山崎元「ニュースの深層」
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子供の学力、生涯収入が
必ず伸びる!
子育て世代がぜひとも知るべき
「教育経済学」を紹介しよう

2015年07月02日(木) 山崎 元
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教育をエビデンスで語る

ビジネスパーソン、特に、学齢以下の子供を持っておられる方に、二重、三重の意味で有益な新刊本を一冊ご紹介しよう。慶應義塾大学総合政策学部准教授で教育経済学がご専門の中室牧子氏の新著『「学力」の経済学』(ディスカバー・トゥエンティワン)が大変素晴らしい。

教育は多くの論者の関心を集めるテーマだが、少なからぬ意見やコメントが、客観的な根拠抜きに、論者の個人的な経験や決めつけから語られることの多いテーマだ(その悪弊に筆者も無縁ではないと自省する)。

この本は、終始一貫して、教育を客観的なエビデンス(実証的証拠)に基づいて語ろうとする、教育経済学の成果を紹介する啓蒙書だ。しかし、この本が素晴らしいのは、単に学術的成果の紹介にとどまらず、子供の学力・将来収入・幸福度などを改善するにはどうしたらいいか、教育制度をどう改善したらいいかといった、読者が切実な興味を持つ目的を設定して、これにエビデンスをベースに具体的に答えていることだ。

加えて、エビデンスの解釈に当たって、データにおけるサンプル・バイアス(調査対象の偏り)を除外する工夫や、「相関関係」と「因果関係」をどう区別するか、といった問題を丁寧に説明してくれている。市場調査や社員研修の方法など、ビジネスの問題を処理する上で重要な考え方やテクニックを学ぶことが出来る。

情報感度のいい会社は、今後、ランダム化比較試験に近い小規模な実験を、研修、採用、マーケティングなどの現場で小まめに行い、エビデンスを蓄積しながら経営的意思決定を行おうとするだろう。教育経済学で使われる一連の方法を、企業経営に役立てないのは余りにももったいない。

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