社長の風景

キノコ一筋で売上600億円超 
個人経営から全員経営の時代へ 
ホクト・水野雅義社長に聞く

2015年10月08日(木) 週刊現代
週刊現代
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キノコ業界唯一の東証一部上場企業、ホクト。エリンギやマイタケのほか、ブナシメジを品種改良したホワイトブナシメジ「ブナピー」や、新品種「霜降りひらたけ」を生産・販売する。率いるのは、'09年に急逝した父の跡を継いだ水野雅義社長(50歳)だ。

* * *

みずの・まさよし/'65年長野県生まれ。'90年に青山学院大学経営学部を卒業し、父親が社長を務めるホクト産業(現ホクト)へ入社。'95年に常務取締役、'97年に専務取締役となり、きのこ生産本部長、管理本部長、きのこ販売本部長等を歴任。'05年に取締役副社長へ就任し、'06年より現職

臥薪嘗胆

野生のエノキは日に当たると黄褐色になります。光を当てても変色しない、白い品種を開発したのは弊社です。これには裏話があります。弊社は当時、キノコ栽培はせず、菌を農家に売っていただけでした。しかし研究を重ねて白いエノキを開発し、栽培菌を販売すると、ある農家が「偶発的に白いエノキができた」と主張し、新品種として勝手に発売し始めたのです。

'90年頃だったためDNA鑑定が難しく、最高裁まで行っても証明はできませんでした。この時「こんなことで負けてたまるか!」とキノコを自社で栽培し始めたことが、その後の成長のきっかけになりました。

雑菌

キノコは菌類だから光合成できません。栽培には、トウモロコシの芯を乾燥させて砕いた「コーンコブミール」や米ぬかなどからつくった、栄養豊富な「培地」が必要です。これを瓶に詰め、殺菌し、キノコの種菌を植え、瓶の中で育てます。

すべての作業は雑菌を嫌うため、工場の当該の部署には担当者しか入室できず、私も周囲に「ボクは雑菌だから」と話して入りません(笑)。それくらい注意深くなければ安定したキノコ栽培はできないのです。担当者は納豆も食べません。納豆菌はキノコに悪影響を与えるからです。

ユルい ホクトのキャラクター「ブナシメジ」と。背後に「おいしい菌曜日」などのコピーも見え、全体的にユルい

思い出

父は'09年に急逝しました。私も彼も、キノコを食べて、弊社製かそうでないかがわかります。父は会社を挙げて宴会をした時、鍋のシメジが自社製品でないと気づき「我々が来ているのになぜだ!」と店に抗議するような熱さがありました。

彼の生活は質素そのもの。私は子どもの頃「テストで何点とればこれを買う」と約束したのに与えられず怒った覚えがあります(笑)。

入社後も「お付き合いは大事だが過度な接待は受けるな。イザという時にお願いしにくくなる」と言われました。結局、私はこの感覚を受け継ぎ、社用車を20万km乗り続けるほど質素になりました。

周囲に「他の社員が買い換えられず困っている」と言われても「私は変えなくていいよ。走ればいいから」と(笑)。でも父の死後、彼の兄から意外なことを聞きました。父は本当は外車に乗りたがっていたらしく、親戚の外車をいじり、「いいなぁ」と言っていたらしいのです。

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