現代新書カフェ
2016年01月28日(木) 田坂 広志

「言葉」だけで商談している人間は、仕事ができない〜「深層対話」の技法をどう身に付けるか

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〔photo〕iStock

文/田坂広志

第1話 すべての分野で役に立つ「仕事の技法」は「深層対話の技法」

序話において、「仕事の技法」の根幹的技法は、「深層対話の技法」であると述べた。

そこで、まず最初に、著者が「深層対話」の重要性に気づき、その「深層対話力」を磨こうと考え、そのために「反省の習慣」を身につけた、「原点」となる体験を語ろう。

それは、34年前の、ある営業の場面。

著者が、大学院を終え、民間企業に就職し、新入社員として仕事を始めたばかりのこと。

配属になった営業部の仕事で、上司のA営業課長とともに、夕方、顧客企業でプロジェクトの企画提案を行った。その後、顧客企業のB部長、C課長、D担当の三人を会食に招き、さらにその後、銀座での深夜の飲み会へと、一連の接待を行った。

その最初の営業の場面が、いまも心に残っている。

接待を終え、最後に、顧客三人をタクシーで見送ったときには、すでに夜中の二時を回っていた。心の中で、「もう夜中の二時か……。明日は土曜日だが、また九時から仕事だ……。早く帰らなければ……」と思っていたところ、上司のA課長が、こう言った。

「田坂、コーヒーでも飲むか……」

一瞬、「早く帰りたい」と思ったが、折角の上司の誘い、慰労の意味もあるのかと思い、近くの深夜喫茶に足を運んだ。その喫茶店の片隅に二人で座り、注文したコーヒーがテーブルに出され、それを飲み始めると、やおら、その上司が、聞いてきた。

「田坂、お前、どう思った? あの夕方のこちらからの企画提案、あの技術仕様の説明のとき、先方のB部長、首をかしげていたな……。あれは、こちらの技術仕様に疑問があるのかな?」

突然の切り出しに、少し戸惑いながら、こう答えた。

「いや、気がつきませんでした……。しかし、B部長、会議の最後に『良い提案を有り難うございました』と言われましたよね……」

「それは、ご祝儀で、そう言うだろう。しかし、俺は気になったな……。田坂、明日の朝一番、先方に、あの技術仕様について、追加説明の資料をファックスで送っておいてくれ」

上司に、そう言われ、「分かりました」と答える間もなく、さらに、このA課長、次の質問をしてきた。

「その後の、会食のとき、隣に座った先方のC課長、このプロジェクトについて、分割発注もあるという言い方をしたのだが、お前、どう思う? これは、競合企業のE社に、半分の発注を決めたということかな?」

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