川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

グローバリズムとは現代の「奴隷制度」である! ~反資本主義の哲学者、スラヴォイ・ジジェクがえぐる先進諸国の欺瞞

2015年11月13日(金) 川口マーン惠美
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スラヴォイ・ジジェク氏 〔PHOTO〕gettyimages

世界中で奴隷を増やすばかりのグローバル経済

グローバリズムについての懐疑論が盛んだ。

ドイツの大手のウィークリー新聞である『ディ・ツァイト』紙に9月10日付けで、スラヴォイ・ジジェク(Slavoj Žižek)という哲学者の論文が掲載された。ジジェク氏はスロベニア出身で、現在、欧米ではとても力のある哲学者の一人だ。和訳されている著作もたくさんある。

『ディ・ツァイト』紙に寄稿された論文は、「ユートピアが爆発するとき」というタイトルで、氏はこの中で、現在、EUを危機に陥れている難民問題はグローバリズムが原因であると結論づけている。

リードにはこう書かれている。

「ヨーロッパで自由な生活を営むという移民たちの夢が叶うことはほとんどないだろう。だからこそ我々は、世界中で奴隷を増やすばかりのグローバル経済の条件を、根本的に改めなければならない」

ジジェク氏はもともと思想的にはかなり左寄りの人で、反資本主義の傾向が多分にある。その彼、曰く、

「実は左派リベラルは、心の中ではすでに、国境をなくすことなどできないと感じている。そもそも、そんな動きが強まれば、極右が大衆を巻き込んで力を蓄え、大変なことになるはずだ。ところが、それにもかかわらず心清き人々を装い続けている。そして、"可哀想な難民を見殺しにしてはいけない"、"EUの門戸を開こう"と唱えて、自分たちを倫理の高みに置いている」

「一方、右派は、難民が自分たちの力で母国の状況など変えられないことなど百も承知で、すべての国民は自らの生活は自分たちで守るべきだという正論を主張する。どちらも悪い。両方とも偽善にすぎない」

しかし、ここで興味深いのは、左派である彼が、左派リベラルの偽善のほうが、難民排斥を訴える右派ポピュリストたちのそれよりも、より悪質だと結論付けている点である。「難民問題における最大の偽善者は、国境をなくそうというプロパガンダに励む左派リベラルである」というのが彼の主張だ。

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