田原総一朗田原総一朗のニッポン大改革

2010年10月27日(水) 田原総一朗

田原総一朗×夏野 剛「ITを活用しない経営者は信長に敗れた武田勝頼と同じだ」
「立ち上がれ!ガラケー日本!!」 vol.3

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 田原: せっかく夏野さんにお会いしたから、ITやネットの将来を聞きたい。

夏野: ネットとかITとか、昔、鉄が「産業の米」と言われたのと同じように、ITとかネットというのはすべての産業のインフラなんですよ。

田原: ひと頃は半導体が産業の米と言われましたね。

夏野: 言われましたね、鉄の時代から半導体の時代へと変わった。今IT技術は、サービス業を含めたすべての産業の必須ツールなんです。言ってみれば戦国時代に鉄砲が入って来たようなものなんです。これがいいとか悪いとか、副作用があるとかないとか言っていられないんです。鉄砲入ってきちゃったんだから。

 あとは、どう使うか。どう使うかのほうが大事なんです。それを、いまだにITはちょっと特別なものだとか思ってる経営者がいるとしたら、早く引退すべきですね。

田原: 自動車が入って来たのに、まだ馬車に乗ってるようなもんだ。

夏野: 鉄砲が有効かどうかは、武田勝頼と織田信長の闘いで決着はついている。

田原: 武田勝頼ってね、若い人は知らない。ちょっと説明して。

夏野: 武田勝頼さんというのは信玄の息子さん。武田家というのは、騎馬軍団というのがあって、すごい強い騎馬の・・・

田原: 馬に乗った武田の騎馬軍団は戦国最強って言われていた。

夏野: 馬に乗って武士がわーっと切っていくわけです。これは日本最強でした。これで連戦連勝だった。ところが、織田信長はですね、新しい鉄砲というテクノロジーが来た時に、「これだ!」と言って大量に買った。しかも鉄砲を買うために堺を制圧したんですね。で、鉄砲を買ってきて何をやったかというと、3人を列にしてバーンと打ったら、退いて二列目が打つ。

 これを交替でやると連射ができる。昔は火縄銃で、火をつけてから発射まで1分くらいかかったから。この連射の仕組みを考えた。つまりITで言えば、コンピュータを1台持ってます、じゃなくて、そのコンピュータを使ってどういう組織にするかを考えたんですね。

 そうすると、最強の騎馬軍団が一生懸命来ても、鉄砲の前には無力なんです。これなんですね。

田原: 連射方式、これがすごいね。まだヨーロッパでもなかった戦法だという。

夏野: 新しいテクノロジー、これは単なるシンボリックな旗じゃないんです。もう戦闘のあり方、つまり経営のあり方を変えなきゃいけないんです。

田原: 変えなきゃ。

夏野: 実はもう変ってるんです。だって20年前は新入社員で入って来ても、パソコンなんてもらえなかったですよ。

 今一人一台全員パソコン持ってね、携帯もみんな持ってる。もうデートのあり方から仕事のやり方から180度変わっちゃったんですよ。

田原: ところがまたバカな会社があって、携帯をプライベートで使っちゃいけないとか。

夏野: PCは、ラップトップなのに会社から持ち出しちゃいけないとか。これ本末転倒なんです。ITってツールなんで、どんなビジネスにおいても、使ったほうが効率がよくなるんです。で、これを毛嫌いしたり、うまく使わないような体制とか仕組みとか、いまだに組織形態も役職がいっぱいあるじゃないですか。もう要らなくなったんです、社長がダイレクトに社員全員にメールを出せるんですから。

田原: フラットの時代ってやつだ。

夏野: フラットの時代になっちゃったんです。だって意思伝達いらないです。別に、Ustreamやニコ生で社長が全員に向けて話してもいいんです。

田原: 中間管理職は邪魔だという話になっている。

夏野: 違う役割がきちんとあればいいんです。だから、こういう情報伝達だけやってることが、僕は昔は「管理監督の経営」だったって言うんですけど、今はもう「率先垂範」の経営に変えなきゃいけないんです。

田原: 率先垂範ね。

夏野: ところが経営体制とか人事の仕組みとか、こういうものが全然変わってないんです。早く変えないと負けちゃうんです。

田原: 武田勝頼になっちゃう。

田原総一朗がtwitterをやっているのに、自分はやらない経営者って

夏野: どう使うかなんです。ITはITだけでは何もしれくれないんです。メールがあったってメールだけ。これを社内の組織の仕組みいれたときに、はじめてパワーになるんです。それ、あたり前のことじゃないですか。だけど、なかなかそれがまだできてない。

 それを反映して、ITを前提にした組織、人事、管理、こういうことをやってかないともうどんどん遅れるだけなんです。これは上から言わないとダメなんです、下から積み上げではできない。

田原: だって上はIT知らないもん。

夏野: そこが問題なんです。だから、僕は今の日本の経営者の方にぜひ言いたいのは、食わず嫌いをやめてほしい。田原さんなんてtwitterを使いまくってるわけでしょう? 田原さんより若い日本の経営者が、なんでやってないんでしょう。

田原: だからね、この国をよくするためには現経営者をクビにすると。

夏野: ははは。学んでもらうかね。だけどほんとにそこが・・・。

田原: 経営者の再教育機関を作ったらどうですか。

夏野: 教育するぐらいだったら替えた方がいいですね。自分で気づかない人はもう無理ですよ。だけど、この10年間の変化があまりに激しいから、これについていけないと思ったら、もう退職金もらって引退すべき。

田原: で、若返るべき。

夏野: うん、もう任せたと。「つらいから任せた」と。

田原: 例えば、民主党は、ひところ、トロイカ方式なんてバカなことをいっていた。これは鳩山、菅、小沢、これをトロイカだという。僕は、トロイカが全部辞めることがいいことだと。

夏野: それどころかトロイカプラス1なんて・・・(笑)。

田原: でね、トロイカなんて言ってる間は民主党はダメだと書いたの。若返れと。トロイカの二人がね、代表選、代表選って無駄な時間を一杯使うのがばかばかしいと。

夏野: 政治ですらそうなんだから、企業経営はもっとそうなんです。

 政治はまだね、有権者が票を入れて選ばれるので、まだそれでもいる意味あるけど。経営の現場では結果が数字で出ますから。成長がこんなにできてないんだったら、もうちゃんと体制を変えないと。

 人がどうじゃないんですよ。今までやってきたやり方が、通用しなくなってるんじゃないかなと疑わなきゃいけないんです。

高度成長を超えた失われた時代

田原: あのね、日本的経営というのはうまくいきすぎた。日本的経営とは何かというと、大企業が、政府のやらなければいけないことまでやっていた。例えば年金。企業年金ってありますね。例えば大企業の場合、社宅なんてあって、会社が借りてやって金もだいぶ出す。

 東京ではよくあるんだけど、マンション持っていて人に貸して、自分は社宅に安く住んでる。あるいはリゾート。箱根とかそういうところにいっぱい持ってる。ほんとは政府がやるべきことを企業がやってる。だから、政府は企業に甘い。つまり企業を潰さない。

 もう一つ。これはあまり人が言わないんですが、日本の大企業はなぜ大企業たるかということ。つまり、大企業はみんな下請けを使ってるわけ。下請けの特徴は、大企業に比べて給料が安いこと。非常に低賃金、長時間労働、つらい労働全部やってる。こういうことをやってるから大企業がもってるんで。

 下請けを安く使うことで、大企業の社員は給料が高い。で、あんまり仕事しなくていいんですよ。下請けと大企業と政府の、三位一体の形、これを日本的経営というんですよ。

夏野: それでね、成長し続けていられる間はそれでいいんですよ。各構成員がみんなメリットがあったから。成長しないとしわ寄せがいっちゃう。

田原: だから今きてる。破綻ですよ。

夏野: 高度成長期って言いますよね、いろんな見方ありますけど。だいたい64年のオリンピック以降、85年くらいまで、この20年ですね。

田原: あとはバブル。

夏野: バブルが5年間くらい。20足す5で、90年まで来るんですけど。それから20年経っちゃったわけです。なんだ、高度成長期より長い期間、失われたじゃないかという時代なんですよ。ところが、その高度成長期の体制を変えないまま20年やっちゃった。

田原: 変えなきゃいけない。

夏野: 変えてないんですよね。でも変えなきゃいけない。変えると、格段によくなりますよ。

田原: だから、経営陣や政治家がそういう認識をしろと。

夏野: ところがJALの問題もそうですけど、助けちゃうんですよ。金融機関もそうですよ。金融の方には申し訳ないけれど、あんだけ公的資金入れて、経営者変えてないってどういうことですか。

  JALも、僕は一回潰して、すべての路線を新しいスターフライヤーやスカイマークとかに割り当てればよかったんですよ。そうしたら新しい会社が出てきますよ。ところが、それを助けちゃうんです。

炊飯器をつくる会社がこんなにたくさんあるのはなぜか

田原: もっとひどいのは、バブルがはじけた。はじけたときの総理大臣は宮澤(喜一)さんだった。で、宮澤さんが92年にバブルが弾けて、ということは担保がゴミになっちゃったわけだから。宮澤さんは、公的資金を投入すると言ったんですよ、銀行に、金融機関に。一番反対したのは、大蔵省。反対って。

 なぜかというと公的資金、税金を投入するということは大蔵省が失敗したということですよね。官僚たちは失敗を断固を認めない。無謬性ってやつですね。銀行は大蔵省の子分で、言ってみれば工場長みたいなもんだから、公的資金が欲しいに決まってるのに要らないと言った。

夏野: そういうことですね。

田原: 当時銀行協会のスポークスマンだった人が、「要りません」と言っちゃった。あきれたことに、そのあと頭取になってるんだけどね。あのとき投入したら、10兆円以下でよかった。結局長引いて70兆円近く出さなきゃいけなくなった。しかもその間に、まさに失われ、失われ、失われ続けた。

夏野: そうなんですよね、出したときは銀行の経営陣は給料下げられたんでしょう?

田原: でも、変わらない。

夏野: 給料下げられて、「やあ、俺たちこんな給料になっちゃったけど、再生のためにがんばらなきゃ」とやってたんですけど、去年見たらみんな2億何千万園もらってるわけですよ。

田原: 上がってる。

夏野: 破綻したんじゃなかったのかと。

田原: いっぱい公的資金投入した連中が、なんで1億、2億もらうんだよと。

夏野: だからもう、昔のまんまなるべく生き残らせようというシステムというのをちょっと変えて、新しい血を入れたり、ダメなものはちゃんと清算しましょうというカルチャーに変えていかないと。政治もそうなんですけど、企業の中にもいっぱいあるんですよ。携帯の話で今日始まりましたけど、炊飯器。何社作ってます? ハイテク炊飯器。なんとか釜炊きのとか。

田原: 日本は、国内の競争が激し過ぎて、企業がへとへとになって海外にいけない。

夏野: ところが、炊飯器のマーケットなんて年間数百億もないですよ。そこにね、原発作ってる東芝や日立とかね。あげくのはてに専門メーカーで象印やタイガーまでいるんですよ。僕が東芝の経営陣だったらね、普通撤退させますよ。たぶんちょっとだけ利益が出るくらいの水準なんでしょう。選択と集中してないんですよ。

田原: なんでもつくっている。

夏野: 高給炊飯器は中国の金持ちに人気があるらしい。それだったら10万円で売ればいいわけです。

田原: 今中国では、日本の部品を使った製品がすごく評判がいい。ところが、日本の部品を作った企業に元気がない。今、台湾企業がね、こういう企業を買収しようとしているんです。

夏野: ほっとくと大変ですよ。潜在能力がある企業も、今、株価がつかないんですよ。全証券取引所に上場されている会社の3分の1は企業価値、株価の値段かける発行数、つまり企業の値段よりも純資産、会社が持ってる資産の方が大きいんですよ。

田原: 無効は買いたい、どんどん買っちゃう。僕は何人もの台湾の経営者から聞いた。

夏野: 買っちゃいますよね。

田原: 現に中国は日本をどんどん買ってますよ。さっきの人材、技術、金があると。

夏野: 経営者によっては夢のような国ですよ。これを生かして羽ばたく。これは日本人にだってできますよ

田原: ほんと、そうです。

(了)