経済の死角

独占!わが東京海上との「1300日裁判」(下) 愛する会社を敵に回して、戦い続けたエリート・サラリーマンの記録 

2015年04月07日(火) 週刊現代
週刊現代
upperline

 

法廷がざわめいた

裁判で田中氏らは、この報告書への反論を用意し、「不払いの報告が過少になったのは、会社の指示が不適切だったからであり、田中氏の独断などではない」ことを示す当時の業務メールなどの証拠を提出した。

ところが、ここで会社や元上司側は主張を一転、「実は、あの報告書は田中氏の人事評価には関係なかった」として争点化を避け始めたという。

もし、報告書が争点となれば、「金融庁への報告件数が過少だったのは、会社の指示のせいだったか否か」が裁判所で判断されることになってしまう。それを回避しようとした可能性が高いのだ。

争点化を避けたことで、法廷闘争の開始から約1年後の'12年6月、会社側は裁判官から、「何か田中氏の評価を下げる理由があったという客観的な証拠はないのですか」と突っ込まれる事態となってしまった。

すると同年8月、会社側は田中氏の「勤務態度が悪かった」ことを裏付けるとして、驚くべき「新証拠」を提出した。A3用紙2枚半にビッシリと書かれた「指導記録」だ。

作成者は北海道で田中氏の上司となったN課長だ。対象期間は'09年7月から翌年3月末まで。その間に田中氏がさまざまな問題行動を起こし、注意と指導を受けたと書かれている。その中身をのぞいてみると……。

〈繰り返し注意されているにもかかわらず、計算誤りに気付かない〉(8月3日)〈あきらかな手抜き処理。KD(編集部注・課長代理)としてのレベルではない」(9月2日)

他にも11月6日の欄には〈提出書類を期日までに揃えることができない。書類の点検もできない〉、11月17日には〈他のメンバーがやっていることも全て自分の手柄にしようとしている〉。役員にまであげる必要のある大型案件の稟議書作成を放り出して休暇を取ったと書かれた部分もあった。

菅谷弁護士が語る。

「N課長は'09年度に作成したと証言していますが、事実なら、なぜ'11年5月の労働審判の時点で提出しなかったのか。この書類はエクセルで作った表のプリントアウトで、作成時期が分かる元のデータを出せと言っても出してこない。しかも中身は、裁判で我々が『田中氏がきちんと業務をこなしていた』と主張している点をことごとく否定するような形で、日付や内容が見事に対応している。長年、弁護士をやっていますが、こんな『証拠』は見たことがない」

'14年11月10日、作成者・N課長の証人尋問が行われた。

1
nextpage


最新号のご紹介

underline
アクセスランキング
1時間
24時間
編集部お薦め記事
最新記事