日本一の書評
2015年10月31日(土) 週刊現代

作家・福井晴敏さんの「わが人生最高の10冊」

核融合のように、今の私を作った本

週刊現代
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人生の転機になった10冊は?

「人生の転機になった10冊」ということで選びましたが、甲乙つけがたく、順位にはとくに意味はありません。

僕は子供時代にそんなに本を読んだわけでもなくて、20歳前後で、初めて「小説って面白いじゃん!」と気づかせてくれたのが、宮部みゆきさんの『レベル7』でした。

本屋さんでカバーに指紋のマークがデザインされた分厚い本が、チラッと目にとまったんです。「2000円もしたのに、よく買ったな俺」と思いますよ(笑)。この出遭いがなかったら、いまの僕はないでしょう。

ふたりの男女がマンションの一室で目覚めると共に記憶がない。SF的な始まりに引き込まれ、読み終わるのが惜しいと思うくらい興奮しました。

その後、僕の勤めていた会社が潰れ、警備会社にもぐりこんだのが24歳。時間がありあまっていたので、高校時代に遊びで書いていたシナリオをまた書きだしたんです。

当時、読んだのが高村薫さんの長編小説で、最初が『マークスの山』。「すごいものを読んじゃったよ」と思いはするものの、それがどうすごいのか自分で受け止めきれていなかった。その後に『神の火』の文庫本を読んだんです。

原発テロに関わる、ハリウッド映画を思わせる話。だけども、よくあるスパイ小説とちがい文章の書き方が硬質で「IQ高いぞ。小説ってすごいな!!」と衝撃を受けた。それとともに「俺にも書けないか!?」と刺激を受けました。

それで、模写というか、自分が書いたものの中に『神の火』のワンセンテンスをコピーして挿入してみた。パソコンがあったからこそできた作業ですが、挿入した部分が周りの文章から浮いてしまうので、つなげるために前後を書き直していく。

核融合させるような作業を繰り返し、自分の文体をつかんでいきました。だから『神の火』は僕の「文章の師匠」ですね。

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