井上久男「ニュースの深層」
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軽自動車の雄・スズキの「迷走」~カリスマ経営者・鈴木修会長も老いには勝てぬか

2016年03月26日(土) 井上 久男
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【PHOTO】gettyimages

業績は好調だが、なにかがおかしい

スズキが3月9日から国内で販売開始した小型車「バレーノ」は、インドで生産した逆輸入車だ。同社がインド製の自動車を国内で売るのは初めて。記者会見したスズキの鈴木修会長(86)は「インドで30年以上車を造ってきたが、ようやく品質が日本の工場の水準にまで達した。他の輸入車と同様に日本でも二重検査をしており、品質は全く問題ない。グローバル化とはこういうことではないか」と胸をはった。

自動車市場の成長が有望なインドで圧倒的なトップシェアを誇るスズキ。1983年から他社に先駆けて積極的に投資してきた努力が実った成果と言えるだろう。足元の業績を見ても2016年3月期の第三・四半期決算(2015年4~12月)では純利益が前年同期比28%増の1022億円となり、過去最高を更新。国内や東南アジアの不振をインドでの販売増が補って増益に貢献した。

業績は好調なものの、スズキの最近の動向は何かおかしい。86歳という年齢からすれば当然なのだろうが、カリスマ経営者と呼ばれる鈴木修氏の言動からは「焦り」のようなものが感じられるからだ。

たとえば、スズキ社内で最近、最も驚かれたのが2月8日に発表された3月1日付役員人事だ。二輪事業本部長の望月英二専務が左遷され、経営企画室特命担当に転じた。望月氏は国際戦略車「スイフト」の開発責任者を務めた後は購買部門の担当が長く、鈴木会長の信任が厚く、その手腕に期待されて不振の二輪事業の再建を2013年4月から託されていた。

さらに望月氏にはもう一つの「顔」がある。昨年6月30日付で社長に昇格した鈴木会長の長男、俊宏(56)の「守役」の一人だ。「下請け企業との会食でも無口でほとんどしゃべらない俊宏氏に同行し、明るい望月氏が盛り上げ役を務めていた」(浜松財界関係者)と言われる。

後継者の側近でも実績が上がらないと見るや、即座に更迭する「修流」信賞必罰の組織掌握術を見せつけたものの、望月氏に対しては同情論もあり、「3年も経たずに成果を求めるのはあまりに酷ではないか」という声も出ている。

昨年には国内営業を牽引してきた功労者とも言える田村実副社長をばっさり斬った。田村氏は当時66歳。「社外取締役から役員の高齢化を指摘された。私が辞めればいいのだろうが、うぬぼれもあって……」と修氏は人事の理由を語ったが、業界内には冷徹人事と見る向きも少なからずあった。

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