川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

人類が「原発」を手放せる日は本当に来るのか? 地球温暖化対策の深刻なジレンマ

2016年01月22日(金) 川口マーン惠美
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〔PHOTO〕gettyimages

昨年11月30日に始まったCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)には、世界の95ヵ国とEUが集った。

しかし、夜を日に継いで討議が続いたものの交渉は難航。会議は1日延長され、12月12日夜、ようやく議長役のフランスのファビウス外相が木槌で机をポコン! こうして、2020年以降の温暖化対策を定めた「パリ協定」が誕生したのだった。

会場はワーッとどよめき、拍手の嵐。皆が立ち上がって抱き合い、中には泣いている人までいた。世界市民はついに団結し、地球温暖化の阻止に向かって歴史的な一歩を踏み出した!というような報道だったが、それはちょっと大げさだ。

地球の温暖化が話題になり始めたのは80年代の後半。このままでは大変なことになると気づいた先進国が、CO2(正確には温室効果ガスである計6種のガス)の削減に地球規模で取り組もうと決意したのがCOPの事始めだ。

当時も熱心なのはドイツだった。京都議決書が採択されたCOP3(1997年)に参加していたドイツの環境大臣は、若かりし頃のメルケル首相である。

誰もがCO2を減らしたいと思ってはいるが

CO2を減らすには、化石燃料を燃やさないようにしなければならない。どうしても燃やすなら、褐炭より石炭、石炭より天然ガスが好ましい。しかし天然ガスは高いので、皆が使えるわけではない。

また再エネは、CO2は少ないが、供給の安定性や採算の面でまだ問題が多い。蓄電技術が確立しないまま、産業国が再エネ電気一本に絞ることは、よほどの好条件が揃わない限りできない。

一番良いのはCO2を全く出さない原子力だが、原子力を動かすには高度な技術や国民の容認が必要なので、これも誰もができるというわけではない。つまりCOPでは、参加国はCO2を減らしたいと思ってはいても、様々な利害や国益が絡んで、拘束力のある合意が形成されにくいという難しさがある。

産業革命以来ずっと、大量のCO2を出し続けていたのは先進国だ。だから発展途上国は、今の状況に対して、とりあえず自分たちに責任はないと思っている。確かに、海面の上昇で致命的な被害を受けている弱小の小島や、干ばつで苦しんでいるアフリカの途上国には何の罪もない。

また最近では、中国やインドといった新興産業国が深刻なCO2汚染源となっているのだが、彼らでさえ、先進国がこれまで155年以上犯し続けた罪に比べたら、自分たちは無実同然というスタンスだ。

だから、無実の自分たちが、いくら地球のためとはいえ、自らの経済成長の足を引っ張るわけにはいかない。どうしても火力発電を止めろというなら、先進国が経済的、技術的にそれなりの援助をしろ、ということになる。当然の主張ではある。

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