川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

いま、ドイツ人が最も怖れるベルギー原発の「放射能問題」

ひび割れだらけで、漏れる可能性?

2016年02月19日(金) 川口 マーン 惠美
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ティアンジュの原子力発電所(写真は2006年)〔PHOTO〕gettyimages

ドイツ・アーヘン市から70キロたらず

ドイツの西部のアーヘン市は、ベルギー、オランダ両国と角を付き合わせるように接する場所だ。人口24万人、工科大学が有名。

ベルギー国境、あるいはオランダ国境は、郊外の森の中であったり、町の中を走っていたりで、川や柵があるわけでもなし、どこも歩いて越えられる。ヨーロッパの領土の複雑さを象徴するような場所ともいえる。

この、あるような無いような国境が仇となり、1944年10月、米軍がアーヘンに攻め込んだ。これによってアーヘンは、ドイツで初めて連合軍に占領された都市となったのである。

米軍により市民が受けた被害は絶大なもので、翌年、アメリカ人との混血児がたくさん生まれたというが、終戦後のドイツは、暴かれたホロコーストの罪業に押し潰され、自分たちの被害を訴えることは叶わなかった。

アーヘンには、もっと古い歴史の痕跡もある。8世紀末、のちに「ヨーロッパの父」といわれるようになったカール大帝が、この地に自らのフランク王国(神聖ローマ帝国の礎)の首都を置き、きらびやかな大聖堂を建立した。以後、歴代のドイツ王、つまり、神聖ローマ帝国の皇帝は、この大聖堂で戴冠式を行った(のちに戴冠式はフランクフルトに移る)。

アーヘンにはドイツには珍しく温泉が湧き出る。アーヘンという地名は、ラテン語のアクア(水)に相当する古いドイツ語 "aha" からきているそうだ。老後、神経痛に悩まされた大帝は、宮殿に温水プールを作らせ、自らがご機嫌で泳いだばかりでなく、お客まで呼んで、皆を泳がせたという。現在も、アーヘンには大型スパがあり、その名も「カルロス・テルメン(カルロスは、カールのラテン語読み)」という。

それはさておき、そのアーヘンから70キロたらず、ベルギーのティアンジュという町にある原発「ティアンジュ2号」が、今、問題になっている。誰が問題にしているかというと、主にアーヘン市とその周辺地域の住人、つまり、概ねドイツ人である。

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