川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

ドイツはなぜシリア参戦を決めたのか? テロリストに狙われる危険は急上昇。それでも軍事行動に出る本当の理由

2015年12月04日(金) 川口マーン惠美
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ドイツ空軍のトーネード戦闘機 〔PHOTO〕gettyimages

参戦を決めた本当の理由

ドイツ政府は12月1日、シリア参戦を閣議決定した。議会の承認も確実の見込みで、12月上旬中には出動できるという。

まずは、トーネードという戦闘機6機と、空中給油機1機を展開。そして、地中海にいるフランスの原子力空母シャルル・ドゴールを守るため、護衛艦も出すらしい。フォン・デア・ライエン国防大臣(女性)は、やけに軍事行動に熱心だ。

フォン・デア・ライエン国防大臣

政府は、トーネードは偵察機で、戦況を上空から把握するのだと言っているが、同機は多用途攻撃機なので、もちろんその気になれば爆撃もできる。この作戦に900人から1200人が投入されるとか。アフガニスタンから帰ってきたばかりなのに。

もっとも、ドイツ国内ではいつもどおり派兵については賛否両論。そもそも、作戦が稚拙というか、なさ過ぎるという非難の声も多い。

シリア戦線では、いったい誰が誰と戦っているのかがわからないほど戦況がこんがらがってしまっている。敵がISだということは一応わかっているが、対ISで共闘しているはずの国々が、実は必ずしも味方ではない。それどころか、敵であったりする。

すでに米国、ロシア、フランスがシリア空爆を行っている(イギリスはこれまでイラクのみだったが、おそらく来週からはシリアも)が、各国の軍を束ねる総指揮官がいない。もちろん共同作戦もない。とくに、ロシアが蚊帳の外に置かれている。だから、ロシアの戦闘機が味方であるはずのトルコ軍に撃墜されるという事件も起こる。

ISを倒したあと、シリアをどうしたいかについても意見はバラバラだ。ロシアやイランは、アサド政権を立て直したいと思っているが、フランスや米国は、ISをやっつけたあとはアサド政権を潰すつもりだ。

しかし、そんなに容易くISが駆逐されるだろうか。アフガニスタンのように、泥沼になってしまう可能性は限りなく大きいのではないか。しようがないので、ドイツはとりあえず上空から偵察。

ただ、ドイツの参戦には、テロ撲滅やフランスとの連帯などという表向きの理由の他に、実は大きな目的がある。シリアからとめどなく流れてくる難民の波を止めるために、ぜひともシリア情勢の沈静化が必要なのだ。それを知ると、ドイツの昨今の他の動きも、結構わかりやすい。

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