北京のランダム・ウォーカー

日本のメディアが報じない中国外交の「完全勝利」~アメリカも日本も抑え込まれたAPEC会議の舞台裏

2015年11月30日(月) 近藤 大介
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ニノイ・アキノ国際空港に降り立った習近平主席 〔PHOTO〕gettyimages

中国側からみた「APEC」と「東アジアサミット」

今週は、日本でほとんど報じられなかった中国側から見たAPECと東アジアサミットについてお伝えしたい。

習近平主席は、トルコでのG20を終えると、11月16日夕刻、「主席専用機」に乗って東へ向かった。そして現地時間の11月17日正午近くに、マニラのニノイ・アキノ国際空港に降り立った。地中海から西太平洋へ、約11時間半の旅である。

マニラには54時間の滞在で、2つの講演、4つの首脳会談、10のイベントをこなした。後半はさすがに少しバテ気味だったが、焦点の南シナ海問題を抱えていたため、肉体的にも、精神的にも疲労困憊のAPECだったと思える。

習近平主席にとっては、今回が3度目のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)出席だったが、これまでAPECとの相性は頗るよかった。2年前のインドネシアAPECでは、その時期にAIIB(アジアインフラ投資銀行)と「一帯一路」(「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」)をブチ上げ、アジア周辺諸国に対する「習近平外交」の形を、明確に示した。

昨年11月は、自分の故郷である北京開催で、20ヵ国・地域の首脳を前に、"APEC BLUE"を演出した。北京APECはまさに、「習近平の習近平による習近平のための」国際イベントだった。この時、習近平主席は、「雁陣精神」をアピールした。

それはすなわち、21世紀のアジアは中国が牽引していくという宣言に他ならなかった。加えて、故・毛沢東主席の旧居・瀛台にオバマ大統領を案内し、「新たな大国関係」というG2時代を演出しようとした。

こうして華々しく「攻勢」を仕掛けた過去2回のAPECと較べて、今回は「守勢」に回る「じっと我慢のAPEC」となった。日米+ASEAN(東南アジア諸国連合)が、南シナ海の埋め立て問題で集中砲火を浴びせてくることが予想されたからだ。

そのため習近平主席は、「APECはあくまでもアジア太平洋地域の経済貿易を議論する場だ」として、南シナ海の埋め立て問題に議題が及ぶのを回避しようとしたのだった。

習近平主席は一連のAPECの日程を、11月17日午後に、マレーシアのナジブ首相と首脳会談を行うことから開始した。マレーシアは、22日に開かれる東アジアサミットの議長国であり、ナジブ首相が議長を務める。

詳しくは後述するが、中国は東アジアサミットには、20日から23日まで、李克強首相を派遣した。李克強首相が「両手にプレゼントを抱えて」マレーシアを公式訪問することで、ASEANにはプレッシャーをかける。加えて習近平主席としても、フィリピンでしっかりと、ナジブ首相を懐柔しておく必要があったのだ。

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