伊藤博敏「ニュースの深層」
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新国立・白紙撤回の舞台ウラ
「森元首相を黙らせろ」
安倍官邸が進めた極秘計画

2015年07月23日(木) 伊藤 博敏
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〔PHOTO〕gettyimages

 抵抗勢力となった森氏と文科省

たとえ白紙撤回の動機が、安保関連法案を強行採決して急落した内閣支持率を取り戻すためであっても、とりあえずは安倍晋三首相の決断を評価したい。

新国立競技場は、「戦艦大和」になるところだった。空母主体、機動力重視が世界の潮流だったのに、国の威信をかけ、造船技術の粋を集めて大和を建造。しかし、大鑑巨砲は過去の遺物となり、"見せ場"を作れないまま、「お国ために何かやらせろ」という無益な空気に流されて出撃、撃沈した。

新国立競技場も撃沈の寸前だった。まず、予算。当初予定の1300億円の倍近い2520億円ですら、開閉式屋根や1万5000席の可動席を取り払った数字。消費税の10%引き上げや、最大の懸案だったキールアーチの特殊鋼材の値上がり、作業の難航によって「完成時の1000億円上乗せは常識」(ゼネコン関係者)と言われた。

加えて、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は、“大甘”な計算によって年間収支を黒字としていたが、根拠となるのは年間80日のスポーツ関連イベントと12日のコンサートと、天然芝の養生期間を考えればありえない見通しだった。

すべて今をしのげば何とかなるという役人らしい発想で、「50年先に残る東京五輪のレガシー(遺産)」(森喜朗・東京五輪組織委員会会長)となるどころか、赤字を垂れ流す「無用の長物」となって、後世に禍根を残す恐れがあった。

政府内にもあった「見直し案」に、最後まで抵抗したのはラグビーワールド杯を新国立競技場で開きたかった森氏であり、その思いを忖度したうえで、設計者のザハ・ハディド氏ら関係者との摩擦を避けたい文科省とその傘下のJSCだった。

森氏は、新国立競技場でラグビーワールド杯を開催できないなら「五輪組織委員会会長の職も辞さない」と官邸を揺さぶり、文科省は、「ハディド案は首相の国際公約」「根底から見直せば、手続き変更と設計変更に19ヶ月かかり、さらに工期も40ヶ月以上で、時間的に不可能」と、抵抗した。

実は、安倍官邸は、森氏や文科省などの抵抗勢力を覆すために、白紙撤回のために密かに布石を打っていた。

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