弘兼憲史のアジア立志伝

シマコービジネススクール 第3回
~課長・島耕作のホームベーカリー〈前編〉~

早稲田大学ビジネススクール准教授 長内厚

2015年04月16日(木) 弘兼 憲史
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 シマコービジネススクールとは?
日本を代表するビジネスマンガといえる「島耕作」シリーズ。大手家電メーカーで働く主人公が、現代企業版「のらくろ」のように出世をする過程で、様々なビジネスや事件を体験していきます。ストーリーには、著者の弘兼憲史先生の綿密な取材を基にした実話エピソードもちりばめられていて、企業、特に製造業の ケーススタディーの素材としても活用できるほど。
そこで、このコーナーでは、早稲田大学ビジネススクール(大学院商学研究科)で技術経営・経営戦略論を教える筆者が、島耕作シリーズのケーススタディーを通じて、ビジネススクールの講義のエッセンスをお話しします。

【第2回】はこちらをご覧ください。

さて、ちゃんと連載っぽい感じになってきた今回は、島耕作の課長時代の話です。島耕作が勤める電器メーカーは(社長時代にテコットと社名変更しましたが)、かつては初芝電器産業という某P社と某T社を足して2で割ったような会社でした。その初芝電器時代の課長・島耕作も後に係わったホームベーカリー(作品中ではパンメーカーと呼ばれています)の開発時の話を題材に製品開発と知識のマネジメントのお話をしましょう。

課長・島耕作、京都に飛ばされる

島耕作といえば、社内派閥には属したくないという本人の意思に反して、派閥が産み出すドロドロの社内政治の渦に巻き込まれたあげく、あちらこちらの事業所や子会社に飛ばされるというエピソードが度々出てきます。

もともと、島耕作シリーズは、係長だった島耕作が本社の宣伝課で課長に昇進するところから物語が始まります。1980年代、日本の家電業界が黄金期を迎えていた頃の出来事です。課長として順風満帆に見えた島耕作の初めての左遷は、副社長・大泉の愛人だった典子を寝取ったことで、大泉から恨みを買い、京都の電熱器事業部に飛ばされるというストーリーで読むことができます。そこで島耕作は、ホームベーカリーの開発現場にかかわります(『課長 島耕作』④巻STEP32)。

ホームベーカリーの話に入る前に、「地方事業所に飛ばされる」ということについてお話をさせてください。こうした左遷人事は、『課長 島耕作』連載当時の日本には実際によくあることだったのかもしれません。そういえば、一昨年流行ったTVドラマ『半沢直樹』でも「倍返し」された支店長が、フィリピンに飛ばされていましたね(島耕作も京都から戻ってきた後にフィリピンへ左遷させられています)。しかし、こうした本社から事業所に社員を飛ばすという左遷人事は、(特に製造業においては)経営学的にはいただけない行動です。

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