週刊現代経済の死角

2011年07月05日(火) 週刊現代

もっと細かく全国1000ヵ所を独自調査
列島縦断 放射能はこんなに出ている
想像以上、汚染地域は日本各地に拡がっていた
実測数値を全掲載〈前編〉

表中の数値は細字が0.19未満(安全基準以内)、太字が0.19以上0.60未満、シロヌキが0.60以上(避難を検討したほうがよい水準) 単位はマイクロシーベルト/時
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●流山に新たなホットスポットが
●都内の高線量地域
●徹底調査!名古屋、大阪はなぜ高いのか
●原発周辺地域は総じて高い
●東北の現実

あなたの町の本当の線量は

「柏市(千葉県)に住む者ですが、本当に避難したほうが良いのでしょうか?」

「文京区(東京都)の幼稚園に子供を通わせる母親です。園長に頼んでも園庭の線量を測ってくれない。調べてくれませんか?」

「軽井沢(長野県)のもっと具体的な測定値が知りたいです」

 本誌前号が発売されてからというもの、編集部に読者からの電話が殺到した。ごく一部は「なぜ危険を煽るんだ!」という抗議だったが、ほとんどの電話から「本当のことをもっと知りたい」という切実な思いが伝わってきた。

 それらの不安はすべて、政府・行政の無策、無責任が原因である。

 政府の掲げる「年間20ミリシーベルト、毎時3・8マイクロシーベルト」という被曝限度量がいかにバカげているか、中部大学の武田邦彦教授が語る。

「ICRP(国際放射線防護委員会)が定めた年間1ミリシーベルトにしても、あまり言われていませんが、外部被曝と内部被曝を合計した数値です。国、各省庁が一致団結して、食物をきっちり検査する態勢を取っていれば、内部被曝はずいぶん減らせる。でも実情は、国はいま国民に積極的に放射性物質を含んだ食物を食べさせようとしているわけです。ですから、ある程度の内部被曝を計算せざるをえない。

 そうすると、毎時の限度量は3・8の20分の1、0・19でも、まだ多いということになる。様々な要因を勘案した上で、0・11マイクロシーベルト/時が、我々が浴びても安全だと言える基準だと私は提言しています」

 3・8マイクロシーベルト/時という数値の欺瞞については、自治体ですら認め始めている。6月22日、千葉県野田市は被曝限度を「年間1ミリシーベルト、毎時0・19マイクロシーベルト」と定めた。国の基準ではなく、ICRPの基準を独自に採用したのだ。

 前出の文京区に住む母親は本誌にこう語った。

「野田市長の判断は素晴らしいと思う。3・8マイクロシーベルト/時の安全基準なんて、自分の子供には絶対に当てはめたくない。母親なら皆、思いは同じではないでしょうか」

 そもそも「低線量被曝なら人体に影響はない」という「安全デマ」を最初に流したのは、枝野幸男官房長官だった。福島第一原発から漏れた放射線の量を発表した後に、毎度、「ちなみにCTスキャン1回分の5分の1の量です」などとつけ加えていた。

 日本大学専任講師の野口邦和氏(放射線防護学)がこう批判する。

「医療被曝は専門知識を持った医師が、『被曝させて将来ガンになる確率が上がるデメリット』と、『目の前にある病気を治療するメリット』を天秤にかけ、メリットがデメリットを十分に上回ると判断して行われている。医療被曝と原発事故による被曝を比較することが、そもそもおかしいのです。なぜなら、事故による被曝はデメリットしかないからです。

 官房長官がああいうことを言ったため、患者が放射線を使用する検査を嫌がるケースも出て、医療現場に混乱が起きている。放射線防護学会のメーリングリストでは、『学会として抗議すべきではないか』という声が飛び交っています」

 その場しのぎの安全デマの集積により、もはや国民は政府の言うことを誰も信じなくなった。3・8マイクロシーベルト/時という被曝限度量を安心して受け入れる人はいない。

0・85まで上がった

 すると、次に浮かんでくるのは、「果たして自分の住んでいる場所は大丈夫か」という心配である。3・8マイクロシーベルト/時を超える場所など、福島第一原発周辺以外には存在しない。しかし、0・19マイクロシーベルト/時、さらに武田教授の提唱する0・11マイクロシーベルト/時を超える場所は、日本全国に点在している。

 武田教授は本誌前号で、「0・6マイクロシーベルト/時を超えたら避難を考えたほうがいい」とも指摘した。さすがに多くはないが、その基準を超えている場所も、実際に存在する。

 福島市内で小学生を育てる主婦(38歳)も電話で本誌にこう訴えた。

「できたら福島市内もきちんと調べてください。いま子供を持つ福島の主婦がいちばん欲しい物は、ガイガーカウンター(線量計)なんです。でもなかなか個人では手が出なくて。行政はアテにならないので、どなたかが調べてくださるのを待っています」

 こうした声も受け、本誌は前号に続いて放射線量の独自調査を行った。

 今回は、調査範囲を全国に拡げるとともに、各エリアをより細かく調べることに努めた。調査ポイントは全国1000ヵ所以上。これから2週にわたり、その結果を詳報していく。今号は前編として、500ヵ所の実測数値を表にしてすべて掲載した。そちらもご参照いただきたい。

 まずは前号で反響の大きかった千葉県流山市、柏市の高線量エリアを再検証する。県内の「東葛」と呼ばれる地域だ。

 流山市の総合運動公園内で、1・88マイクロシーベルト/時(以下、単位はすべて同じ)を計測したことは前号で報じた。安全基準の約10倍の線量だ(政府発表の基準値では2分の1、となるが)。

 今回はその場所からさらに足を延ばし、調査を進めた。市内の空間線量は常に0・3を超えている感覚で、かなり高い。前記の運動公園のように、放射性物質が集まるホットスポットとなればさらに数値が上がる。武田教授が提唱する避難基準「0・6」も簡単に超えてしまう。

表中の数値は細字が0.19未満(安全基準以内)、太字が0.19以上0.60未満、シロヌキが0.60以上(避難を検討したほうがよい水準) 単位はマイクロシーベルト/時
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 流山市には、大手ディベロッパーによる高層マンション建設など、劇的な開発が進んでいる場所がある。「流山おおたかの森駅」(つくばエクスプレス)の駅前だ。百貨店が入る複合ビルもあり、街全体がキレイに整備された印象がある。

 本誌記者が駅前広場に足を踏み入れると、平和な風景に似つかわしくない電子音が鳴り響いた。音の発信源は、記者がポケットに入れていた線量計だった。

 取り出して見ると、0・52。この線量計は数値が0・4前後に達すると画面に「HIGH(高い)」と表示され、警告音が鳴る。

 線量計を見つめる記者に気づき、幼児を連れた母親が不安そうに寄ってきて、

「放射能ですか?」

 と尋ねる。やはり敏感になっているのだ。

 線量計は約15秒に一度、計測値を更新する(本誌は一ヵ所につき5~10回計測し、その平均値を取るようにしている)。ピッピッと音をたてる線量計のモニターを二人で見つめる。

 0・39、0・44、0・52、0・47・・・。

 ほとんどが0・4を超える数値で、その度に画面の背景が黄色くなり、「HIGH」の文字が出る。

「・・・駅なのに、そんなに高いんですか。マンションを買ったばかりなのにショックです。何より、こんなに高いんだったら、子供を外で自由に遊ばせられませんね。主人に相談しても『気にするな』としか言ってくれなくて・・・」

 夫婦間の温度差—特に子供が小さい家庭で、これが問題になりつつある。働き盛りの男性は、自宅周辺の線量が多少高かったとしても、目をつぶって仕事を続ける。それは当たり前の態度かもしれない。

 しかし夫の出勤後、子供とともに家に残された妻には、言いようのない不安が襲ってくる。

 子供を外で遊ばせていいのだろうか、魚や野菜を食べさせていいのだろうか、水を飲ませていいのだろうか・・・。

 こういった母の不安を、まったく掬い上げられていないのが、政府のいい加減な対応なのである。

 流山おおたかの森駅前広場では、アスファルトの上1mで計測した空間線量は0・38。地表0mが0・63。さらに芝生に移動すると、空間線量が0・53、地表線量は0・85にまで上がった。いずれも、地表面は避難基準の0・6を超えている。

 もちろん、人間がその場所で寝ころんで一日過ごすわけではないので、その数値=いますぐ避難、という意味ではない。だが、「安全だ」と思い込んで暮らしていると、思わぬ健康被害を受ける恐れがあることは、間違いない。

柏市と野田市の逆転現象

 流山市の北側に接する自治体が、国の方針を拒否して独自基準を決めた、野田市である。福島第一原発から放射性物質が流れてきたとすれば、北側の野田市がより高値だと予測できる。

 野田市に入り調査を開始した。ここで予測は裏切られる。市内を移動しながら線量計の数値を見ると、平均値は明らかに流山市より低い。だいたい0・15から0・2の間か。野田市駅前ロータリーを調べた。

空間線量 0・15
地表線量 0・24

 地表は少し高いが、空間線量は流山の約3分の1まで低下した。

 もう1ヵ所、ロータリー内の植え込みを調べた。

空間線量 0・18
地表線量 0・22

 同じ水準だ。

 放射能汚染の拡がりが同心円でないことはすでに知られているが、野田市と流山市のように、福島から直線上にある2点の線量が逆転するという現象もある。

 つまり、野田市は通らずに、流山市だけに放射性物質が辿り着いたルートが存在するということだ。表を見てもらえばわかるが、福島からの「風の通り道」に位置する栃木県宇都宮市の線量も低い。

 なぜこういう逆転現象が起きるのか。いくつかの仮説があるが、それについては、次号で詳しく検証していきたい。

 野田市から柏市へ。また線量が0・3を超える。やはり千葉県では、この両市がホットスポットとなっている。柏の葉公園で調べた数値(表参照)は、やはり高い。激しい電子音が鳴り続けるため、公園内にいる人々が何事かとこちらを見る。この公園は、もはや長時間くつろげる場所ではなくなっているのに、市民はそれを知らない。一刻も早く、行政が腰を上げなければならない。

 では次に、東京都内を前号より詳しく見ていこう。表の数値を見ると、葛飾、足立、北、荒川、江戸川、江東、台東、文京の各区が比較的高い傾向にある。

 千葉の東葛地区に近い葛飾区や足立区、江戸川区、それらに隣接する北区や荒川区の線量が高いことは、予想ができる。しかし、文京区が高いことについては、識者たちもはっきりした見解を述べられていない。

 理由はどうあれ、高いのは事実であり、文京区に住む母親たちの焦燥感は募っている。有名校が多く、子供の教育に熱心な文教地区だからなおさらだ。

 6月19日には、「放射能から子どもを守る文京ネットワーク」の第1回会合が開かれ、30名ほどの母親たちが参加した。参加者の一人がこう明かす。

「うちの子供は区立保育園に通っていますが、園長先生はまったく私たちの不安に耳を傾けてくれない。『区役所の方針に従ってやっています』と繰り返すばかりで、区役所にきくと『国や東京都の方針に従っている』と言う。全体として保守的で、私たちとの意識の差が大き過ぎるんです」

 同ネットワークは署名を集め、7月には区役所に提出する予定だ。

 母親たちはインターネットで情報交換をすることが多いが、彼女らがいてもたってもいられなくなったのは、ネット上でこんな情報が流れたからだ。

「文京区の道端で、2・39を計測」

 証拠として線量計の写真も添付してある。千代田線千駄木駅近く、急な坂を下りきった場所だという。

 2・39とは尋常ではない数値だ。本誌がこれまで測った中でも、最高値は流山の2・12だった。本誌が周辺を測ったところ、そこまで高水準の値は出てこなかった。しかし一度は計測されている以上、とんでもなく線量が高いホットスポットが潜んでいる可能性は否定できない。

 署名活動によって区役所の対応は変わるのか。文京区の母親たちの不安な日々は続く。

事故がなくても漏れている

 次に本誌が着目したのは「原発周辺地域」の線量である。今回、次々に明らかになった国と電力会社のウソ。その最大のものが「原発はクリーン」だった。ひとたび事故を起こすとあれほどの放射性物質を垂れ流す原発が、平時にはクリーンということがあるのか。

 まずは静岡県御前崎市の浜岡原発に向かった。途中、横浜や逗子、熱海などで線量を測ったが目立った数値はなかった(表を参照)。静岡、菊川も異常なし。原発のお膝元、御前崎市役所に着いた。線量は0・17と低い。原発周辺も、高くても0・2前後だった。

 原発から約3km離れた民家の庭を測った。

空間線量 0・18
地表線量 0・15

 そこに住む住民が語る。

「この数値が高いのか低いのか、正直よくわからない。福島から放射性物質が飛んできているという話もきくけど、それ以上に(浜岡原発の方向を指さし)あそこから漏れていないかが心配です。停止したってことは何か問題があったんじゃないのか。どれだけ安全と言われても信用できないし、いまはとにかく大地震が来ないことを祈るだけです」

 浜岡原発では、周辺地域との有意な差は見受けられなかった。

 しかし、表をよく見てほしい。福井県の原発銀座、島根県の島根原発、佐賀県の玄海原発では、いずれも少し高い値を示していることがわかるだろう。

「当然のことです」と語るのは、元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二氏だ。

「端的に言うと、原発はたとえ事故がなくても、放射性物質を完全に外に出さないようにするのは不可能なんです。微量の放射能は日常的に出ています。原発には必ず高い煙突がありますが、あれは基本的に、煙ではなく放射性物質を出すためのものです」

やはり高かった東海村

 停止している浜岡が低かった事実も、小林氏の証言を裏づけているのか。同氏が続ける。

「日常的といっても、ずっと出ているわけではなく、バッチ式といって、ある程度溜まったら放出するということを繰り返しているのです。煙突を高くしているのも理由がある。低いと近隣の住民を直撃してしまうが、高いところから出すことで、地上に到達するまでに拡がって薄まるという考え方です」

 ここでも出てきた「拡散して薄まる」という論理。汚染水を海に垂れ流す時もそうだった。水俣病の時代から、国や国策企業の発想は変わっていない。毒物は薄く広く流す。今回、本誌が計測した値は、この国のそんな薄ら寒い正体を物語っている。

 もちろん、少し高いとはいえ、この程度の数値では住民の苦情に自治体が対応することはないだろう。

 しかし、原発でもここだけは別だった。茨城県の東海村である。

 東海村といえば、'99年に起きたJCO臨界事故で作業員2名が死亡したことが記憶に刻まれている。その時に公開された被曝者の無惨な映像が、我々のもつ放射能への恐怖の具体的なイメージを形成している。

 敷地入り口近くの公道に警備員が二人立っている。周囲には「立ち入ることを禁ず」の看板多数。公道から手を伸ばし、入り口付近を計測すると、いきなり線量計がけたたましいアラームを発した。

 0・80---。

「DANGEROUS(危険)」という赤い文字とともに、信じられないほど高い数値が表示された。平均すると0・70。原発施設の他の場所も比較的高かったが、この入り口付近の数値だけは異常だ。余計なお世話かもしれないが、そこに防護服も着ず立ち続けている警備員たちの健康被害が心配になる。

 近隣住民はこう語る。

「うーん、思ったより高いね。でも、こんなに近いんだから、気にしてたら生活はできない。もちろん事故は心配だけど、それも覚悟しているよ」

 今回の高線量と'99年の臨界事故に因果関係があるのか、手持ちの機器ではそこまで判別できなかった。だが、半減期が10年を超える放射性物質はざらにある。その可能性も否定はできないだろう。

 続いて本誌は、東海道線を下って愛知に入った。豊橋市、岡崎市、安城市、数値は安定しているようだ。トヨタ自動車のお膝元、豊田市に入る。空間線量は0・1台半ばと低い。記者が線量を測っていても、東京や千葉と違って気にとめる人はいない。危機感が薄いのだろう。

 しかし、名古屋市に入ると、少し数値が上がったように感じる。名古屋駅新幹線ホームが0・17。ナゴヤドーム前は0・19。中部電力本店前が0・21だった。

 名古屋を抜けて岐阜へ。恵那市に入ってアスファルトの路面を計測すると、最高値で0・39を計測し、名古屋エリアで初めて「HIGH」が表示された。

 続いて大阪に入る。全体的に、静岡や横浜と比べると少し高い印象を持つ。

 大阪城公園の天守閣前広場では、中国人観光客が集まっていた。観光ガイドが機関銃のような早口で中国語を叫んでいるが、その間隙をつくように線量計が音をたてた。

 数値は0・32。これは最高値で、平均するともう少し下がるが、高い水準であることに変わりはない。東京を敬遠した観光客が大阪に流れているが、大阪とて汚染と無縁ではない。

梅田のビル街で0・34を計測

 外部被曝の場合、除染といって、水で洗い流すだけでも数値を下げることができる。逆に、空気や水が滞留するところは、放射性物質も溜まって線量が高くなる傾向がある。

 大阪のある街でゴミの山のなかに線量計を突っ込んでみた。数値がみるみる上がっていき、最高で0・35を記録した。

 このゴミはおそらく、原発事故当時からずっと放置されてきたのだろう。大阪府内の他の場所より明らかに高いということは、やはり空気が滞留する場所は危険なのだ。

 次に訪れたのは、大阪のシンボルタワー・通天閣がそびえる新世界。空間線量はそれほどでもないが、裏路地にひしめく民家の雨どいを測定すると、最高で0・32を計測した。

 環境NGOグリーンピースの核・原子力問題担当部長のヤン・ベラネク氏は本誌にこう語っていた。

「汚染度が高いのは盛り土や枯れ葉の山、道路脇の草むらや側溝などです。そしてもっとも危険なのが雨どいの下。それが溝などにつながっていればいいが、地面に垂れ流しになっていると要注意です」

 やはり大阪でも、こうした場所は高い傾向がある。梅田のビル街で調査をしていた時のことだ。大阪駅北側にあるヨドバシカメラ前の空間線量は0・17程度だったのに、横断歩道を渡った向いのビル下の植え込みでは、0・34という数値が計測されている。

 このようなミニホットスポットは、福島から700km離れた大阪にも点在しているのである。橋下徹府知事が府庁移転を目論む大阪南港でも、0・2を超える数値が計測された。

 それにしても、千葉や東京東部の線量がおしなべて高いことは、福島第一原発からの距離を考えても理解はできる。しかし、名古屋や大阪の水準が静岡より高いのはなぜだろうか。

 近畿大学理工学部の山崎秀夫教授(環境解析学)がこう解説する。

「日本の場合、地面からくる自然線量は標準で0・03~0・05だと言われています。外国に比べて低いのは、土壌に含まれるウランやトリウムなどの天然放射性元素の量が比較的少ないからです。

 ウランは火成岩である花崗岩のほうが濃度が高く、堆積岩のほうが低い。ですから火山灰と堆積岩でできている関東平野より、生駒山や六甲山など花崗岩でできた山のある大阪のほうが線量が高いんです。糸魚川から静岡に抜ける中央地溝帯の西と東では、岩石の構造がずいぶん違う。その境目より西が、東より少し高いと一般的には言われています。岐阜なども、ウランなどを豊富に含む花崗岩が多いので線量がやや高い傾向があります」

 岐阜の恵那市は有名な花崗岩の産地だ。先ほど線量が高かったことも、これで説明がつく。

スーパーホットスポット

 もちろん、名古屋・大阪も福島第一原発から出た放射性物質の影響を受けないわけではない。佐賀の唐津市でセシウムが検出されたことからも、それは証明されている。

 ただ、山崎教授の言うように、西日本はもともと東京より線量が高いという事情がある。放射線量の高低については、そうした環境要因も含めて考慮する必要があるようだ。

 避難区域を除く東北被災地の線量はどうか。本誌は今回、三陸海岸沿いを走る国道45号線を北上し、宮城県石巻市から岩手県宮古市を調査した。震災直後は壊滅的な打撃を受けたこの道も、今は災害派遣の車両や仮設住宅、瓦礫などの運搬車両で混雑している。

 表を見てもらえばわかるが、宮城県の女川原発周辺で高くなり、気仙沼にホットスポットが見受けられるが、他は比較的低く安定している。陸前高田市で避難生活を送る男性が言う。

「線量が低いってきいて安心したよ。目の前のことが大変だからあんまり話題にはならないけど、ウチのカミサンなんかも本当は心配してんだ。国の言うことは信用できないから、こうやって調べてもらえるのはありがたいよ」

 だがやはり、本誌がかねて指摘しているように、福島市内と郡山市内の数値は高い。福島市には地表線量7・74というスーパーホットスポットも存在した。

 そして今回、新たに判明したのが、両市に挟まれる位置にある二本松市の予想以上の高さだ。地表線量が3を超える場所がある。同市に住む60代女性が困惑を隠さずに言う。

「やはり高いですか。二本松は当初避難民を受け入れていたせいで、線量が高いっていうイメージがないんです。しかも、福島市は少しずつ下がっているようだけど、二本松は全然下がらないから、いまとなっては福島市内より高い場所もある。すでに避難してしまった人もいるし、私も犬を抱っこして散歩している。犬を抱っこしてる人、二本松にはたくさんいますよ」

 二本松の現状を見ても、福島第一原発からは、いまも放射性物質が漏れ続けている疑いがある。日一日、刻一刻と、放射能汚染地域は変化し、しかも拡がり続けている。

 これからはなおさら、全国各地の放射線量をきちんと調べ、それを住民に周知していく必要が出てくるだろう。だが繰り返すが、政府はアテにならない。

 本誌は次号も引き続き、全国の放射能汚染、特に高線量地域を中心に、その実態をレポートしていく。

 

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