経済の死角

なぜ!? イチローがトヨタブースにサプライズ登場!仕掛けた社長のある「狙い」とは

2015年10月29日(木) 井上 久男
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サプライズで登場したイチロー

会場騒然!

28日から報道陣への公開が始まった東京モーターショー。今回の各社の目玉展示は自動運転技術などだが、それ以外にぱっとした新たな提案がないというのが実態だ。各社のプレゼンテーションもマンネリ感は否めなかった。

こうした中で、「サプライズ」を演出したのがトヨタ自動車だ。大リーグのイチロー選手をゲストに呼んで、記者発表の席で豊田章男社長とのやり取りを演じて見せた。

前日から舞台を幕で覆って他社に悟られないように、予行演習をしていたらしい。豊田社長も、いつもと違う黒縁の眼鏡をかけて、「かっこいいイチローさんに合わせました。うちは社内情報がすぐに外に漏れるが、今日はみなさんびっくりしたでしょ。初めて秘密が守れました」とご機嫌だった。

イチローと言えば、1990年代半ばのオリックス時代に日産自動車のコマーシャルに出て、「変わらなきゃ」といったフレーズが一時流行語にもなった。当時の日産はカルロス・ゴーン氏が来る前の赤字続きで経営危機に瀕しており、日産の経営も「変わらなきゃ」と揶揄された。

トヨタがイチローをゲストに呼んだのは、単なる「客寄せパンダ」ではない。豊田社長自身が「トヨタも変わらなきゃ」の危機感を持っているからだ。

今のトヨタの業績は、リーマンショック後に赤字に陥り、品質問題を起こした状況から完全に立ち直り、円安の追い風もあって、過去最高益を更新している。しかし、一方で、こういう時に社内に緩みがちになることを、トヨタ自身が身をもって体験している。

リーマンショック前も過去最高益を計上していたが、規模拡大を目指すだけで品質管理が疎かになっていた。さらに、当時はフォルスクスワーゲン(VW)やGM、フォードといった海外のライバル企業もぱっとせず、「敵」はホンダくらいだった。そうした中で社内に慢心が起きた。

現在のトヨタも過去最高益を更新し、最大のライバルと見られたVWが排気ガス規制への不正対応によって未曾有のリコールを迫られたことで、一転して経営危機に直面したため、目下「敵」は見当たらない。

ローマ帝国が外敵によって滅ぼされたのではなく、内部崩壊によって衰退したように、今のトヨタの「敵」を敢えて挙げれば、社内の慢心以外にない。

そうした局面において、イチローのプロ野球選手としての姿勢に、トヨタとして学ぶべきものがあると判断したようだ。

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