週刊現代経済の死角

2011年11月29日(火) 週刊現代

大暴落!大恐慌の足音が聞こえる イタリア、スペインと来て次に狙われるのは日本国債だ
国債を大量に抱えている「日本の金融機関」一覧

 小国ギリシャの債務危機が、イタリア、スペインに飛び火し、ついに超大国フランスを呑みこんだ。危機は欧州圏を飛び越えて、世界に拡散する段階だ。そして世界中が、日本に目を向け始めている。

預金は一律ペイオフに

 今夏、一人の財界大物の発言がマーケットで注目された。発言の主は全国銀行協会会長で三菱東京UFJ銀行頭取の永易克典氏。ロイターのインタビューで日本国債の問題について聞かれると、「(国債の金利暴騰のタイミングは)10年サイクルではない。もっと近い。急いで対応を取らなくてはならない」と危機感を露にしたのだ。

「日本国債が早晩にして死に至る可能性があると全銀協会長が語るのは異例の事態。外国報道機関によるものだったため日本の新聞やテレビではまったく取りあげられなかったが、これは歴史的な発言です。

 永易氏が語ったポイントは二つ。いま国債を買い支えている日本人の預金量の増加が、高齢化によって終わる時期がくるが、そのタイミングは『そんなに遠くない』。もう一点が財政のプライマリーバランス(基礎的財政収支)がこのままでは、悪化の一途を辿っていくということ。後者のもとで前者が訪れれば、『金利が一気に暴騰することも十分にありえる』と言う。つまりは国債の破綻が近いということを指摘した」(ビジネス・ブレークスルー大学教授の田代秀敏氏)

 永易氏はメディア嫌いで有名だ。「バンカーはあくまで黒子」が持論で、つい最近も金融特集を組んだ経済誌にみずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行のトップは登場したのに、永易氏だけは出なかった。そんな永易氏があえてインタビューに応じて危機感を表明したのは、それほど政府に「対策を急げ」と言いたかったからに違いない。

 このインタビューは7月のこと。その後、欧州発の世界経済危機が本格化し、状況はさらに悪化。国債危機はギリシャからイタリアへ波及し、マーケットは次のターゲットを狙っている。

「ギリシャの次になぜイタリアが狙われたのか、実はこれに合理的な理由は見つからない。財政再建できていない、累積債務が多いという点はスペインも日本も同じ。政権基盤の弱さも指摘されているが、スペインのサパテロ政権も日本の野田政権も弱い。イタリアは金利が高いという特徴はあるが、いまに始まったことではない。これまでギリシャの次はポルトガル、アイルランドが狙われると言われていたのに、順番が急にイタリアに飛んだ。つまりこれからは危機が訪れるのは無作為だということがいえる。スペインが先か、日本が先かは誰にもわからない」(BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏)

 明日、起こるかもしれない日本国債の破綻—実はそれを想定した衝撃のレポートがある。

 そのレポートを披露したのは現・財務副大臣である五十嵐文彦氏。「(民主党の)次の内閣金融相」に選ばれたこともある財政通だ。さらに五十嵐氏がそのレポートを紹介したのは、'02年2月14日の国会でのこと。あれから約9年が経ち、財政事情がさらに悪化したことは言うまでもない。

 当時の国会議事録によれば、それは「ネバダ・レポート」と呼ばれるもので、アメリカのIMF(国際通貨基金)に近い筋の専門家がまとめたとされる。すでに日本は税収が50兆円ほどしかないのに、85兆円を超える予算をつけている異常事態だった。そこでレポートは日本がIMF管理下に入る(国債が危機的状態に陥る)場合を想定。IMF管理下で実行される「ショッキングな8項目のプログラム」を詳細かつ具体的に記していた。8項目の内容は以下の通り。

(1)公務員の総数、給料は30%以上カット、およびボーナスは例外なくすべてカット
(2)公務員の退職金は一切認めない、100%カット
(3)年金は一律30%カット
(4)国債の利払いは5年から10年間停止
(5)消費税を20%に引き上げる
(6)課税最低限を引き下げ、年収100万円以上から徴税を行う
(7)資産税を導入し、不動産に対しては公示価格の5%を課税。債券、社債については5%から15%の課税
(8)預金については一律ペイオフを実施し、第二段階として、預金を30%から40%カットする

年金は一律30%カット

 想像していただきたい。老後の頼みにしていた年金が3割も減らされ、なけなしの預金が半分近くもカットされる。その上でスーパーで買い物をすればいままでより1割以上も高い。さらに新たな課税で噦虎の子器をもっていかれる。とてもじゃないが、「国のためなら仕方がない」と耐えられるものではない。

 国債破綻が起きれば、国の風景はガラリと変わる。'97年にIMF管理下に入った韓国で何が起こったのかを見れば、その悲惨さがより具体的にわかる。

「暴落したウォンの価値を支えるため、IMFによって高金利政策が実施された。そのため住宅ローン金利(変動金利)は一気に30%まで上がり、ローンが払えない人は60%の延滞金利を払わなければならなかった。住宅ローン破綻者が続出、土地や家が投げ売られ、不動産価格は7~8割くらい値下がりしたのです。

 また韓国企業に投資していた外資系マネーが一斉にひきあげたため、韓国企業の半分が倒産した。残った企業も約半数の社員をリストラしたため、失業者が溢れ、就職先のない大学生が殺到した大学院は満杯状態になった。医療費が払えなくなった人も増えて、病院は閑散・・・。あまりに患者が少ないため、病院は24時間営業をしていたほどです」(経済ジャーナリストの荻原博子氏)

 さらに街にはホームレスが溢れ、自殺率は「破綻前」の2倍に膨れ上がった。これが「国債破綻」の現実だ。

メガバンク、生損保が倒れる

 そんな庶民の生活を一変させる国債大暴落が、日本に迫っているのだ。新聞やテレビは「個人資産1400兆円が買い支える」「外国人保有比率が低いから投げ売られない」と噦安心説器を撒き散らすが、マーケットからそんな悠長な声は聞こえてこない。有識者の意見を紹介しよう。これが経済のプロの多数意見だ。

「直近の日本の政府債務残高のGDP比は約200%で、すでに実質デフォルトしたギリシャの150%ほどよりはるかに高い。日本国債を買い支える余力のシグナルとなる家計貯蓄率も、'80年代には15%超だったのが5%以下まで下がっている。これから団塊の世代が年金生活に入るので、さらに大きく低下する。要はいつ破綻してもおかしくない。逆に言えば、こんな財政赤字国がいつまで耐えられるのか『壮大な実験』がいま行われている」(ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの櫨浩一氏)

「IMFの調査によれば、日本の政府債務残高のGDP比は今年235%に達する見込みで、国債破綻のデッドラインといわれる250%に達するカウントダウンに入った。過去を振り返れば太平洋戦争時、軍事費に多大な予算を投入した1944年でも204%だった。私は財務省主計局が分析した資料を入手した。これをもとに破綻確率を計算したところ、今年は94%、来年が97%、そして2013年に100%となる。破綻は目前だ」(経済工学研究所所長の森木亮氏)

 こうした事態を危惧して、冒頭のように永易氏は警戒感を示したわけだが、もちろん日本の金融機関が日本国債を大量に抱えているという事情も背景にある。

 次ページ表にあるように、メガ3行は10兆円規模の国債を保有、合計すればこれは国内の貸出残高(3行合算)の半分以上の額になる。直近の決算では3メガともに純利益の3分の1ほどを国債売買益で稼ぎ出している。預金で集めたカネを国債にぶちこみ、その運用益で稼ぐ「国債頼み経営」をしているのが実状である。

 要は国債が暴落して最も痛手を被るのが金融機関。生損保も兆円規模の国債を保有しているから、こちらも直撃は避けられない。

「時価会計のもとでは含み損が巨大になり、破綻する銀行が相次ぐ。住宅ローン破綻者も急増するので、担保にとっていた不動産が不良債権化する。これを食い止めるために簿価会計に戻せば、金融の国際ルールから離脱することになり、国の信用がなくなり、株も通貨も一気に売り浴びせられることは避けられない。保険会社は国債の目減りだけでなく、保有株式の含み損も膨らむ。そこで保険金の減額に走れば、解約が殺到。解約返戻金の支払いでさらに財務状況が悪化し、バタバタと倒れる。外資に買われるところも出てくるだろう」(経済小説家の橘玲氏)

日本も「次の破綻先」リストに

日本国債を大量に抱えている「日本の金融機関」一覧 ※日本国債の保有残高を各社に聞き取り調査。いずれも2011年3月末時点の額。億円単位以下は切り捨て

 さらに表には掲載していないが、地銀などの中小金融機関も国債を大量に抱えている。体力が小さいだけに、国債暴落は「即・破綻」につながる一大事となる。

「特に注意すべきは、東日本大震災の被災地にある金融機関。4月以降、被災者が受け取った地震保険の保険金が流入して5000億円以上も預金が増大。今後は東京電力の1兆円の賠償金支払いで、さらに預金が激増する。他方で地元経済は疲弊、元気な融資先は少ない。そうなると、国債を買い進む以外に溢れかえる預金を運用する手段がない。カネが回れば回るほどリスクが高まるジレンマに直面する」(金融庁関係者)

 それでも政府は有効な「国債対策」を打たない。選挙公約だった国家公務員の人件費2割削減に手をつけないなど利権を死守するばかりで、増税一直線によって国民に負担を強いようとしている。さらに効果のないことがわかりきっている為替介入という大バクチを打ち、たった1日で約8兆円の国債を積み増して財政をより悪化させた。

「ブルームバーグの名物コラムニストであるウィリアム・ペセックの文章は海外ではほとんどの政策当局者、金融スタッフが読んでいるといわれる。そのペセックが11月に安住淳・財務相を評して『国際市場で何が起きているか理解できていない財務相』と書き、レッド・カードを突きつけた。日本の政策当局の無能さは海外では周知の事実。先日も前原誠司・政調会長がテレビ番組で『ソブリン・リスクとはなにか』と聞かれ、『国の信用です』と答え失笑を買っていた。『リスク=信用』などと考えている政治家は、海外に一人もいない」(前出・田代氏)

 政府の無策を狙って、売り浴びせを仕掛けるのがマネー・マーケットの歴史だ。事実、ギリシャのパパンドレウ、イタリアのベルルスコーニといった「無能政治家」が統べる国が次々と狙い撃ちにされている。すでに日本も「次の破綻先」に入っている。

「JGB(日本国債のこと)が暴落すると利益が出るポジションを取るヘッジファンドが増えている。ニューヨークのヘッジファンド『グリーンライト』を率いるデイビッド・アイホーンはリーマン・ショック時に空売りを成功させて大稼ぎしたが、彼がいま空売りの対象にしているのがJGBだ。ダラスのヘッジファンド『ヘイマン・アドバイザーズ』の創設者であるカイル・バスも噦日本破綻に賭ける男器と呼ばれ、JGBの空売りポジションを崩さない。こちらには日本の財務当局がJGBが破綻することを先読み、噦有事の金器に資産を移し替えている財務官僚がいるという話も聞こえてくる」(在米ヘッジファンドマネージャー)

 Xデーは確実に眼の前に迫ってきた。フジマキ・ジャパン代表の藤巻健史氏は「日本国債は明日崩壊してもおかしくない」と言う。

「日本の財政は机の上に置いた満杯のコップが、半分机から飛び出ている状況だ。そよ風が吹けば落っこちてしまう。きっかけは何でもいい。予算編成をめぐる政治的混乱でも、庶民が起こすストライキでも。もちろん欧州から巨大な風が吹けば、ひとたまりもない」

 そのとき、日本は見てきたような大恐慌に襲われる。そして政治家は大震災や原発事故の時と同じように、「想定外」と語るのだろう。

「週刊現代」2011年12月3日号より