読書人の雑誌『本』より
2016年03月25日(金) 中屋敷均

ウイルスは生物か、無生物か
〜生命科学が解き明かした驚きのウイルス像

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Photo:iStock

(文/中屋敷均・神戸大学農学部教授)

どこまでが「海」でどこからが「陸」なのか?

子供の頃、世界地図を見ていて不思議に思ったことがある。それは、どうして国境線は真っ直ぐに引かれてないのだろう? ということだった。

アメリカ大陸やアフリカ大陸などを見ると、真っ直ぐに引かれた国境が時々あるのに、多くの国境線は何か訳の分からない形になっている。どうしてそんなことをするのだ? 定規で真っ直ぐ線を引けばいいのに、ややこしいじゃないか、と思ったものだった。

少し大人になると、国に限らず地域を分ける境界線というのは、大きな川であったり、高い山であったり、元々そこに人の往来を妨げる障害物があって、それにより自然に形成されていくものなのだということが分かってくる(もちろん、国と国の境というのは何かと面倒な事情が絡んでいることが多いことも知るようになるのだが……)。

子供の頃、良いなと思って見ていた「真っ直ぐ」な国境線は、むしろ不自然なもので、それはそこに「人の生活」に基づいた自然な線が形成されておらず、ある意味、無理やりに国と国の境界線を決めた結果であったのである。

この「何かと何かの境」というものは、周囲を見渡せば無数に存在するし、そのことに何の疑いも持たずに常日頃、私達は生活している。しかし、国境線をどこに引くかが、時に大問題となるように、そのことも疑い始めると、簡単には答えられないものが実は多い。

例えば、海と陸地を考えてみよう。海は地球の表面にあって塩水で満たされた領域で、陸地は大陸や島など、その海に覆われていない領域のことである。その区別には何の疑いもないように思える。

しかし、では砂浜に出てみよう。そこを見れば分かるように、海には寄せては返す波があり、一体、そのどこで海と陸の境界線を引けば良いのだろうか? また、それに加えて干潮・満潮といった潮の満ち引きがあり、海岸線は1日で数十メートル移動することもしばしばである。一体、いつの境界が、海岸線なのか?

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