現代新書カフェ
2015年12月31日(木) 西田宗千佳

ネットフリックスが起こす現在進行形の革命〜「見放題」時代のテレビ、覇権を握るのは誰か?

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テレビメーカーはリモコンに「ネットフリックス」ボタンをつけはじめた

 

「つながっていないテレビ」などありえない!

2015年1月。アメリカ・ラスベガスでは、世界最大の家電展示会「インターナショナルCES」が開かれていた。

CESの開催前日には、大手家電メーカーがプレスカンファレンスを開催していた。家電の王様としての地位をスマートフォンに奪われたものの、家電メーカーにとって「テレビ」はいまだ大きな存在だ。特にCESのような場では、自社の技術力と先進性をアピールするものとして、テレビはきわめて重要な意味を持つ。

現在なら、より高い解像度を持つ「4Kテレビ」がいかに素晴らしく、そこでの体験がいままでのものといかに異なるかを知らしめることが、テレビメーカーにとって最大の問題となっている。

そんな場に、大手メーカーがこぞってゲストに呼んだ企業がある。世界的テレビ大手のなかで、日本のソニー、パナソニックはもちろん、韓国のサムスン電子、LGエレクトロニクスも、テレビの説明で彼らを壇上に招いた。しかも、最上位のパートナーとしてだ。

その企業の名は「ネットフリックス」。いまやアメリカ市場において、ネットフリックスを無視したテレビ作りはありえない。パナソニックでテレビ開発を担当するテレビ事業部事業開発部の池田浩幸部長は、アメリカのテレビの状況をつぎのように説明する。

放送によるテレビ視聴は1日に4〜5時間。それに対して、『ビデオ・オン・デマンド(VOD)』の利用時間も、1日1時間くらいにまで育ってきている。ネットフリックスのようなサービスが普及した国では、放送局の1チャンネルかそれ以上の重みを持っている

ネットフリックスは、インターネットを介して映像配信をおこなう会社である。自分で見たい番組を選んで見るタイプの映像配信をVODと呼ぶが、ネットフリックスは世界最大のVOD事業者だ。

VODは日本にもあるが、日常的に使っている人はまだ少ないだろう。ホテルのテレビにあるもの、というイメージの人も多いかもしれない。

アメリカでは、有料の衛星放送・ケーブルテレビの普及にともない、1980年代から、家庭でもポピュラーな存在である。特に、注目されるスポーツイベントでは利用が多い。2015年5月におこなわれた、プロボクシングのフロイド・メイウェザー対マニー・パッキャオ戦は、VODだけで3億ドルの収入があったと言われている。

だが、ネットフリックスが手がけているVODはもう少し日常的なものだ。対象は、映画とドラマ、そしてドキュメンタリー。これまでならレンタルビデオ店に並んでいたような作品が、ほぼすべて網羅されている。

アメリカで販売されるテレビ、ゲーム機のほとんどにネットフリックスの視聴機能が内蔵されていて、機器をネットに接続するだけで簡単に使える。リモコンの十字ボタンで見たい映像を選び、「決定」で再生するだけのシンプルさである。

アメリカで販売されるテレビの多くには、「ネットフリックス」ボタンがある。衛星放送を見るときのように「ネットフリックス」ボタンを押せば、視聴がはじまる。

その流れは日本にも波及し、2015年に入ってから、ネットフリックスがサービスをはじめる前にもかかわらず、テレビメーカーはリモコンに「ネットフリックス」ボタンをつけはじめた。背景には、ネットフリックスがテレビメーカーにしかけた共同キャンペーンの存在があるのだが、それでも、メーカーとして普及に期待していなければ、リモコンの一等地を分け与える必要はない。

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