経済の死角

大塚英樹の「成功するトップの絶対条件」=1
志太 勤 (シダックス取締役最高顧問)
危機をチャンスに転化する

2015年05月01日(金)
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危機をチャンスに変えた好調企業のトップたちは、どこが違うのか? なぜ、このトップたちは、会社を成功させ続けることができるのか? 500人以上の経営トップに密着したジャーナリスト・大塚英樹氏の近著『「使命感」が人を動かす 成功するトップの絶対条件』で明かされた、11人のトップそれぞれの「答え」とは何か? 短期連載でお届けする。第1回はシダックスの志太 勤 取締役最高顧問に学ぼう。

考え抜く能力があれば危機はチャンスに変わる

志太 勤(しだ・つとむ)シダックス取締役最高顧問。1934年、静岡県生まれ。静岡県立韮山高校卒業。地元で大衆 食堂などを経営したのち上京、1959年、調布市の富士フイルムの現像工場で社員食堂「富士食堂」をオープン。翌1960年、給食サービス事業の「富士食品工業」を設立。シダックスの前身となる。日本初のカフェテリア方式で 急成長。現在は、給食事業からレストランカラオケ事業などで、業界をリードする photo 鬼怒川毅(『フライデー』掲載)

 成長する企業に共通する条件は、危機をチャンスに転化することだ。追い詰められたときこそが新しい方向性を見出すチャンスだと……。

 では、危機があれば千載一遇のチャンスになるのか。そうではない。

 チャンスに転化できる経営者は、危機の中でも冷静さを失わずに自分で考え抜いている。焦れば、悪循環に陥る。自社のこれまでのすべてを否定してしまい、規律を失い、業界の常識やしきたりに囚われた行動に身を委ねてしまうことが多い。チャンスに転化できるかどうかは、経営者が危機の中で考え抜く能力があるかないかで決まる。

 志太勤も、考え抜く能力を持つ。

 そのことは、1991年に手掛けながらも失敗に終わったファミリーレストラン「文明割烹館」を新たなビジネスチャンスに転化したことからも頷ける。文明割烹館とは明治時代初期の文明開化をモチーフにしたテーマレストランで、和食と洋食の両方を食べられる点を売り物にしていた。最初の2、3店までは順調にいっていたが、それ以降は採算割れを起こす店が続出してしまった。かつて志太が私にこう語った。

「われわれは、特定多数の顧客を相手にする給食サービスのノウハウは蓄積していましたが、不特定多数のお客様を相手にする外食サービスのノウハウを持っていませんでした。それが原因でした。レストラン事業から撤退することも検討しましたが、借りた土地の契約期間が残っており、どうしようかと思案に暮れたのです」

 考え抜いた志太が発案したのが、カラオケ事業だった。その理由を志太は、「カラオケに着目したのは、ピアノを置いているバーがあるように、人間と音楽は切っても切れない関係にあると考えたからです」と語っている。

 カラオケ事業は軌道に乗り、93年に350店を出店し、98年には業界№1に躍り出た。

 面白いのは志太の編み出した「民間の公民館」というコンセプトだ。

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