日本一の書評
2016年03月12日(土)

これからの経済を予言する3冊
~行き詰る「資本主義」の次は何か

リレー読書日記・熊谷達也

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[Photo:iStock]

今年も3月11日が近づいているせいで、通常の仕事に加え、震災関連のあれこれが重なって少々忙しい。この5年間、東日本大震災の被災地をモデル(「仙河海市」という架空の港町)にした小説を書き続けている身としては、趣味の読書の時間くらいは震災から離れたくなるのが人情というものである。

こういう時こそ、視野を広げるために世界情勢にでも思いを巡らせてみようか、ということで、まず手に取ってみたのが『これから世界はどうなるか――米国衰退と日本』だ。

本書では、序章と終章以外の5つの章のタイトルが、いずれも設問の体裁になっている。

たとえば第一章は「情報革命は国際政治に影響するでしょうか」となっているのだが、その冒頭を引用すると「新聞やテレビが日々報じているニュースを理解するために、国際政治を学ぶ必要はあるでしょうか。あります。残念ながら、今日の新聞やテレビは特定方向に誘導するため、虚偽と詭弁に満ちているからです」と、マスコミ関係者が読んだら目を吊り上げたくなるような記述から始まっている。

それだけで私などは「これは読む価値のある本かも」と思ってしまう。その例として著者は、東日本大震災における原発事故の報道のあり方を取り上げている。

原発事故という私たちの身近な関心事から始まる本書は、第二次世界大戦から今日までの、国際関係における、米国支配が終わるか。終わるとすると、世界秩序はどうなるか。それをテーマに論じているのだが、どの章においても、出典を明示した上で、二つの考え方を紹介している。

結果、最終的な判断(それぞれの問題に対して自分がどんな態度を取るか)は、読者が主体的に下す必要に迫られるのだが、それこそが著者のねらいなのだろう。

日々変化する国際情勢を私たちが考えようとする際、様々な示唆に富む本であったが、国際政治を左右する最大の要因は、やはり経済なのだなと、あらためて感じた。

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