現代新書

ANAに残されたのは「再上場したJAL買収」の秘策?!経営破綻を誰よりも早くスクープしたジャーナリストが問う、JAL再建は本物か

『JAL再建の真実』著者・町田徹インタビュー

「アメーバ経営」がJALにもたらしたもの

──本のなかでも、12年3月期に最高益(2049億円の営業利益)を叩き出した財務体質の改善について、一定の評価をする一方で、課題も挙げられています。いわゆる稲盛(和夫名誉会長)流の「アメーバ経営」がJALにもたらしたもの、そして今後の課題はどういったものになるのでしょうか。

町田 ひと言で言えば、少ない売り上げでも利益が出る筋肉質の体質を築いたことが稲盛経営の最大の貢献です。確かに、ユニットコストで見れば、ANAなどと比べて改善が進んだことがわかります。しかし、デルタやLCC(格安航空会社)と比べれば、まだ不十分という面も明らかです。

 また、JALは、競合の少ないニッチな路線を開拓し、安売りを避けて、少し高めの運賃で利益率を高めて成長性を確保することを基本戦略にしています。今後は、そうしたことを可能にできるニッチ路線を開拓できるかどうかが大きなポイントになると見ています。

──なるほど、少ない売り上げでも利益が出る筋肉質な会社になったに過ぎず、成長戦略はまだまだ描けていないわけですね。本のなかでは、いわゆる「破綻効果」が財務体質の大きな改善につながっていると指摘されています。「破綻効果」とは、具体的にはどういったことを指すものなのでしょうか。

町田 一番大きなものは、航空機やエンジンの償却負担の軽減効果です。具体的な仕組みについては、本書を読んでいただきたいのですが、JALは航空機などの購入の際に航空機メーカーから受け取るリベートを利益として計上するかたちで、粉飾決算といわれてもなんら不思議のない経理処理を長年行ってきた結果、航空機やエンジンの帳簿上の価格が市場価格を大きく上回り、その償却負担が経営を圧迫していました。

 モノを買って利益が出るなどということはありえません。そのありもしない利益を捻出してきた結果、ツケが回って破綻に至ったのです。

 ただ、破綻処理によって、その航空機やエンジンの価格の洗い替え(適正化)ができました。この結果、費用計上の対象になる償却負担が減って、利益の出やすい体質になったわけです。

 結果として、買い替えたくても巨額の売却損が出るので売るに売れなかった燃費の悪い航空機を処分して、燃費の良い航空機に置き換えることや、保有する飛行機の種類を減らして部品の在庫を減らすといった経営の効率化が可能になりました。

 くわえて、破綻したからこそ、指名解雇や赤字路線からの撤退が容易にできましたし、巨額の債権カットによって借入金の返済負担を軽減することもできました。広い意味では、こうしたこともすべて破綻効果と言ってよいと私は考えています。

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