現代ノンフィクション
2016年01月17日(日)

五郎丸歩「僕が兄を超えることは、これからもない」
〜ライバルがいたから強くなれた

ラグビー男の友情物語

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〔PHOTO〕gettyimages

人間はひとりでは成長できない。特にラグビーは、命を落とす危険もあるがゆえに、ライバルは時として、尊敬すべき対象になる。W杯に出た日本代表戦士が、ともに成長してきた「同志」を語る。

「世界一の男」に挑んだ

歴史を塗り替えた男たちは、常にライバルの壁を乗り越えてきた。

昨年9月、ラグビーのイングランドW杯で南アフリカから大金星を奪い、史上初の3勝をあげる快進撃を見せた日本代表のSH田中史朗(31歳、パナソニック)には、同W杯で世界一に輝いたニュージーランド(NZ)代表のアーロン・スミス(27歳)がいた。スミスは、スーパーラグビー、ハイランダーズ(NZ)で田中と同じポジションを争うチームメートである。

「僕が加入した2013年当時、僕以上に、アーロンのほうが僕を意識していたかもしれません。練習を離れたところでしゃべることは、あまりなかったですから」

スーパーラグビーは、現在のラグビーをリードするNZ、豪州、南アフリカなどのクラブが南半球を舞台に競う世界屈指のリーグ戦。田中は166cmの小兵ながら、攻撃をより優位に導く判断力や闘争心あふれるタックルが評価され、世界最高峰リーグの厚い扉を開いた、最初の日本人だった。

1年目、田中は16試合中3試合に先発。それ以外はスミスが先発した。

スミスは田中より5cm高い身長171cm。正確なロングパスで好機を広げ、瞬発力にも長ける。この頃、NZ代表デビューも果たして「世界屈指のSH」として評価を得ていた。

しかし田中の加入当初、スミスは個人プレーに走り、チームの一員として機能する意識が欠けていた。「ラグビー弱小国」と見られた日本から来た男にたとえ3試合とはいえ、先発を奪われたことにより、ラグビー王国のNZで、スミスは批判に晒された。

「オールブラックスなのに日本代表に負けて……何しているんだ」

翌'14年、田中はスミスのプレースタイルが変わったことに気づく。チームの勝利を最優先し、周囲を生かすパスプレーを身につけたスミスはレギュラーに定着。田中は先発を奪われた。その間、田中は練習休日も、厳しいサーキットトレーニングを継続したが、スミスの背中は遠ざかった。結局'14年は、17試合で1試合も先発できなかった。

同年7月、南アフリカで最終戦を終えた数日後、田中は2年目の試練に打ちひしがれながら、チームメートと杯を交わした。1次会を終えると、スミスから声をかけられた。

「バーで、1杯どうだ?」

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