佐々木俊尚「ブレイクスルーな人たち」
2015年01月22日(木) 佐々木 俊尚

SmartNews鈴木健【第4回】「ニュースアプリを通じて中立的にメディアを支援し、ジャーナリズムにイノベーションを起こす」

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佐々木俊尚氏と鈴木健氏
これからのメディアについて、ジャーナリスト佐々木俊尚氏が切り込んでいく本連載4人目のゲストは、スマートニュース社共同CEOの鈴木健氏。同社が開発・運営するニュースアプリSmartNewsは2014年10月に米国版がリリースされ、全世界で高い評価を得ている。ニュースアプリの先頭を走り続けるSmartNewsは、何を目指しているのか---。 (文・田中裕子)

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「編集長」ではなく「編成長」という仕事

佐々木 元ハフィントンポスト編集長の松浦さんが移籍したことでも話題になりましたが、彼は今どのような仕事をされているんですか?

鈴木 企画を立ち上げたり、「クリスマスチャンネル」のような新チャンネルを作るとき、メディアと「こういうコンテンツをつくっていきましょう」と調整する、「編成」の仕事ですね。アルゴリズム自体はSmartNewsのものを使いますが、そのアルゴリズムを適用したときにチャンネルとして成立するのかを見ていく必要があります。クオリティ、見栄え、ボリューム……そういったところをパブリッシャーと話しながら調整するのは大変だし、何よりセンスが必要なんです。松浦さんは、元エンジニアなのでアルゴリズムの仕組みを理解できるし、勘が働きます。編成の知識だけだと「ここが足りないからアルゴリズムで調整するか、それともメディアで調整するか」というイマジネーションが沸かないでしょう。

佐々木 松浦さんは元々、どちらかというと編集ではなく編成の人ですもんね。テクノロジーとメディアが融合する時代の、1つの編集の形なんでしょうね。

鈴木 松浦さんも自分のことを「編成長です」と言っていますしね。英語だと、編集はEditing、編成はProgramming。日本語だとあやふやになりがちですが、本来の仕事は全然違います。元東洋経済の佐々木さんがNewsPicksに移籍してオリジナルコンテンツを作っているから、松浦さんも「オリジナルコンテンツをつくるんですか?」としょっちゅう聞かれていて(笑)。あくまでうちは埋もれているいいコンテンツを探して広めるというスタンスなので、今のところコンテンツを作るつもりはありませんね。

佐々木 プラットフォームとパブリッシャーをきっちり分離しているんですね。

鈴木 プラットフォームであるSmartNewsがコンテンツを作ってしまうと、それを推したくなるでしょう。そうではなく、我々はすべてのメディアや報道に対して中立的でいることが何よりも大切だと思っていて。それが人々に多様な視点を与えることにつながりますから。

ニュースは民主主義の基盤? ストーリーテラーとしてのジャーナリスト

鈴木 「コンテンツをつくらない」と言っても、まるっきりコミットしないという意味ではありません。ニュースアプリには、ニュースのネタを発見する、ニュースをつくる、ニュースを届ける、そして収益化するというサイクルがあります。今、僕たちがやっているのが「届ける」。そして、収益化してその利益をメディアやジャーナリストに配分するエコシステムを作るところです。そして最終的には、ネタを発見してつくる部分の支援をやっていきたいんです。

佐々木 つくるのではなく、支援?

鈴木 はい。我々は、どういうコンテンツを作ればいいのか、どういうページの構造がいいのか研究し尽くしています。それを強化して、メディアやジャーナリストにどういうコンテンツを作ればいいのかアドバイスしていくということです。ニュースは、民主主義の基盤です。自分の興味があることしか見なくなると、対話が成立しなくなるでしょう? だから、ニュースアプリを通して自分と違う考え方、世界を知ることができるようにしたい。それも、国ごとなんて小さいレベルではなく、数十億の人の意見を、です。

佐々木 それでこそ、パーソナライズによって当事者性の幅を広げていくことに意味が出てくるわけか。結局、今のマスメディアが担っている重要な役割はアジェンダ設定なんですよね。そこまでニュースアプリが担えるようになるのかどうか、興味深いです。

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