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2011年02月11日(金)

交通事故死者数10年連続減少 なぜ減ったのか?
57年ぶりに4000人台となった前年を下回る4683人

 昨年の交通事故死者数は前年より51人少ない4863人で10年連続の減少。これは快挙といえるんじゃないだろうか?

 昭和30代~40年代にかけて、日本は高度経済成長時代、モータリゼーションとも重なり、交通事故死者数は1万6000人を超え、交通戦争と呼ばれるほどの社会問題になった。'70年にはピークを迎え、減少していくものの、'80年中盤から再び増加に転じ、1万人を突破し第2次交通戦争と言われる状態に。

 なぜ、これほど交通事故死者数が減ったのだろうか?

昨年の交通事故死者数を考察してみた

 昨年の交通事故死者数の4863人は、昭和27年とほぼ同じ死者数だ。この時代はまだ日本はモータリゼーションを迎えておらず、ヒルマンミンクスをいすゞが、オースチンA30を日産がノックダウンしていた時代だ。47年前の昭和27年と'10年の自動車保有台数を比べると、昭和27年は25万4542台、昨年はその300倍の7600万台だ。いかに事故死者数が少ないのかわかる。

 交通戦争と呼ばれ、最も死者数が多かった昭和45年と比較すると死者数は3分の1に減少した。

 いっぽう、事故の発生件数は72万4811件で当時とほぼ変わらず、負傷者数も89万4281人でほぼ同じ。事故はそれほど減っていないが車両の安全性能向上と救命医療の高度化が、死者数の減少に寄与していると思われる。

飲酒運転取り締まりや罰則強化が交通事故死者数を減らすことにつながった。ドライバー自身の意識も大切

 まず死亡事故者数減少の一因として考えられるのは飲酒による事故の減少。昨年11月末時点で5004件、うち死亡事故につながったのは254件だった。

 飲酒運転による死亡事故は平成14年6月に改正された改正道路交通法により罰則など強化されたことで減少してきたが、平成16年、17年は減少幅が小さい。

 しかし平成18年9月以降の飲酒運転根絶に対する社会的な機運の高まり、飲酒取り締まりの強化とともに平成19年9月の飲酒運転のさらなる厳罰化および、平成21年6月の悪質、危険運転者に対する行政処分の強化などにより18年以降は再び大幅に減少し続けており、10年前の4分の1だ。

 ただ取り締まり件数は実は激減している。昭和24年から平成20年までの取り締まり件数の推移を見ると、ピークは昭和59年の1373万5091件。平成元年に1000万件を切ってからは一度も1000万件を超えることなく、若干の増減はあるが、減少傾向(死亡事故減少カーブと同調)にあり、20年は平成元年比で約41%減となる817万5691件。違反の少なさが死亡事故減少に大きく影響している。

死亡事故減少の原因を考察する

シートベルト高い装着率によって事故死者数を低減

 これ以降のデータは平成22年のデータがまだ公開されていないため、交通事故者数が51台しか変わらない平成21年のデータをもとに、近年減少傾向のある原因について迫ってみた。

 シートベルトの着用率の高さも死亡事故減少に寄与している。シートベルト非装着車の致死率は、着用車の13倍以上。平成5年以降、シートベルト着用率がほぼ毎年向上している。

 死亡事故減少の一因として、事故直前の車両速度の低下、というものも考えられる。車両速度が高ければ高いほど死亡率が高くなり、80km/h超の高速の事故での死亡率は、80km/h以下の49.7倍になる。

 危険認知度速度とは、自動車または原付運転者が、相手方車両や人、駐車車両などを認め危険を認知した時点の速度のことで、一般道を80km/h超で走行するケースが激減している('99年比で23%)。仮に80km/h以上の場合でも、ABS、EBDなどの標準化などによりブレーキ性能が飛躍的に向上している点も、死亡時期激減で見逃せない。

 通常状態での運転時に比べ、自暴事故率は飲酒運転時が7.8倍、最高速度超過時が18.8倍、と飛躍的に高くなることが証明されている。それに対し、かつてはちょっとくらい酒を飲んで運転しても大丈夫、という風潮があったが、現在は飲酒運転に対するモラルが大幅に向上し、飲酒運転が激減。

 さらに最高速度超過違反をするケースも激減している。このように、悪質&危険性の高い状態での事故が減っていることが死亡時期減少に大きく貢献しているのは明らか。

 違反がゼロになるというのは非現実的だが、日本人の運転マナー、モラルが年々向上しているのはまず間違いないところ。

 最高速度違反による死亡事故は平成4年(2555件)をピークに減少に転じ、10年間で4分の1以下。さらに若者の最高違反による死亡事故も5分の1以下となった。

 しかし若者のクルマ離れ、高齢者社会という一面もみえる。 交通事故死者に占める高齢者(65歳以上)の割合は50.4%となり、統計を取り始めた'66年以降、初めて半数を超えた。

 自動車乗車中の死者数を年齢別に見ると、高齢者が(65歳以上)3分の1以上(37.0%)を占め、最も多く、次いで若者(16~24歳)、50代(13.2%)の順に多い。

 若者の自動車乗車中の死者数は昭和63年以降激減したが、平成3年(1647人)をピークに減少、その後も減少し続け、10年間で4分の1に減った。

 交通事故死者数を状態別にみると、歩行中(34.9%)が最も多く、次いで乗用車乗車中(32.6%)となっており、歩行者の事故対策に力を注がなければいけない状態だ。

編集部まとめ

 さて、交通事故死者数と交通違反が密接に関係しているというのは周知のとおりだが、近年の急激な事故死者数減少について、ひとつ興味深い考察がある。本誌の友人である警察関係者が語ってくれたのだが、

「駐禁取り締まり民営化以降、警察の交通課が、速度超過や飲酒運転の取り締まりにより力を入れられるようになった」

 というもの。平成18年6月に民営化がスタートしたことで、これまで駐禁取り締まりに割かれていた警察官たちが街中で目を光らせるあれるようになっているという。なるほど確かに最近、街中でパトロール中のパトカーをよく見かける。

 ザッとまとめると、

●飲酒運転の(厳罰化による)減少
●シートベルト着用率の向上
●最高速度超過違反の減少
●運転マナーの全体的な向上
●対歩行者衝突安全の向上
●救急医療技術の進化
●車両の安全性の向上(アクティブセーフティ/パッシブセーフティの両面)

 これらの要素がすべて影響して、交通事故死者の激減につながったわけである。

 

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