実母から、判明しているだけで10億円以上もの資金を提供されていたことを、「自分は知らなかった」と言い張る鳩山首相。しかし、その首相の強弁は、ウソである可能性が濃厚だ。

実は鳩山首相は、若手の自民党議員だった'89年に、ジャーナリストの故・筑紫哲也氏との対談で、こんなことを語っている。
< 鳩山 親父も弟も国会議員をやっておりますから、助けてもらっています。
筑紫 資金的にもですか。
鳩山 そうです。現実には、自活にははるかに遠い状況です >
(『永田町下級武士たちの決起政治改革に挑む』編著/ユートピア政治研究会・'89年・講談社)
この発言は、2つの事実を指し示す。一つは、鳩山家の政治活動が、少なくとも20年以上前から「家族ぐるみ」で行われていたこと。二つ目は、鳩山首相自身が、それを当時から認識していたということだ。
鳩山家を良く知る後援会関係者の一人も、こう証言する。
「'86年に由紀夫氏が衆院選に初出馬した時から、母親の安子さんは援助をしていました。当時、由紀夫氏は事務所を田園調布駅前に置きましたが、その物件も、安子さんが見つけて来て、開設したものです。
安子さんは支援者に、『資金の心配はしなくていい。自分が生きている間は、由紀夫の選挙費用は5回でも10回でも自分が出す』と語っていたそうです。由紀夫氏が『知らなかった』というのは、とても信じがたい話です」
国民に失望感をばら撒いている鳩山首相にとって、それは支持率を上げるための起死回生、あるいは窮余の一手なのだろう。首相は2月15日、こう言い切った。
「子ども手当は、予定通り満額を支給する」
その前日、首相は「リアル鳩cafe」なるイベントで、官邸に招待した一般有権者に対し、「ムダを削って、余裕ができた分だけでやろうと思っています」と発言。「総選挙で掲げたマニフェストを修正する意向」と物議を醸していたが、そんな公約違反との"疑惑"を打ち消すように、「満額を支給する」と断言したのである。
だが、待ってほしい。子ども手当の満額支給に要する予算は、年額で5兆~6兆円。そんな防衛予算にも匹敵する巨額のカネが、いまの国庫のどこにあるのか? 母親からの資金で政治をしてきたように、まさか子ども手当も、ママのおカネに頼って乗り切ろうと考えているのか・・・?
小見出し・・・口先ばっかりなんだから
中学生以下の子ども全員に、一律で月2万6000円('10年度は半額の月1万3000円)を支給するというのが「子ども手当」である。
昨年の総選挙の際、民主党はこの政策をマニフェストの目玉として掲げ、政権交代を成し遂げた。幼い子どもを抱えた若い親たちからは大歓迎される一方、子どもが高校生以上になっている家庭の場合、扶養控除の廃止などにより、逆に「増税」になるケースも多く、世論調査でも賛否が分かれている政策だ。
しかし、早稲田大学大学院ファイナンス研究科の野口悠紀雄教授は、子ども手当を中心とする民主党のマニフェストについて、「実現しようとすれば、日本は破綻します」と危惧する。
「民主党は昨年の選挙前には、ムダを削減して16兆円を捻出するとしていましたが、事業仕分けをしてみたら6770億円しか出てきませんでした。財源を捻出できなければ、国債の増発を続けるしかありません。すると、やがては日本国内で消化し切れなくなり、海外に頼らざるを得なくなります。
そうなれば日本国債は買い叩かれ、国内ではインフレが起きます。国民生活が大打撃を受けることは、言うまでもありません」
鳩山首相は、「いのちを守りたい。いのちを守りたいのです」と言う。しかし、国民のいのちを守るには、財源が必要だ。普通の大人なら、誰でも知っている常識だ。首相はまず、口先だけでなく、国民を養うための仕組みを作らなければならない。それが国家戦略というものだ。
一家の主が、「お前たち家族はオレが守る!」と宣言しながら、働きもせずブラブラしていれば、その家族は一家離散する。鳩山首相がやっていることは、それと同じことなのだ。
そもそも、母親から月に1500万円もの"子ども手当"をもらい続け、「そんなことは知らなかった」と言い張る非常識な人物に、国民の「いのちを守る」ことなど、はたしてできるのだろうか。
鳩山首相を「平成の脱税王だ」と国会で追及した、与謝野馨元財務相が、あらためてこう批判する。
「月に1500万円、年間で1億8000万円。これは、平均的なサラリーマンが、一生をかけて稼ぐような大金です。それを『知らなかった』で済まそうという時点で、総理大臣の資格はどうなのか。
また、『脱税だ』と指摘しても、鳩山首相は『知らなかった』の一点張りのわけですが、知っていようが知っていまいが、脱税は脱税です。
一般社会では、給与から税金を天引きされるサラリーマンも、従業員の経費の扱いに頭を悩ます中小企業経営者も、それは皆が知っていること。それを開き直って、『だったら払えばいいんでしょう』という態度も、総理大臣としてはまったく不適格ですね」
鳩山首相が、疑惑の目くらましのような形で「子ども手当の満額支給」を吹聴する一方、首相の片腕・菅直人副総理兼財務相が、「消費税(の増税)などの論議を、3月から始める」と言い出した。
首相も副総理も、その後は「議論は大いにけっこうだという意味」との釈明を繰り返し、すぐに消費税がアップされるわけではない、と強調している。しかし国民からすれば、「子ども手当を最初に出しておいて、すぐ後で消費税をアップし、帳尻を合わせるつもりではないか」という疑念が湧いてくる。
民主党は前回の総選挙前、「特別会計の"埋蔵金"を精査すれば、公約実現に必要な予算はすぐに出てくる」と主張していた。昨年8月に行われた党首討論の場でも、「ムリではないか」と指摘する麻生太郎前首相に対し、当時の鳩山代表は「必ずできる。できなければ責任を取る」と明言していた。あの威勢のよさは、どこへ行ったのか。
「菅氏は財務相になって以来、『埋蔵金なんて、ないんだよ』と周辺に漏らしています。野田佳彦、峰崎直樹両財務副大臣も揃って『子ども手当の満額支給は厳しい』『相当に無理がある』と語っているように、ムダの削減だけで、6兆円も財源を捻出するのは不可能なのです」(民主党中堅議員)
国民をサルと思っている!?
財務省関係者の相次ぐ「ムリ」という発言に対し、鳩山首相は「まずはムダの削減に取り組むのが最優先だ」と、不快感を示して見せた。しかし、政策実施の前段階で、事前に首相の周辺があえて情報をリークし、「観測気球」を上げるのは政治の常套手段。鳩山政権も、実は消費税の増税に向け、"地ならし"を開始したようにも見えてくる。
「財務省としては、できる限り早い段階で、消費税を10~12%程度にアップするのが目標です。年々増大する社会保障費を賄うためには、税率を20%以上にしなければならないという試算もある。現在でも、年間約10兆円の税収を確保できている消費税のアップは、財政再建に向けた切り札なのです」(財務省関係者)
だがもしそうならば、最初から国民にそう説明すべきで、無謀な手当支給で目先を変えるような政策はやめるべきではないのか。フランス文学者の鹿島茂氏も、こう指摘する。
「費用を誰が負担するのかを議論せず、単に借金を重ねるのは、誰が考えても無理があります。高福祉のためには、高負担にならざるを得ない。それを説明することをせず、曖昧にしたまま借金だけ増やすのでは、責任逃れと言われてもしかたがありません」
消費税を1%アップすると、国庫収入はおおよそ2兆~2.5兆円増えるとされている。したがって、仮に子ども手当の満額支給を開始して国庫に大穴があいても、消費税を3%アップすれば帳尻は合う計算だ。
2年間、手当の満額支給を行い約10兆~12兆円を費やしても、その後に消費税を10%にすれば、やはり帳尻は合う。鳩山政権は7月の参院選を乗り切るため、苦し紛れにそんな皮算用を立てているのではないか。
しかし、これを「朝三暮四」という。サルにトチの実を、朝3つ夜4つあげると告げると「足りない」と怒り出した。そこで、朝4つ夜3つにすると言い換えると、サルはトチの実が増えたと思い、大喜びしたというのだ。
そんな故事成語について、鳩山首相は「朝令暮改」と混同していた。しかし、国民をサル扱いしようという魂胆自体は、実態としてはほとんど変わりがない。
国会で首相の「朝三暮四」ぶりを指摘した、自民党の茂木敏充幹事長代理は、子ども手当について、「消費性向の問題から、給付額の30%以上が貯蓄に回ってしまい、効果は薄い」として、こう語る。
「財政赤字拡大の原因は、社会保障費の増大と低成長経済から来る税収減。経済活動をもっと活発にさせないといけない。世界的な企業に『アジアでの拠点をどこに置くか』とアンケートを取っても、直近の'09年には中国とインドに抜かれてしまいました。
法人税が高い上に、今度企業の内部留保にまで課税となれば、立地拠点としての日本の魅力はさらに低下する。日本に来る海外の留学生も、日本から出て行く留学生も減っている。
これでは人材の面でも、置き去りになります。こうした人材育成分野にも、国家プロジェクトとして資金を投入していくべきです。それにかかる費用は、子ども手当よりはるかに安い」
明治の元勲・大久保利通は、福祉政策の財源が足りなくなった時、自らの名前で莫大な借金をし、それを国庫に投じたという。対して、鳩山首相は母親から巨額の"手当"をもらい続け、自身の資産も、現在公開分だけで16億円以上に上る。
6兆円にはほど遠いが、本当に「いのちを守りたい」と言うのなら、偉大な先人の例にならい、資産の全額を子ども手当のために差し出したらどうか。そうすれば政権支持率は跳ね上がり、お望みどおりに参院選は圧勝、民主党政権は今後数十年にわたって安泰ということになるだろう。



