田崎史郎「ニュースの深層」
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【慰安婦合意から半月】安倍政権はこうして「強硬保守」の怒りを抑えこんだ

2016年01月11日(月) 田崎 史郎
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【PHOTO】gettyimages

安倍は反応を読み切っていた

慰安婦をめぐる昨年末の日韓合意後、強硬保守の人たちが合意に反発するかと思いきや、案外、その怒りが高まっていない。首相官邸前で集会が開かれたり、ネットで書き込んだりという動きは続いてはいる。しかし、「うねり」と言えるほどではない。

韓国に対して厳しい態度を取る産経新聞は、首相・安倍晋三が決断した理由の説明に重点を置く。強硬保守の人たちは合意を批判するよりも安倍政権の存続を重視したようだ。彼らがこうせざるを得ないことを、安倍は読み切っていたのではないか。

日韓関係の難しさは、相手国の動きに対して両国の国民感情が高ぶりやすいことにある。とくに強硬保守の人たちには韓国に対して厳しい見方をする人が多い。強硬保守をあえて「右」と表現しないのは、左右を分ける分水嶺がはっきりしないからだ。

安倍は強硬保守を「母体」と呼ぶ。安倍が1回目の首相を辞めた後、再登板を求める声を上げ、安倍を励まし続けたのは彼らだった。日韓関係の打開に当たり、安倍がもっとも気がかりだったのは彼らであり、それに共鳴する人たちの「嫌韓感情」の高まりだった。

昨年11月2日午前に行われた日韓首脳会談は約1時間45分間に及んだ。このうち、冒頭の約1時間は双方4人ずつの少人数で行われ、かつほとんどが慰安婦問題についてだった。日本側から安倍、外相・岸田文雄、官房副長官・萩生田光一、国家安全保障局長・谷内正太郎、韓国側から大統領・朴槿恵、外相・尹炳世(ユンビョンセ)、大統領府秘書室長・李丙琪(イビョンギ)らが出席した。

この席で、安倍は率直に日本の国民感情の変化を説明した。

「一般国民が韓国を嫌いになっている。かつては、日本も(日韓併合を)やったんだから、という人たちがいたが、『ここまで来ると…』ということになっている。日本の世論も大きく変わったんです。(嫌韓は)保守派だけではなくなりました」

しかし、朴は慰安婦問題を最優先で解決するよう求め、会談は平行線に終わった。このため、安倍は帰国後、「焦らずにやっていく」と語り、年内妥結を目指すという合意とは裏腹に、実際には難しいと読んでいた。

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