オルタナティブな若者たち
2015年08月19日(水) 池田真隆

ソーシャルビジネスなのに年間売上15億円! 
事業拡大の秘けつは「ユニークな視点でマーケットを見る力」

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田口社長は、貧困問題の解決を大テーマに掲げている

社会的課題をビジネスで解決する「ソーシャルビジネス」が若者から共感を集めるなか、一方で、「スケールアウトしにくい」との声も聞かれる。マーケットありきではなく、貧困や不平等などの社会的な課題ありきで参入するため、従来のビジネスモデルでは苦戦を強いられることが多い。

そんななか、ボーダレス・ジャパン(東京・新宿)は、異例の成長を続け、2014年度の売上高は15億円を記録した。ソーシャルビジネス業界をリードする同社の田口一成社長に、立ち上げの経緯から事業拡大の秘けつを聞いた。

「社会問題を本気で変えたいなら、お金のことを考えなくてはいけないよ」

――2007年に起業しました。ソーシャルビジネスにこだわって起業しようと思ったきっかけを教えてください。

田口:大学入学を機に、18歳のとき福岡から上京してきました。その当時は、「大きな男になって故郷に帰るぞ」と意気込んでいました。しかし、こっち(東京)に来てみても、お酒を飲んで遊ぶ毎日で、なかなか打ち込めるものが見つかりませんでした。

そんななか、たまたまテレビで、お腹をぽっこりさせた栄養失調の子どもを観ました。恥ずかしながら、そのときに初めて世界には栄養失調の子どもがいるという現実を知りました。

その映像を観たときに、この貧困問題が、ずっと解決されずにいる社会の問題なら、これに立ち向かうのが、自分の人生のテーマだと一気に燃えました。それは大学2年生になったばかりの頃でしたね。これをやるなら、人生は意味があると本気で思えました。

そこからは、途上国で活動するNGOや団体に連絡をして、話を聞きにいきました。なぜ、この問題に長年取り組んでいるのに解決されないのか、現状や課題などを聞いていると、ある職員から、「田口くん、この現状を本気で変えたいと真剣に思っているのなら、お金のことを考えなくてはいけないよ」と言われました。彼は、「波打ち際で、何かの作業をしても、また次の波が来たら元に戻る。この繰り返しをしているようなもの」と自身の活動を表現しました。

本気で現状を変えたいなら、継続的、かつ、ダイナミックにしないといけない。そのためには、莫大な資金が必要。寄付にたよると継続性がなくなる。そう聞いて、自分はビジネスの観点から抑えていかないといけないと思いました。

それまでビジネスのことなど何も知らなかった僕は、ソニーの社長になって毎年売上の数%を寄付する! とか言っていたのですが、友達から「そんなの株主がOK言うわけないでしょ」と教えてくれました(笑)

だったら、そういう会社を自分でつくるしかないなと。そして1年間後の大学3年生の夏、米国・ワシントン大学にビジネスを学ぶために留学しました。

そのときに、ティーカフェのプランを考えました。貧困農家から茶葉を買い取り、カフェで提供する。そんなプランでした。お茶について学ぶため、シアトルのお茶屋で働き、ブレンディングも勉強しましたね。

帰国後、ベンチャーキャピタルをまわって、1,000万円だったら出すという話になりました。しかし、最後の詰めの部分で、私は貧困農家と直接取引するつもりでいたのですが、投資家から、コストが高くかかるので、最初は商社から買えばいい。儲かってからやればいいと言われました。それだったら、何のためにやるのか意味がないからやらない、と決裂しました。

このキャピタルとのやりとりのおかげで、資本構成の大切さなどを学ぶことができたと同時に、自分の未熟さも痛感し、ビジネスの流れを少しは学んだほうがいいと思い、企業に就職することに決めました。

ビジネス全般が見えるところを選び、ミスミに入りました。3年だけ会社で修行しようと思っていたので、3年で辞めると会社にも伝えて入りましたが、入社して半年が過ぎたときには、2年でいけると思い、その旨を伝えました。

起業して取り組む具体的なプランは何もなかったのですが、2年たったので、宣言通り、辞めました。それが25歳のときです。

――そこからはどうしましたか?

田口:そこからはですね、まだ何も考えていなかったのですが、とりあえず結婚しました(笑)。いまだに義父さんには頭が上がりません。会社を辞めたその月に、ご家族に挨拶にいって、初対面の義父さんから、「キミは何をしているのだ」と聞かれましたが、「今月で会社辞めて、自分でこれから起業したいと考えています」と伝えました。今思うと非常識ですよね。でも、なぜか許してくれました。

しかし、家計は火の車でしたね。

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