現代新書カフェ
2016年01月02日(土) 中谷内 一也

「信頼される人」になるために、知っておきたいこと〜なぜ人は人を信頼するのか?

得るのは難しく、失うのは簡単

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〔photo〕iStock

信頼ってなに?

シンジ君はあるメーカーの若手社員で、最近、広報・顧客関係管理の部門に異動しました。部門の目標の一つに社会からの信頼向上が掲げられていて、シンジ君はそのための戦略を立てなければならないのですが、順調に進んでいません。

うまくいかない原因は自分の経験不足、力不足に加えて、チーム内の人間関係がうまくいっていないことも大きな問題です。社会からの信頼を高めるだけでなく、自分たちの信頼関係を改善することも重要な課題だと感じるようになりました。

そこで、学生時代から親しくしている心理学教員であるナカヤチに連絡をとり、仕事帰りに相談に乗ってもらうことになりました。

ナカヤチは信頼の話をするにあたって、童話『ないたあかおに』を事前に読んでくるよう、シンジ君に伝えてあります。

ナカヤチの説明のベースにあるのは心理学の記述的な信頼研究です。記述的研究というのは、実際に人がどう判断するのか、実際にどういう行動をとるのか、をデータと理論によって明らかにしようというスタイルの研究です。

本書(『信頼学の教室』)では「私たちはこういう条件を備えた人を信じやすい」とか、「相手への信頼に応じて判断の仕方がこんなふうに変化する」という研究成果について、できるだけわかりやすく解説しようと思います。

『ないたあかおに』のあらすじ

ある山奥に若い赤鬼が住んでいた。優しい気持ちの持ち主で、ふもとの村人たちとも仲良くしたいと思っている。けれども、残念ながら交流がない。そこで、「おいしいお茶とお菓子を用意しているのでおいで下さい」と家の前に立て札を立てた。

通りかかった木こりたちは、立て札の丁寧な書きようを見て、「本気で仲良くしたいんだな」と思い、赤鬼の家に入ろうとした。けれども、家の中がやけに静かなことをいぶかしく思い、「真面目に見せかけて実は騙して食うつもりに違いない」と、逃げ出してしまう。落胆した赤鬼はやけになって立て札を破壊する。

赤鬼の友人の青鬼はコトの成り行きを聞いて一計を案じる。それは青鬼が村でわざと暴れ、それを赤鬼が退治して、村人からの信頼を得るという作戦だった。

作戦はみごとに成功した。赤鬼が青鬼を撃退した後、村人たちは毎日のように赤鬼の家にやってきてお茶を飲み、楽しく過ごすようになった。赤鬼も嬉しくてたまらない。

ところが、ある日、赤鬼はふと青鬼のことを思い出した。村での一件以来、青鬼は赤鬼の家を訪れなくなっていた。

翌日、赤鬼が雲に乗って青鬼の家を訪ねると、戸口に貼り紙があり「ぼく(青鬼)と君とが行き来していると知ったら、村人たちは落ち着かないでしょう。だから、ぼくはここを去ります。君の幸せをいつも祈っているよ」と書いてあります。赤鬼は何度もそれを読んで、涙を流して泣きました。(浜田廣介『ないたあかおに』を筆者要約)

赤鬼が信頼できるわけは?

ナカヤチ やあシンジ君、いらっしゃい。『ないたあかおに』の話は読んできましたか。

シンジ君 はい。幼稚園で読んでもらって以来で、久しぶりでした。あのときは一緒に泣いてる子もいたなぁ。

ナカヤチ 村人たちは、はじめは信頼していなかった赤鬼を、青鬼の立てた作戦によって「この赤鬼は自分たちに危害は加えない」と信頼するようになった。そういうお話だよね。

さて、ここで問題です。なぜ、村人は赤鬼を信頼するようになったのでしょうか?

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