現代新書カフェ
2015年06月04日(木)

近代合理主義を育んだイギリス人が、世襲の君主制を支持しつづけるのはなぜか?

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バッキンガム宮殿 photo by gettyimages

2015年5月19日、知られざる大英帝国の姿を描いた『ふしぎなイギリス』が刊行された。著者の笠原敏彦氏は、毎日新聞外信部で活躍した国際派ジャーナリスト。ロンドン特派員(1997~2002年)、欧州総局長(2009~2012年)を歴任し、イギリス王室や議会政治に関する数多くの記事を書いてきた。日本人にとって身近な国であるイギリスだが、笠原氏によると、その現実の姿は、日本で一般的に認識されているイメージとは似ても似つかぬものだという。ベテラン記者が明かした、知られざるイギリスの実像とは・・・・。


 Q:ウィリアム王子とキャサリン妃の第二子誕生に、保守党が予想外に善戦した総選挙と、このところイギリス関連のニュースが日本のテレビや紙面を賑わせていますね。その最中にタイミングを図ったかのように『ふしぎなイギリス』が刊行されました。用意周到に刊行時期を狙っていたかのように見えますが…。実際のところはどうなのでしょうか?

笠原:いえ、たまたまです。今から3年前になりますが、2012年春に2度目のロンドン赴任から帰国した後、特派員生活の集大成の意味を込めて、出版の準備を始めました。その際、イギリスから持ち帰った本や資料を読んで情報を整理するのに1年、原稿を書き上げるのに2年はかかるだろうと漠然と考えていました。ほぼそのスケジュールに沿った訳ですが、なんのことはない、最後は「締め切り」に間に合わせて仕上げたというだけです。

Q:どうしてこの本を書こうと思ったのですか。

『ふしぎなイギリス』著者 笠原敏彦氏

笠原:動機は2つあります。まずは、日本で一般的に認識されているイギリスの姿と、特派員生活を通して皮膚感覚で知ったイギリスの姿が、あまりにかけ離れていたことです。日本は明治維新以降、イギリスの産業や政治システムなどを学ぼうとその後ろ姿を追いかけ、近年でも、「2大政党制」や「マニフェスト選挙」などの模倣に熱心です。しかし、現地でイギリスの政治システムの実情を知ると、その社会的土壌の違いから日本に根付かせることは無理だということが、分かります。それでも懲りずに、日本がイギリスをモデルにしようとすることに、大きな違和感を持っていました。だから、まず、イギリスの「実像」を知ってもらいたい、という思いがありました。

もう一つは、イギリスがグローバリゼーションの最先端を行く国であり、どの先進国よりも、グローバル化がもたらす多くの「負の側面」に直面しているという現実です。格差拡大や移民急増による社会の不安定化、多文化主義の行き詰まり、民主主義の機能不全などです。こうした問題は、日本を含む各国で今後、深刻化していくことでしょう。現代のグローバリゼーションは、「自由」というOS(オペレーション・システム)で駆動するイギリスとアメリカ、2つの「アングロ・サクソン国家」が主導してきたわけですから、イギリスがその最先端を行っているのは当然です。そのイギリスが、様々な問題で悪戦苦闘闘しながら解決策を模索する姿を伝えたいと思いました。

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