読書人の雑誌『本』より
2015年12月05日(土) 小川糸

40をすぎたら人生は「引き算」
〜モノは少なく、でも「贅沢に」暮らす

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「少なく贅沢に」をモットーに、心地よく暮らすためのアイテムを初公開!

人生は引き算

40歳までは、足し算の人生だった。あれもほしい。これもほしい。それらをすべて手に入れることが、幸せだった。けれど40歳を過ぎた今、人生は引き算だと考えるようになった。

引き算というのは、肩にかついだり、両手いっぱいに抱えたりしていた荷物を、本当に必要か吟味し、余計なものは手放すこと。生きていくのに本当に必要な荷物だけを持って、身軽でいたいと思うようになったのだ。

そうやって引き算してみると、人は意外と少ないものでも生きていける。以前、「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんにお会いした時、今の人は工夫が足りない、とおっしゃっていた。その時はどういう意味かよくわからなかったが、最近になってようやく理解できるようになった。もっともっと工夫すれば、同じモノを幾通りにも使うことができる。工夫とは、知恵を働かせることだった。

与えられた情報を鵜吞みにしないこと、もっと他にも使い道があるのではないかと考えること。そうすると、自分だけの自分らしい暮らしが生まれ、より自分の環境に合った快適な暮らし方ができるようになる。用途というのは、自分にとって使いやすければそれでいいのであって、その使い方に正しいも間違いもないと知る。

布団を壁にかけるのは、最近思いついたアイディアだ。わが家では、すのこ状の低いベッドに、布団を敷いて眠っている。押し入れがあれば毎回きちんと畳んで収納することが可能だが、いかんせん、狭い家なのでそこまでスペースを確保できない。けれど、毎日使う布団は清潔に保ちたい。そこで、昼間は掛布団を壁にかけておくという方法を思いついたのだ。

もともと、フックは絵をかけるために取り付けたものだった。けれど、絵をかけるにはどうもフックが大きすぎ、うまく収まらなかった。その状態でしばらく過ごしたのだが、ある時、ふと麻の肌かけをそのフックにかけてみたのである。

私はいつも、布団をミルフィーユ状に重ねて使っている。つまり、一枚のぶあつい羽毛布団をかけるのではなく、カシミアの毛布と薄い夏がけを組み合わせ、季節ごとの暑さ、寒さに応じて、その枚数を調節しているのだ。冬の一番寒い時は、夏がけ二枚とカシミアの毛布二枚、合計四枚をミルフィーユ仕立てにする。そうすることで、かさばる羽毛布団の置き場所に頭を悩ませずに済むようになった。

フックに布団をかけるというやり方があまりにうまくいったので、その後、フックの数を増やした。今は、最大で六枚まで壁にかけられる。そうすると、昼の間に風を通し、日光も当てることができるのだ。一石二鳥というわけである。

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