川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

EUを覆う「恐怖」と「不安」
〜テロリストの目的は達成された

【現地レポート】もうどこにも逃げ場がない……

2015年11月20日(金) 川口 マーン 惠美
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シュトゥットガルトの街角で(筆者撮影)

心に残るザラザラとした小さな破片

2ヵ月半ぶりにドイツへ戻ったら、そこは春のようだった。

11月は普通なら暗くて寒い。霧も多い。一年で一番嫌いな月が11月だというドイツ人は少なくない。

ところがその11月のシュトゥットガルトが、私が戻ってきて以来10日間、ほぼ毎日快晴なのだ。しかも信じられないほど暖かく、木にはまだ色づいた葉っぱがくっついている。春だと勘違いして土から何やら芽が吹き出し、蜂も飛ぶ。

買い物がてらに街を巡回してみたら、なんと、屋外のカフェが繁盛していた。皆が、これが最後のチャンスとばかりに、陽の光に顔を向けて座っている。

広場には大道芸人はいる、ストリート・ミュージシャンはいる、その横を、アイスクリームを舐めながらブラブラと歩いて行く人がいる。

当然、道行く人々の服装もめちゃくちゃで、ダウンのコートを着ている人がいるかと思うと、Tシャツ1枚だったり……。

まさに異常気象による倒錯的光景だ。薄手のセーターの上にウールのコートを羽織って出かけた私は、すっかり汗だくになってしまった。

しかし、この平和な光景は、100パーセント真実ではない。

あの夜以来、あの、パリでテロがあった夜以来、誰の心の中にも、何とも説明できない不快なものが、ザラザラとした小さな破片のような感じで残っている。

どこへいっても、それは大気の中にどんよりと漂っており、消えることがない。

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