北京のランダム・ウォーカー

中国「大気汚染」の本当の話
〜募る苛立ち、肺がん死亡率も急上昇

PM2.5、初の「レッド警報」発令!

2015年12月14日(月) 近藤 大介
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〔PHOTO〕gettyimages

マスクをしても意味はない

PM2.5の恐怖が、再び首都北京を覆っている。12月8日から10日まで、初めて「レッド警報」が出されたのだ。よほどの急用がない限り外出を自粛しろ、という最高レベルの警報である。

PM2.5が深刻になるのは、毎年冬である。北京市では、11月15日から翌年の3月15日まで、集団暖房が入るからだ。ただし暖房が入るのは、ひと冬分の暖房費、約3,000元(約6万円)を前納した家屋に対してのみだが。

ともあれ、あのPM2.5の恐ろしさは、経験した人でないと分からないだろう。まず眼球の奥がズキズキして、涙目になってくる。続いて鼻と喉元がヒリヒリして、言葉を発するのが辛くなってくる。マスクなんかしても意味はない。 

次に来るのが頭で、ペンチか何かで締め付けられるようなグリグリした痛みに襲われる。これで思考能力が低下する。最後に背骨がズキンズキンと来る。こうして、立っていることすら辛くなってくるのだ。

そのように身体中から「泣き」が入るので、人体には相当、悪影響を及ぼすはずだ。実際、12月9日に復旦大学公共衛生学院の研究とされるレポートが、中国のインターネット上にアップされた。そこには、真っ白な「健康な肺」と、真っ黒な「PM2.5に汚染された肺」の写真が掲げられていて、次のように記されていた。

〈 144時間、PM2.5に汚染された肺は、肺胞が黒く犯されるだけでなく、肺の上皮の細胞膜の通気性と流動性に影響が出る。細胞内部の物質が漏出し、死に至る。その際、肺がんに罹患するリスクは非常に高い。

中国では毎年、312万人もがんで死亡しており、第一位が肺がんだ。過去30年で肺がんの死亡率は465%も上昇していて、肝臓がんに代わって、中国人の国民病となっている 〉

だがこの警告情報は、アップされて瞬く間に、ネット警察によって削除されてしまった。以後は開いても、「この内容は規則違反により閲覧できない」という注意書きしか出てこない。

もう一つ、こんな記事も、ネット上に流れた。

〈 本日(12月9日)から、中国では公的な気象台以外に、いかなる組織もしくは個人が、いかなる形式にせよ、社会に向けて気象に関する情報を発布することが禁止された。違反者には、5万元(約100万円)の罰金が科される。これは、「気象予報発布と伝播の管理弁法」に基づく措置だ。これによって、これまで民間がインターネット上に出しているPM2.5の情報などは、すべて取り締まられることになる。

本日の『新京報』(北京で一番人気の新聞)は、「これは『州官だけが放火できる』規定だ」と反発している。実際、この規定によって、今後は当局が発表する気象情報は「鹿」が「馬」になり(馬鹿)、深刻な大気汚染の日が、青天白日の日と発表されるかもしれない。つまり気象も、政権のサービスの道具と化すのだ。不確定極まりない恐怖が、全市民に植え付けられようとしている 〉

この文章も、送られてきて、わずか15分後に再読しようと思ったら、すでに削除されていた。以後は開いても、「この内容は規則違反により閲覧できない」という注意書きしか出てこない。

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