デジタル・エディターズ・ノート
2015年11月09日(月) 佐藤 慶一

2025年、過去にこだわるメディアは消える――「オランダジャーナリズム基金」が描いた4つの未来予想図

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ジャーナリズム基金のオフィスは首都アムステルダムから電車で南へ1時間弱、オランダ第3の都市デン・ハーグに構える

ジャーナリズムの未来を考えたとき、ひとつの予測だけではきっと十分ではない。

紙媒体は苦境に陥り、テクノロジーは急激に発展する将来。メディア環境の変化は当然のこと、記者やジャーナリストのあり方や居場所は大きく変わるだろう。そうであれば、いくつもの未来図を描くことではじめて、その実像がつかめてくるのかもしれない。

***

「オランダ政府が出資するジャーナリズム基金がある」

今年の春くらいに知り合いからそんな情報を聞き、調べはじめた。8月にオランダ取材に行くことが決まると、「Stimuleringsfonds voor de Journalistiek(Dutch Journalism Fund=オランダジャーナリズム基金)」にメールを送った。すぐに「8月3日14時にデンハーグのオフィスに来て。ジェネラル・ディレクターの予定を押さえておいたから」と返事があり取材が決まった。

その後さらに調べてみると、今年6月に発表したあるレポートが、どうやら海外のメディアやジャーナリズム関係者のあいだで話題となっているようだった。

What's New(s): Scenarios for the Future of Journalism」と題した64ページにわたるレポート――。オランダ国内のジャーナリスト、発行人、編集長、哲学者、科学者、技術者など150名以上の10度にわたるヒアリングや議論をもとに、2025年におけるジャーナリズムの姿について4つのシナリオを描きだした。無料かつ英語版も用意されており、広く問題提起として出されたことが伺える。

レポートの詳細は追って紹介するが、この基金ではジャーナリズム研究に加えてメディアやジャーナリズム領域のイノベーション支援をおこなっている。今回、レポートの作成に運営側として携わったジェネラル・ディレクターのRené van Zanten氏に基金の活動やレポートについて聞くことができた。

基金のジェネラル・ディレクターを務めるRené van Zanten氏。ジャーナリスト、編集者、発行人、経営者などを経験し、いまはジャーナリズム業界にイノベーションを起こすべく奔走している。

「新聞を残すためではなく、ジャーナリズムを残すためにある」

1955年生まれのRene van Zanten氏は80年代にジャーナリストとしてキャリアを歩み始めた。地方紙「Haagsche Courant」の遊軍記者、地方紙「Utrechts Nieuwsblad」の編集長、地方紙「De Gelderlander」の発行人とディレクター、その後企業経営もおこなった。2011年からはジャーナリズム基金のジェネラル・ディレクターに就任した。

基金はいまから約40年前、1974年に設立された。教育文化科学省(Minis-terie van Onderwijs, Cultuur en Wetenschap:OCW)が毎年予算を出す(今回のレポートはオランダ議会にも提出されるのだという)。

「この基金は新聞を残すためではなく、ジャーナリズムを残すためにある。だから、ジャーナリズム領域で優れたアイデアを持っている人をサポートするために、支援プログラムを用意している」

レガシーをどう引き継ぐかではなく、未来のあるべき姿を探る。それがオランダジャーナリズム基金の使命なのだ。

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