安達誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」

【第78回】 ギリシャの「交渉ゲーム」がユーロ圏経済の回復に寄与するという意外な経路

2015年02月26日(木) 安達 誠司
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〔PHOTO〕gettyimages

ギリシャのユーロ圏離脱=「欧州統一」の道の頓挫

ユーロ圏の首脳は2月20日に、2月末に期限を迎えるギリシャ支援策を4ヵ月延長することで基本的に合意した。これを受けて、一応、ギリシャは24日に財政再建計画を提出し、ユーログループ(ユーロ加盟国の財務相会合)によって承認された。たが、これまでのギリシャの財政再建の実績を考えると、これが遵守されるかどうかはきわめて不透明である。

だが、ユーロ圏の首脳にとっては、ギリシャの財政再建計画の実行可能性はそれほど重要な話ではないのだろう。ギリシャによる財政再建計画の提出にはいろいろな批判(例えば、ラガルドIMF専務理事は、この計画がIMFの支援継続の条件を満たしていないかもしれないと言及)があったが、あっさりと承認された。ギリシャ問題は、財政再建というよりは、むしろ、ユーロ圏離脱であったのだろうと推測する。

中東やアフリカ諸国と隣接するギリシャは、地中海の要所であるため、地政学的にユーロ圏と対抗しようとする勢力(たとえば、ロシアや中国)が接近し、ヨーロッパの安全保障上、支障をきたすリスクが出てくる。また、中世のギリシャはどちらかというとイスラム圏に属しており、「ヨーロッパ再興」の流れの中で欧州の列強が半ば人工的に現在の欧州圏の一部としてのギリシャを「建設」したという歴史的背景もあり、他の欧州諸国とは異質な国でもある。

これらを勘案すると、ギリシャのユーロ圏からの離脱は、長い期間をかけて積み上げてきた「欧州統一」の道が頓挫することを意味しており、政治的にとても許容できない選択肢であり、結局、今回の一連の交渉は、支援延長をめぐる政治ゲームに過ぎなかったと筆者は考える。

ギリシャ政府は、ユーロ圏の他国のこのような事情を知り尽くした上で、今回の交渉に臨んだのではないか。なお、交渉の過程では、ギリシャがドイツに対し、あらためて第二次大戦時の被害(ナチスドイツの侵攻とギリシャ国民の激しい抵抗によって多くの犠牲者が出たうえ、占領後は、ドイツ軍の食糧補給基地になり、多くのギリシャ国民が飢餓に苦しんだ)の賠償を請求するということもあったようだが、これは、これまでの支援の度にギリシャ側から出されてきた要求であり、ギリシャに対して厳しい態度で臨むドイツへの牽制に過ぎないだろう。

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