経済の死角

女性の自立、結婚のリスク、変わらぬ男性の意識・・・いま、「選択的シングルマザー」として生きるということ

2015年06月17日(水) 池田真隆
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「選択的シングルマザー」をご存知だろうか。自らの意思で結婚せずに出産し、一人で子どもを育てると決めた女性のことだ。日本ではまだ少数派だが、元フィギュアスケート選手の安藤美姫さんやファッションモデルの道端カレンさんなど、ライフスタイルの多様化を背景に、この生き方を選ぶ女性が少しずつ増えている。

女性と子育て研究所代表の高田さん

女性と子育て研究所代表の高田真里さん(45)は2014年5月、選択的シングルマザーに向けた情報提供を行う「SMCネット」を立ち上げた。高田さん自身も小学3年生(8)の女の子を育てる選択的シングルマザーだ。

現在、選択的シングルマザーに特化した情報提供は、行政や民間ではほとんど行なわれていないこともあり、サイトへの問い合わせは増えているという。まずはネットでつながり、その後ネット上だけではなく、リアルの場でも交流会を実施する考え。

高田さんが活動を行うのは、「女性のライフスタイルが多様化しているのに、彼女たちが必要としている情報が不足していること」に対する問題意識があるからだ。

多くの女性が「適齢期だから結婚しなければならない」「子どもがほしいから結婚するしかない」という固定観念に縛られていることを残念に思うと言う。「幸せになる手段は結婚だけではない。人それぞれの選択があっていい」。

家族のあり方に対する意識の変化

現在、日本の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生むとされる子どもの数)は1.43。国を挙げて少子化に取り組んではいるものの、抜本的な解決策を見いだすことができていない状況が続いている。

時代とともに少しずつ女性のキャリアやライフスタイルが変化する中、現実的には仕事と家庭の両立は難しく、働きながら母となることを選択したくてもままならないという声をよく聞く。

そして、2016年度より不妊治療の公的助成は42歳までとなり、仕事が安定した後に子どもを生みたいと思っても、その機会はさらに狭き門となった。

先進国の中で少子化を食い止めることができた国は、婚外子の出生率が高い国だという専門家の意見もある。フランスや北欧の非婚での出産率は約50%。婚外子出生率の高さが、全体の出生率低下に歯止めをかけているともいわれている中、日本の婚外子出生率は約2%だ。

現在約3万人の会員がいるアメリカの選択的シングルマザーの会では、会員の多くが精子バンクを介した匿名の男性から精子提供を受けて妊娠、出産にいたる。しかし、日本では非配偶者人工授精(AID)は夫婦が対象であり、シングルの女性が合法的に第三者から精子提供を受けることはできない。そのため、妊娠にいたる経緯はアメリカとは少し異なるようだ。

「日本の選択的シングルマザーは、恋愛関係にある男性との性交渉で妊娠し、結婚を選択しないケースが多い」(高田さん)。

現在、日本では3組に1組が離婚する時代。そして妊娠先行型結婚、いわゆる「デキ婚」の場合はさらに離婚のリスクが高いと指摘する声もある。離婚後のシングルマザーは経済的に困窮することが多く、仕事を複数掛け持ちするダブルワーク、トリプルワークでも年収は200万円程度、離婚した夫から養育費を継続的に受け取っているのは全体の2割強というのが実情だ。

このような現実からは結婚すれば家庭が安定し、安心して子育てができるとは必ずしも言えない。高田さんは、「女性、そして子育てには結婚に依存しないでも生活できる基盤づくりが必要」と考える。選択的シングルマザーはこういった課題への一つの解を示すものであると言えるかもしれない。

「今の日本では一度キャリアを中断した女性が、子どもを抱えて再び働くのはとても厳しい。離婚を望んでも、経済的な理由で離婚に踏み切れない女性はたくさんいる。シングルで生きて行くにしても、結婚するにしても、いつでも自分の力で生きて行ける基盤は同じように重要」と高田さんは言う。

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