HONZ現代ビジネス
2015年05月10日(日)

『天才を生んだ孤独な少年期』つながりの過剰は愚民社会の到来を招くか?

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レビュアー:内藤 順

天才とは何たるかがよく分かる一冊。が、それゆえに自分が天才でないことにも気付いてしまうという残酷な一面を持つ。

本書に登場するのは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アイザック・ニュートン、トーマス・エジソン、夏目漱石、アルベルト・アインシュタイン、そしてスティーブ・ジョブズ。時代も分野も異なる、これらの天才たちには、ある共通点があった。

それは、いずれも孤独な少年期を送っていたということである。ダ・ヴィンチとニュートンは幼い頃に母から引き離され、夏目漱石とジョブズは養子に出された。また、エジソンとアインシュタインには、ADHDや自閉症を疑わせる認知の特性があった。

このように聞くと、「やはり神は平等だ。輝かしき栄光を手にした人物には、同時に試練も与えたのだ」と思われるかもしれない。だがそれは因果が違うのである。彼らにとっては孤独な少年期こそ、才能を発揮するための必要条件であったというのが、本書の骨子である。

いかに天才といえどもゼロから文化を創造することは出来ない。よって共有世界に係わりつつ、その外に独自世界を形作るというプロセスを経る。これを実現するためには、道なき道をひたすら歩み続けられる「心の癖」が形成されていなければならないのだ。

様々な理由により訪れた孤立無援ともいえる境遇は、天才たちを共有世界から引き離した。そのうえ、身近に外部世界への係わり方を教えてくれる大人を見出すことも出来なかった彼らは、次第に自己流の方法を見つけていく。そして天才たちは少年期に偶発的に訪れた孤独を、やがては自ら欲するようになっていくのである。

レオナルド・ダ・ヴィンチの孤独は、自然と向き合うことに意味を見出すことで確保された。彼はスケッチ貼を携え、野山を歩き回り、ただ一人で自然観察とスケッチの能力を高めていったという。

ニュートンは、ペストが大流行した1665年に、故郷のウールスソープに避難し、そこで後に「驚異の年」と呼ばれることになる光学・重力・数学の分野で大発見を遂げた。

家庭の事情で12歳にして車内売り子を始めたエジソンは、帰りの列車までの長い時間を利用して、図書館にこもりっぱなしであったと伝えられている。そこには、当時でも約16,000冊もの本があった。エジソンが難聴だったことも、彼が孤独な時間を過ごすことに力を貸したようである。

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