デジタル・エディターズ・ノート
2015年08月28日(金) 佐藤 慶一

無料情報があふれても、若者は記事を買う! 
ジャーナリズムに足りない「ユーザー体験」の考慮

「Blendle」国際担当に聞く

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Blendleのトップページ。新聞や雑誌の記事が1本1本並ぶ

米国のメディア激変と同じくらい、オランダのメディア環境がおもしろくなっている。この数年、若手の記者やジャーナリストが次々と独立し、メディアやプラットフォームを立ち上げているからだ。このコラムでも紹介したことがある「De Correspondent(コレスポンデント)」は1982年生まれと1986年生まれが創業者であり、今回取り上げる「Blendle(ブレンドル)」は1987年生まれのジャーナリスト2人が立ち上げたプラットフォームだ。

ブレンドルは2014年4月にローンチ。わずか1年で登録ユーザー数は40万人を超え(オランダの人口は約1700万人)、国内の主要媒体すべて(80媒体)が参加している。将来的には国内のすべての媒体をこのプラットフォームに乗せる構想を持つ。そうなれば、読者はわざわざ各媒体にメールアドレスを登録したり、異なる決済方法に苦しむことはなくなるし、好きな記事の買い方ができる。

ブレンドルの特徴は、利用者が記事を1本ずつ買うことができることだ。1本あたりの平均価格は20~30セント(日本円で30~40円程度)。この価格や記事を出すタイミングは入稿する媒体社が決めることができる。ビジネスモデルはレベニューシェア型で、媒体社7割、ブレンドル3割という比率で分け合う。

ブレンドルはピッチやプレゼンで話す際やインタビューを受ける際に「iTunes for Journalism(iTunes of journalism)」というコンセプトを繰り返し強調し、注目と共感を得てきた。iTunesでは楽曲単位でもアルバム単位でも買うことができるが、ブレンドルも同様に記事を1本ずつ買うことができるし、1冊(パッケージ)単位でも買うことができる。

立ち上げ半年となる2014年10月には、ニューヨーク・タイムズ社とドイツ新聞・出版王手のアクセル・シュプリンガー社が380万ドルを出資。2015年6月にはドイツにおけるすべての主要な新聞・雑誌との契約を発表。いくつかアメリカのメディアも参加している。

このプラットフォームの裏にはどんな考えがあり、なにを目指しているのか。ブレンドルの国際展開を率いるMichael Binning氏に話を聞いた。

インタビューに協力してくれたMichael Binning氏。国際担当のトップとして欧州を中心に世界進出を進める

ブレンドルの背景にある「3つの問題意識」

イギリス出身のBinning氏は大学卒業後、ロンドンで顧問弁護士として5年間キャリアを積んだ。そして2015年7月、ブレンドルに合流した。「ぼくはブレンドルの夢に乗っかったんだ」と語る。その夢がなにかといえば、「ジャーナリズムをよりアクセスしやすくすること(making journalism more accessible)」だ。

6月に創業者に出会い、ジャーナリズムを愛する若手のジャーナリスト自身がクールなプラットフォームをつくっていることに感銘を受けて参画を決めた。創業者のひとりであるAlexander Klöppingは、ツイッターで約27万人のフォロワーを抱え、影響力のある若手ジャーナリストだ。

彼はNRC Mediaやde Volkskrantといったオランダの大手メディアでテクノロジーの最先端についてコラムを執筆したり、シリコンバレーにも通じていることからテレビ番組に出演したり、「Universiteit van Nederland」というオンライン大学を創設したり……その活動は精力的かつ多岐に渡る。

もうひとりの創業者Marten Blankesteijnは、タブロイド紙「De Pers」やラジオチャンネル「BNR Nieuwsradio」などでジャーナリストとしての経験を積んだ。創業者の二人とも、新興メディアで編集長を経験し、大手メディアでライターやジャーナリストとして活動してきた。実力のある若手がつくるプラットフォームがブレンドルなのだ。そんな彼らの問題意識は次の3つに集約される。

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