フライデー経済の死角

2011年11月04日(金) フライデー

「危険な政治家」
大阪府知事橋下徹の「正体」

街頭演説に数千人が集まった。橋下氏(左)の人気は確かだが、松井一郎氏(隣)に向けられる目は(10月23日)〔PHOTO〕大川真一

「ダブル選」は地獄の一丁目である。現地を取材すると「橋下の後継が 知事になったら、ややこしいのがゾロゾロついてくるで」と早くも危惧する声が。

「大阪を応援しています。大阪を突破口に地方と国のあり方を、国家構造を変えていきたい。どういう立場で何ができるか考えていきたい」

 10月22日、日本商工会議所青年部の関東ブロック大会(さいたま市)で講演した前宮崎県知事・東国原英夫氏(54)は、こう発言していた。言うまでもないが、この日、大阪府議会に辞職願を提出し、大阪市長選への立候補を表明した橋下徹府知事(42)の動きに、追い風を吹かせようという狙いが透けて見える。事実、この翌日、橋下氏の子飼い議員からなる大阪維新の会は、松井一郎府議(47、大阪維新の会幹事長)を府知事選の候補者に擁立すると発表した。橋下氏が、11月27日投開票の大阪府知事&大阪市長のダブル選により、大阪を丸ごと手中に収める策謀を、ついに実行した瞬間と言える。

候補者選定の基準

本誌の直撃を受ける東国原氏。テレビ番組で橋下氏の宿敵である平松邦夫市長に食ってかかるなど〝橋下擁護〟の動きが過熱中(10月22日)〔PHOTO〕香川貴宏

 なぜ、本誌が東国原氏の発言に注目していたかといえば、市長選は橋下氏が大勝する自信があると仮定して、府知事選の候補者選定に橋下氏が腐心した、いや、今なお悩んでいる形跡があるからだ。

「府と市が足並みを揃えて大阪都構想に着手する以上、橋下氏が後任の知事を傀儡にしたいのは当然。だが、知名度がないと選挙に通らない。橋下氏が検討、打診した相手として、東国原氏やワタミの渡邉美樹会長、国と東京電力の癒着構造を暴いて経済産業省を退職したばかりの古賀茂明氏、橋下氏の友人の弁護士で、民間人校長を務める中原徹氏らの名前が挙がりました」(大阪府政担当記者)

 立候補の届け出ができる告示日は11月10日で、まだ候補者は差し替え可能である。以下は本誌が直撃した際の、東国原氏との一問一答だ。

---先ほどの講演では、大阪を応援していると。橋下さんの応援ですよね。

「(テレビ)番組などでも大阪都構想には、賛成の立場であることを一貫してお伝えしていますから」

---橋下さんから府知事選出馬のオファーはありましたか。

「ないです(笑)。ないですよ。この時期、名前が挙がってないとダメですよ」

---都知事選の時のように、ギリギリで出馬表明ということは。

「いや、ないです。候補者としては考えられない」

---どのような形で応援をされますか。

「(橋下氏陣営の)応援のマイクを持つことになるのか・・・・・・。コメンテーターをしているので中立じゃないといけないんですが、賛成の立場を表明してますから」

 自民党大阪府議会議員団の花谷充愉幹事長は本誌に「知事は、外部の方に意中の人がいると言うてはったので、(松井氏の立候補には)ちょっと違和感がある」と言う。折しも、現在5選を誇る池田市長の倉田薫氏(63)が知事選候補者として名前が挙がった。氏は10月26日夕刻までに態度を明らかにしていないが、出馬するとなれば、民主党・自民党が連携して支援する動きを見せており、〝橋下人気〟で対抗できるか微妙な状況となる。

 さらに、松井氏にまつわる〝評判〟も足枷となりうるだろう。ある自民党大阪府連の幹部は、こんな証言をした。

「みんな維新の会いうたら橋下が作ったみたいに言うてるけど、維新の会を作ったんは松井で、橋下は後から合流したんや。松井の親父(松井良夫氏)は元府議会議長で、松井自身、親譲りの政治力がある。橋下とマキャベリスト(権謀術数主義者)同士、いつまで蜜月でいられるか。松井の親族は競艇場の経営に関与しているとも聞き、背景はよう分からんところがある。松井が知事になったら、ややこしいのがゾロゾロついてくるで」

 この評判について、府下のある首長経験者が「松井氏の父親は大阪の競艇組合の役員をしていて、〝競艇組合といえば松井さん〟と称されたほど」と証言した。

橋下知事は、島田紳助を知事の後釜に据えることも考えていた。自身のテレビ人脈を軸に府政を動かす気なのだろうか〔PHOTO〕中村和彦

 8月初旬に本誌は報じたが、そもそも橋下氏は、自分の後釜として、問題の島田紳助(55)を擁立しようとしていたことがあり、紳助が闇社会との関係を明らかにして引退したことで、要請を断念した経緯がある。芸能界と暴力団との接点について取材している全国紙社会部デスクは、こう証言する。

「橋下氏自身、紳助が芸能界への道筋を付けてくれたなどと感謝の言葉を述べていますが、そもそも橋下と紳助を結びつけたのは誰かという問題が見落とされている。一説には、紳助と山口組系極心連合会の橋本弘文会長を繋いだ元ボクシング世界チャンプの渡辺二郎ではないかとも言われている。つまり、橋下自身が、闇社会と容易に接触できる立場にあったのではという疑惑も湧くのです」

 確かに橋下氏の候補者選定の基準には、首を傾げざるを得ない部分がある。なぜ好き好んで、疑惑が持ち上がりそうな人物ばかり擁立しようとするのか。

 橋下氏は、「大阪都構想」実現のために、府知事を辞めてダブル選に持ち込んだ。要は、大阪府と市を廃止して、広域行政機能を一本化し、〝二重行政〟を解消しようという構想だ。そして都構想にこそ、橋下氏が選ぶ片腕が、汚れ仕事も厭わない人物でないと務まらない理由が含まれている。日本共産党大阪府議会議員団の宮原威団長(大阪府議)が、橋下氏の〝やりたい事業〟について説明した。

「彼は図書館や大学といった、府にも市にもあるものがムダだと言う。一方で、結局は断念したが、府の本庁舎の全面移転のためにWTCビルにかけた費用は、市が1100億円、府が100億円弱。最初からせなんだら、消えずに済んだカネやのに、彼は自分が行ったムダな投資については言及しない。結局、彼は大阪市の財産を欲しいんや。例えば、市営地下鉄は政令指定都市の中で唯一、累積赤字を解消した上に現在は黒字や。300億円の黒字で累積赤字も解消した言うたら、何千億円かで売れるわけやないですか。市は関西電力の筆頭株主でもある。大阪都にして、(関西国際空港と大阪市中心部を結ぶ)関空リニアだとか、ベイエリアにカジノを持って来るだとか、派手な計画をぶち上げたい。それにはカネがかかり過ぎるから、他人(大阪市)のカネで相撲を取ろうとしてるだけの話やで」

 巨大開発を目指すのなら、当然、立ち退き交渉などに手間のかかる地域も多いだろう。カジノは賭場である以上、クリーンな組織のみで運営できるとは思えない。橋下氏自身が、「大阪は汚いものでもなんでも引き受ける」と理念を掲げたことがあるが、それに即した人選をしていると疑わざるを得ないのだ。

ある不動産ファンドとの関係

 10月23日、松井氏の府知事選立候補の会見を終え、橋下・松井コンビが街頭演説に臨むと、聴衆は数千人規模に膨れ上がり、その人気を証明してみせた。しかし、大阪以外の人間にしてみれば、言行不一致の橋下氏が、なぜ知事を続けていられるのか、さっぱり合点が行かぬ。案の定、大阪の中枢で離反は始まっていた。前出の府政担当記者が、こう語る。

「福島第一原発の事故後、関西電力が節電を要請した際、橋下さんは『原発がなければ生きていけないなどと言った電力会社に協力できない』『(大阪)市長の権限を持つようになれば、関電株の売却を考慮したい』などと突っぱねて府民の喝采を浴びましたが、その後、関電首脳陣に急接近しました。しかし、関電側が彼をまるで信用していない。電力票は一票たりとも入らないでしょう」

 さらに、当の関西財界関係者が、橋下氏の収入面にも疑問を投げかける。

「タレント時代に年間3億円稼いだと言われる橋下知事は、現在、知事給与を30%カットし、年収1400万~1500万円だそうだ。子供が7人いて、自分と妻の親も同居しているそうだが、それで賄えるのか長らく疑問だった。一方、弁護士でもある彼は法律事務所を存続し、顧問になっている企業は200社に及ぶと聞く。顧問料が1社月額5万円としても年間1億2000万円に上る。顧問料だから、政治資金規正法に引っ掛からず、公開の義務もない。だがその中に、府や市の公共工事を請け負う会社が含まれていたら、職責上、問題ではなかろうか」

左から中山泰秀前代議士、橋下氏、平松市長。中山氏は公認候補者にしてほしいと、自民党に直訴するとか〔PHOTO〕福原一緒

 現に、経営破綻した大阪・吹田市の「エキスポランド」の跡地に大型娯楽リゾート施設「パラマウント・リゾート大阪」の開発が構想されているが、橋下氏は'09年に開かれた府の部長会議で、「大阪再生の起爆剤になるのは間違いない。いろいろな課題があるが、会社側としっかりとコミュニケーションを取って進めてもらいたい」と指示している。この「会社」は、不動産投資ファンド「燦キャピタルマネージメント」を指しており、同社の前田健司社長は、過去、橋下氏の後援者だったと報じられている。

「まだ、構想の段階なのに橋下知事がテーマパーク建設に前向きな発言をしたことで、『燦』という会社にお墨付きを与えたと受け取られました。知事の発言が、同社や関連会社の株価に影響を与えたか、一部の政党やメディアが調査に動いたのは事実です」(前出・社会部デスク)

 橋下氏はこのダブル選に勝利し、都構想を実現して、'15年に引退するとまで言い出した。前堺市長で、『「仮面の騎士」橋下徹 独裁支配の野望と罠』(講談社)の執筆陣の一人、木原敬介氏は、橋下氏の本音をこう推測する。

「橋下氏は、目的のために手段を選ばない人です。だから、橋下氏にしてみれば、自分の意のままに動いてくれる人間であれば、松井氏でも、倉田氏でも、誰でも構わないんです」

 橋下氏は、必要なのは〝独裁者〟だと公言する。だが、橋下氏とその周辺を潤すための独裁だったら---。その独裁者がどうなるのかは、歴史が証明している。

「フライデー」2011年11月11日号より