現代ノンフィクション
2016年03月23日(水) 平井 美帆

お金のために「お腹」を貸す〜インド人「代理母」たちの事情

依頼者の中には日本人夫婦も

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アナンドのサロガシーハウス(代理母寮)の玄関前 © Miho Hirai

過去十数年の間に「代理出産」は、一部の州で認められているアメリカではなく、3分の1ほどの価格で依頼できるアジア諸国に舞台が広がった。代理出産を取材し続けた筆者による、およそ13年にわたった「インド代理出産」をめぐる渾身ルポルタージュ(第2回)。

第1回はこちらからご覧ください。

文・写真/平井美帆(ジャーナリスト)

インド人代理母たち

サロガシーハウス(代理母寮)は、コンクリート2階建ての大きな建物だった。その周辺を、長い箒を手にした裸足の女性がせっせと掃き掃除をしている。内部も広々としていて、部屋数は1階と2階を合わせて10室もある。

ナイナによると、ここで25人の代理母が集団生活を送っているという。代理母の数は、約60人。二軒のサロガシーハウスがあり、三軒目を探しているところだ。

ほとんどの代理母は英語を話さないため、グジャラート語の通訳を介して話を聞いてみたが、彼女たちの生い立ちや環境に大きな相違はなかった。10代で親が決めた見合い結婚をして、受けた教育年数は5年から10年。なかには「学校に行っていない」と話し、読み書きのできない女性もいた。

依頼主夫婦とは電話で話したり、会ったりしたことが、1回あるかないか程度の関係だった。代理出産の報酬の使い道は、家を買うため、子どもの教育費のため、商売用のオートリキシャ(三輪タクシー)を買うため――。

サロガシーハウスの代理母たちは妊娠周期によって、部屋を分けられていた。 © Miho Hirai

パテル医師のクリニックに通ううち、診察を受けに来た代理母たちにも話を聞くことができた。

ほっそりとしていて小柄なミラ(25歳)は、まだ膨らみの目立たないお腹に、双子を宿して3ヵ月になる。依頼主夫婦はデリー在住のインド人だそうだ。

彼女は31歳の夫との間に、8歳、6歳の子どもがいて、結婚したのは「10歳」だと答えた。数字はおおざっぱのようだが確かめようがない。教育は「8学年」まで受けた。夫はグジャラート語を書けるが、教育を受けたことはない。オートリキシャのドライバーをしていて、1日の稼ぎは150ルピーから200ルピー。

ミラは先ほどから、ずっとお腹に手を当てている。「体調はどうですか?」と尋ねると、「お腹に痛みを感じる。だけど、それほどでもない」と彼女はか細い声で答えた。

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