磯山友幸「経済ニュースの裏側」

東芝問題を「不適切会計」で片づけていいのか? 「粉飾決算」とは言えない大新聞の呆れた事情

2015年09月23日(水) 磯山 友幸
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【PHOTO】gettyimages

少なくとも「不正会計」ではないか

東芝が引き起こした問題は「粉飾決算」だったのか、「不正会計」なのか、それとも「不適切会計」と言うのが正しいのかーー。大手メディアが東芝問題に対して用いる「言葉」は今も割れたままだ。

メディアは、言葉を使うことで人々に正しい情報を伝え、それをもって業としている。新聞やテレビにとって、言葉を無造作に使ったり、考えもなく選ぶということは許されない。1回きりの記事ならばそんな無意識の使い方もあるだろう。

だが、今回のように繰り返し記事が書かれ、放送されている場合、「不正」とするか「不適切」と言うか、言葉の選び方には明確な意図があると考えるのが自然だ。

今回の問題が発覚した4月以降、メディアは「不適切会計」という言葉を一斉に使った。これは、東芝が記者の問い合わせに対して「不適切」という言葉を用いて説明したことがきっかけだったとみられる。

それがだんだん、「不適切」の中味が明らかになり、その影響も総額も大きくなってきた過程で、「不適切会計」という表現はおかしいのではないか、という声が上がり始めた。

読者や視聴者だけでなく、専門家なども疑問を呈し始めたのである。どうみてもこれは「粉飾」、あるいは「不正会計」だろう、というわけだ。経済雑誌や週刊誌はこの段階から「不正」や「粉飾」といった言葉を使うようになった。

新聞メディアの間でも議論が起きた。東京新聞が7月14日に「ニュースの追跡」というコーナーで「東芝『粉飾決算疑惑』でしょ?」という記事を掲載し、疑問を呈したのも、そうした動きのひとつだった。

記事の中では、「東芝の場合、だます意図があったかはっきりしない。会計は不適切ではあっても、不正だと断定できない」として「不適切」で構わないとする専門家のコメントが引用されていた。

一方で、「なぜ『粉飾決算疑惑』『不正会計疑惑』くらいの言い方ができないのか」という筆者のコメントも紹介された。だが、この段階では、当の東京新聞も同日付の社説で「東芝不適切会計」と書いていた。「不適切」と書いてきたことを「不正」と言い直すことをためらっていたのだろう。

最初に明確に方針転換した大手紙は毎日新聞だったと思われる。7月17日ごろから「不適切会計」を「不正会計」に改めたようだ。その後のすべての記事が変わったわけではなかったが、主として「不正会計」という言葉を使うようになった。朝日新聞も7月以降、「不正会計」を主として使うようになった。

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