井上久男「ニュースの深層」
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規制緩和に頼らず成功! 熊本発「世界が評価するニンジン」に学ぶべきこと

2015年06月01日(月) 井上 久男
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熊本県・あさぎり町にある廃校を利用した「グローバルGAP」に準拠した選果場

人口約17000人の過疎の町、熊本県・あさぎり町で、農業を活用して雇用創出と農業のグローバル化対応の両方に取り組むプロジェクト始まった。

現在、国は地方創生のために農業で規制緩和などを推し進めようとしているが、あさぎり町での取り組みは、規制緩和なんかまったく関係ない。民間企業が知恵を絞って自助努力すれば、道が拓けてくることを示唆している。

国際基準のニンジン

あさぎり町は、熊本県南部・人吉盆地に位置し、稲作や葉タバコの栽培が盛んなだ。米を原料とした球磨焼酎の産地としても知られる。

プロジェクトの舞台は、その町で廃校となった旧深田中学校の技術・美術室。そこがニンジンの「選果場」に生まれ変わったのだ。ただの「選果場」ではなく、農業の国際安全規格「グローバルGAP」に準じた対応がなされた施設である。

「グローバルGAP」に準拠しているこの施設では、たとえば、作業場の蛍光灯や窓ガラスにはフィルムが貼られている。これは万が一、破損した場合にガラス片などが異物となって農産物の中に混入しないための措置である。また、作業場には救急箱を必ず置いている。健全な労働環境を雇用主が整備している一つの姿勢として求められるからだ。

現在、仏カルフールや英テスコ、米コストコなど世界の大手流通は、農産物の取引条件として、「グローバルGAP」など国際安全規格の取得を要求している。日本の流通業はこの分野での取り組みが遅れており、ある意味商品の安全性では世界の後塵を拝している。世界の流通の常識では、調達には厳格な安全管理が適応され、安全管理に対する思想が問われる。

昨年、使用期限が切れた鶏肉を使った中国製「チキンナゲット」が問題になったが、販売した日本企業の釈明と、そこからの世論の反応は「中国製なので仕方ない」「中国製は信用できない」といったものだったが、世界の常識は「中国製品には想定しうるリスクがあったのに、それを分かっていながら売った方が悪い」なのである。

さらに言えば、日本企業は、中国の納入業者が守れもしない独自基準を作って安全になった気がしているという点で、日本の消費者を裏切っていることにもなる。

日本流の「顔が見える人が栽培したので安全」という発想は、単にイメージに過ぎず、世界では科学的なエビデンスとはならない。国内にも「日本版GAP」が存在しているが、リスクに対する管理水準が低いため、国際市場では全く評価されていないというのが現実だ。

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