伊藤博敏「ニュースの深層」
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「3人突き落とし殺人」直後に転落事故が発生――老人ホームで相次ぐ非人道的なトラブルは、防ぎようがないのか

2016年02月25日(木) 伊藤 博敏
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(Photo)Getty Images

「突発事故は防げない」

目撃者はおらず、監視カメラも設置されておらず、事故処理して司法解剖もしていない――。

頼りは殺害者の自供のみ、という殺人事件としては非常に困難な捜査が予想され、「迷宮入りもありうる」とされた川崎市幸区の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で発生した入居者3人の連続殺人事件は、2月15日、元職員の今井隼人容疑者(23)が自供したことで急展開、一挙に解決の方向に向かった。

そのタイミングで、「突発事故は防げない」とする会社側の回答書が寄せられ、改めて、労働環境改善の難しさが浮き彫りになった事件がある。

1月25日夜、アミーユ光が丘で1階の同じ利用者が、2度もベッドから転落するという事故が発生。かねて、各階に職員を配置、入居者全員に目が届くような環境改善を訴えている東京北部ユニオン・アミーユ支部は、2月2日、「夜間帯1名を早急に増員して職員を配置すること」という緊急要求書を会社側に提出した。

それに対して会社側は、2月15日、事故は「一過性の体調変化による転落事故である為、事故防止の為に職員の増員が必要とは考えられません」と、拒否したうえで、次のように踏み込んで回答した。

「各フロアに職員が常駐していたとしても、突発的な居室で発生する事故は防ぐことはできません」

欠けているのは、事故を未然に防ぐという発想であり、要求拒否の底に流れるのは、増員による経費増への恐れだろう。

たしかに、同じ介護事業者「メッセージ(ジャスダック)」で発生しているとはいえ、連続殺人事件とは関係がない。しかし、夜間は忙しく手が回らないという労働環境は同じ。そのため介護職員の多くがストレスを感じ、今井容疑者のような殺害は論外にしても、「虐待の土壌」があることは様々な介護現場で耳にしたし、この問題が発覚した昨年9月以降、多くのメディアが報じてきた。

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