川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

ヨーロッパの「静かな崩壊」が始まった!~難民問題でドイツはギブアップ寸前。じわじわと広がる排斥運動が、EUの理念を侵食する

2015年11月06日(金) 川口マーン惠美
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オーストラリアとスロヴェニアの国境から発車する難民バス 〔PHOTO〕gettyimages

受け入れ側の疲労は限界に達している

現在、ドイツに続々と到着している難民は、オーストリアからドイツのバイエルン州に入る。オーストリアが、スロベニアから自国に到着した難民を、せっせとバスで運んでくるのだ。

国境には公式の通過地点が5ヵ所定められており、9月と10月だけで、到着した難民は31万8000人。つまり人口1260万人のバイエルン州には、2ヵ月間、毎日平均5000人がやって来た勘定になる。

受け入れ側の警察、役人、ボランティアは、文字通り休みなしだ。難民の身分証明書をスキャンし、指紋を登録し、健康チェックをし、食事を与え、仮眠所で休息させているうちに、次のバスが到着する。

ベッドが足りなくなると、数時間仮眠した人たちを起こして、チャーターしたバスに乗せ、他州に振り分ける。世話をする人たちは、難民が到着すれば、どんなにくたびれていても放っておくわけにはいかない。

オーストリアからのバスは、しばしば深夜に、それも予告なしに、何百人もの難民を国境に置いていった。そして、このやり方がドイツとオーストリアの間に緊張をもたらし、10月末、デ・メジエール内相が「了解できない」と強く非難した。

それに対してオーストリアのミクルライトナー内相は「ドイツは、難民を他のEU国に戻さないと宣言した唯一のEU国だ。それによって、難民の数が爆発的に増えた」と反論。問題がここまで混乱したのは、ドイツのせいだと言わんばかりだった。

ただ、口には出さなくても、そう感じている国は、実は他にも多い。

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