牧野 洋の「メディア批評」
2015年01月30日(金) 牧野 洋

欧米人は「斬首」で日本人は「殺害」---「イスラム国」人質殺害映像の新聞報道について

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1月25日付朝刊の朝毎読3紙

湯川さんはどうのように殺害されたのか

過激派組織「イスラム国」はアメリカ軍による空爆を受け始めた2014年8月以降、英米人の人質を次々と殺害してインターネット上に映像を公開してきた。日本の主要紙は殺害シーンを具体的に伝え、イスラム国の残忍性を浮き彫りにした。

最初に殺害されたのはアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏。映像が同年8月19日に公開されると、翌20日付夕刊で朝日は「黒ずくめの男がナイフで首を切った」、毎日は「黒服・覆面の男が(中略)ナイフで男性の首を切った」と説明している。

同年9月2日には別のアメリカ人ジャーナリストのスティーブン・ソトロフ氏が殺害された映像が公開された。これについて、翌3日付夕刊で読売は「ナイフで首を切断する手口」、産経は「斬首して殺害」と報じている。

日本人の人質についてはどう伝えているのだろうか。

1月24日夜になり、イスラム国によって湯川遥菜(はるな)さんが殺害されたとみられる映像が公開され、日本中にショックが広がった。主要各紙は翌25日付朝刊の1面トップニュースとして「殺害か」などと伝えるなか、湯川さんとみられる男性について次のように描写している。

〈 映像の中で男性は、横たわる湯川遥菜(はるな)さん(42)とされる男性の写真を手にし、「私は後藤健二です」などと英語で話す男性の声が流れた。 〉(読売)

〈 オレンジ色の服を着た後藤さんと見られる男性が、湯川さんとみられる人物がひざまずいている写真と、地面に体が横たわっている写真を持っている。 〉(朝日)

〈 映像では、後藤さんが、湯川さんのひざまずく姿などを写したとみられる2枚の画像を手にしているように見えるが、合成された可能性もある。 〉(毎日)

湯川さんとみられる男性がどのように殺害された可能性があるのか、これを読んだだけでは分からない。イスラム国の残忍性はよく知られており、どのような映像だったのか知りたい読者は多いと考えられる。そんな状況下で、朝毎読の3紙はあえてあいまいな表現を使ったわけだ。

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