消費電力は1200kW、一日平均ですと1万2000から1万3000kWhでした。昨年の夏場のピーク時の消費電力は2100kWになります。節電は照明を消したり、営業時間の短縮などで進めていますが、ピーク時の25%削減策をまさに練っている最中です。

 美術品は温度、湿度管理が厳しく指定されており室温24℃、湿度55%程度に保つ必要がありますから、冷房の設定温度を数度上げるということがしにくい。ですから、一部の施設の展示を中止するなどして対処するといった方法を考えざるをえません」

テレビを消せば効果絶大

 やはりエアコンが、消費電力量の鍵を握るようだ。それは一般家庭でも一緒。

 ページ上の表を参照してほしい。この表は最新標準タイプの家庭用の電化製品の商品情報を参考にし、本誌が試算した消費電力のおおよその目安である。なかでもエアコンは冷房期間の消費電力量がレベル表示されているが、12畳用では消費電力が約700~1000Wながら、1日(18時間)の消費電力量は約13。他の家電を圧倒する。東京工業大学統合研究院ソリューション研究機構特任教授で、住環境計画研究所所長の中上英俊氏もこう語る。

「東京の場合、午後2~3時が電力消費量のピークになりますが、そのときに占める一般家庭の割合は2割ぐらいです。さらに、一般家庭の内訳は40%ぐらいがエアコンになります。昼の場合で考えれば、全電力消費量の8%ぐらいに相当することになります」

 専門家によると夏のピーク時において、東電管内の在宅世帯の空調の設定温度を1度上げると、約48万kWの節電になるという。これは福島第一原発1号機の供給出力とほぼ同じである。

 またテレビについては、ブラウン管テレビより液晶テレビのほうが同程度のサイズなら省エネ効果がある。地上デジタル放送に対応するため、買い換えた家庭も多いだろう。だが、これが必ずしも節電に結びついているともかぎらない。

「アナログテレビの29型(消費電力約130W)を所有する人が買い換える場合、液晶テレビ37型(消費電力約150W)やプラズマテレビの46型(消費電力約350W)を購入することが多いんです。そうすると結果としては、消費電力は以前より大きくなります」(大型電機店販売員)

 プラズマテレビは自動販売機並みである。ちなみに内閣府が発表する「消費者動向調査」によれば、100世帯あたりのカラーテレビの保有台数は約240台。東電管内は約2000万世帯なので、推定で4800万台のテレビがある(自動販売機は87万台)。標準的な液晶テレビ(37型)の消費電力150Wで計算しても、各家庭がピーク時だけでもそれを消すことは大きな節電になる。

 冷蔵庫(420L程度)の消費電力は約100Wほど。低く思えるが、24時間フルに稼動するため、省エネモードが作用しても、1日700Whは消費する。

 ほかに電子レンジ、ドライヤー、炊飯器、アイロンなど熱を発する器具は消費電力が高い。利用は短時間だが、ピーク時は避けて使用したい。なかでも「オール電化」の消費電力はきわめて高い。電気の力でお湯を沸かすヒートポンプ給湯機の消費電力は、夏季で約1200W。またIHクッキングヒーターは一口3000W。確かにガス代がゼロになるので、光熱費は削減できるが、消費電力は増加する。東電管内9都県のオール電化戸数は、'02年3月末には1万3000戸。それが'10年末には85万5000戸まで増えた。

 給湯器は夜間電力を使うため、ピーク時の影響は少ないかもしれないが、一般家庭の消費電力は確実に増えていることだろう。

待機電力を意識する

「オール電化」もそうだが、温水洗浄便座(作動時・消費電力1300W)、自動食器洗い乾燥機(作動時・消費電力1100W)など便利なものほど電力を消費することを忘れてはいけない。

 さらに使用していない間も流れている待機電力は明らかな無駄遣いである。財団法人・省エネルギーセンターの調査によると、1年間あたりの待機電力量は、ガス給湯器が55・8kWh、エアコンが25、DVDプレイヤーが18・4kWh、温水洗浄便座が14・6kWh、パソコンが11・8kWh、テレビが9・6kWh、電子レンジが6・7kWhなどで、合わせると285kWh。これは家庭における年間総消費電力量の6%にも上る。

 まずそこから減らしてみるのがいいかもしれない。前出・中上氏はこう語る。

「例えばドイツは1年に1回しか電気の検針がないので、節電効果がみえにくい(支払いは前年実績を月割り)。ですが、日本の場合は、待機電力を減らせば電気代が安くなったことが翌月に分かります。消費者がそれを意識すれば、家電メーカー側も待機電力が低いほうが売れるため、必死になって研究、開発をする。

 つまり、節電対策は消費者によるところが大きい。業務用の過剰な照明やエアコンも消費者のために使用されているケースが多いのですから、消費者の考え方が変わることが大切です。企業側だけに節電対策を押し付けるのではなく、消費者も一緒になって意識を少し高めて努力するべきですね。そうしなければ、本当の意味での節電対策にはならないと思います」

 あの電気は止めよう、そう考えることが、社会全体の節電につながる。この夏、あなたが止める電気は何ですか。

 

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