デジタル・エディターズ・ノート
2015年10月01日(木) 佐藤 慶一

最大手メディアから独立、第一人者が目指す新しい報道 「人材・お金・時間ない地方でもデータジャーナリズムはできる」

「LocalFocus」共同創業者に聞く

upperline
LocalFocusトップページ

最大手ニュースメディアで最初のデータジャーナリストを経て独立・起業。政府が出資するジャーナリズム財団の支援プログラムで最優秀賞。地方のジャーナリストがデータジャーナリズムを実践できる未来をつくる――。わずか5名で開発・運営されるオランダのベンチャー企業「LocalFocus(ローカルフォーカス)」が、データジャーナリズムの普及に向けて新たな風を吹かせている。

地方メディアでは人材もお金も時間もない。そんな状況でもデータジャーナリズムは可能なのか。ローカルフォーカスの共同創業者でデータジャーナリストのJelle Kamsma氏に話を聞くため、アムステルダム市内のオーフェルトーム通り沿いにある複合スペース「Bounce Space」を訪ねた。 

共同創業者兼データジャーナリストのJelle Kamsma氏

データやテクノロジーはメディアをどう変えるのか

Kamsma氏はアムステルダム大学のニューメディアコースを修了し、卒業後はオランダ最大のニュースサイト「NU.nl」にデータジャーナリストとして就職(オランダの人口は1700万人弱だが、SimilarWebによればNU.nlの月間訪問数は1900万を超える)。オランダにおいて、全国紙「NRC」ではデータジャーナリズムが見られたが、ネット専業メディアのデータジャーナリストは同氏がはじめてだったそうだ。

大学時代は「テクノロジーがいかにメディアや報道を変えていくのか」について研究。卒論のタイトルは「Digital Digging」、ネット時代の調査報道について考えた。

「特に紙媒体におけるジャーナリズムが苦戦しているなかで突破口はあるのか。それが主関心でした。在学中はちょうどウィキリークスの騒動があったころですが、ウィキリークスはテクノロジーやデータを活用して新しいジャーナリズムを提示した存在でもあったと思います」

「ジャーナリストは新しいテクノロジーやツールを使うことで、それまでに得られなかった新しいストーリーに出会うことができる」――。ある教授の言葉がいまでも頭に残っているという。オンライン時代の調査報道のあり方を研究した結果、大量のデータから浮かび上がった新しい事実やインサイトを報道するデータジャーナリズムに関心を持つようになっていた。

LocalFocusチームが入居するこのスペースは、1階がコーヒースタンドと自転車修理屋があり、2階がシェアオフィスとなっていた(「Bounce Space」ウェブサイトより)

NU.nlには9ヵ月の在籍だったが、その後も「RTL Nederland」や「VPRO」といったメディアでデータジャーナリストとして活動し、データポータルを立ち上げ、データを活用したドキュメンタリーにかかわった。これらの経験でAPI活用による自動的なデータ収集と足でデータを集めることのどちらも経験した。

主要なメディアでデータジャーナリズムをおこなってきた一方、ローカルに目を向けたときに同じようにはできないと感じたという。「ローカルメディアは人材もお金も時間もありません。データジャーナリストを雇えず、データジャーナリズムもできていなかったのです」。

そこで地方のジャーナリストでも利用できるデータジャーナリズムサービスを立ち上げようと思い立つ。2013年、オランダ政府が出資するジャーナリズム財団のコンペティション&起業プログラム「The Challenge: Reinventing Journalism(ザ・チャレンジ:ジャーナリズムを再発明せよ)」に応募することにした。

1
nextpage



underline
アクセスランキング
1時間
24時間
編集部お薦め記事
最新記事