井上久男「ニュースの深層」
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「敵なし」の慢心が爆発事故を招いた? トヨタにはいま、緊張感が足りない

2016年02月03日(水) 井上 久男
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【PHOTO】gettyimages

世界に敵がいないという油断

トヨタ自動車は、車両を組み立てる国内16工場を2月8日から13日までの6日間全面的に稼働を止める。トヨタが2月1日に発表した。トヨタは現在、一日当たり約14000台を組み立てており、減産規模は8万台程度になる見通しだ。

生産停止の理由は、グループ企業である愛知製鋼の加熱炉で1月8日に爆発事故が発生、エンジンの動力を伝達する部品などに使う特殊鋼の供給が止まるためだ。これまで在庫と他社への代替生産で対応してきたが、それでも回らなくなってきたため、工場を止めることになった。

筆者はこの事実を聞いて、トヨタおよびグループ企業の緊張感が緩んでいるのではないかと感じると同時に、現在のトヨタの組織力の低下を垣間見た。トヨタは2016年3月期決算で2兆8000億円の営業利益を見込み、過去最高を更新する。円安の追い風が吹くうえ、最大のライバルと目されたVW(フォルクスワーゲン)も品質問題で自滅して、もはや世界に敵がいない状況と言っても過言ではない。そこに油断があったのではないか。

そもそも安全や品質を大切にするトヨタグループで加熱炉爆発の大事故が起こること自体、信じられない。しかも現時点で原因を究明中だそうだ。労働災害や事故の経験則として「ハインリッヒの法則」がある。一つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、さらにその背後には300の何らかの異常が存在しているといった経験則だ。

加熱炉の事故も、普段の安全管理が疎かになっており、それが顕在化してしまった可能性がある。生産現場の安全が順守され、それが品質管理の向上にもつながる。こんな爆発事故を起こすようでは、豊田章男社長が掲げる「もっといいクルマづくり」は単なるお題目に終わりかねない。

トヨタの経営管理で緊張感が足りないと思う点がいくつかある。まずは、「在庫」だ。このような事故が起こり、トヨタの工場が止まると、「在庫を持たないカンバン方式のせいだ」といった批判が起こるが、これは批判の的が外れている。本来絶対に起こしてはいけない事故や、不慮の災害に備えて在庫を持っておくという発想自体がナンセンスだ。

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