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”原発40年規制”は原発殺処分ルールではない! ~世界標準に合わせた「原子力平和利用ルール」に昇華させよ

石川和男

2015年03月05日(木)
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〔PHOTO〕gettyimages

"原発40年規制"には科学的技術的根拠はない

日本では、原発を稼働させられる期間は、運転開始から40年に制限することが原則となっている。ただし、国の原子力規制委員会(とその事務局である原子力規制庁)の認可を受けた場合には、1回限り最大20年の延長が認められることになっている。

この"原発40年規制"は、2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故の後、当時の民主党政権が突如打ち出したもの。この40年という数値は、科学的技術的な根拠ではなく、政治的に何となくこんな程度だろうという空気の中で決められた。これは非常識である以上に、危険極まりないルールだ。詳細は2月25日付け拙稿を参照されたい。

2012年9月の規制委・規制庁の発足後、この40年の妥当性などについて速やかに専門的見地からの検討が求められていた。しかし、そのような検討がなされた形跡は皆無だ。むしろ、40の運転期限が迫る原発に対して、法や国会の要請を超えたある種の"仕掛け"を規制委・規制庁が講じているのではないだろうか。私には、そんなふうに思えてならない。

日本での「バックフィット」は世界にたぐいなき異常な運用

この問題を論じる前に、「バックフィット」というものに関して整理しておきたい。バックフィットとは、デジタル大辞泉によると、一般的には「最新の技術・知見を取り入れた基準に適合するよう、既存の設備を更新・改造すること」を意味する。現在、電力会社などの原子力事業者が受けている規制委・規制庁の審査は、主に、東日本大震災後に制定された"新しい規制基準"に適合するかどうかに係るもの。まさに、既設原発に対する"新しい基準の遡及適用(すなわち、バックフィット)"である。

原子炉等規制法(正式名:核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)第43条の3の14では、「発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない」と定められている。また、原子炉等規制法第43条の3の23第1項では、「原子力規制委員会は、発電用原子炉施設が第43条の3の14の技術上の基準に適合していないと認めるときは、その発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる」と定められている。

これが根拠となって、技術の進歩や新たな知見により基準が見直された場合には、既設原発もその新基準に適合しなければならないと解されているようなのだ。つまり、現在、原発は常に最新の基準に適合しているように「維持しなければならない」というわけだ。これにより、現在の運用では、原子力事業者は、運転停止中の原発を再稼働するためには、2013年7月に施行された"新しい規制基準"に適合しているかどうか、規制委・規制庁の審査に合格しなければならなくなったのである。すなわち、全ての既設原発は、"バックフィット審査"を受けなければならなくなっている。これは、世界に類を見ない異常な運用なのだ。

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